Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『エール』個性豊かな関内三姉妹が勢揃い 裕一は交響曲を完成させる

リアルサウンド

20/4/21(火) 12:00

 連続テレビ小説『エール』(NHK総合)第17回では物語が加速する。音(二階堂ふみ)にお見合いをセッティングした姉・吟(松井玲奈)の狙いは野島春彦(長田成哉)であり、恋愛結婚を希望する春彦を射止めるために、弟の夏彦と音の見合いの席を設けたのだった。

参考:『エール』に集結した『3年A組』卒業生たち 堀田真由の怪演に続き森七菜の活躍にも期待

 第16回で夏彦(坂口涼太郎)の写真を見るや「これと!?」と本音丸出しのリアクションを披露した音は、見合いの席でも露骨に嫌な顔をして見せる。そんな音に中国帰りの夏彦が「女は男を支えていればいいのです」と言ってしまったものだから、もう大変。「違う! 違う」と夏彦に掴みかかった音は「私は男の後ろを歩くつもりはないから」と啖呵を切り、出て行ってしまう。かくしてお見合いは失敗に終わった。

 「結婚したとしても、私は一緒に歩きたい」と話す音の性格は、少女時代から変わっていないどころか、ますます強化されているようだ。話を聞いた母の光子(薬師丸ひろ子)は苦笑いする。母にも同じような経験があり、そのことが縁となって故・安隆(光石研)と出会っていたのだ。実は似た者同士の母娘だった。

 第4週では、成長した関内家の三姉妹が勢ぞろいした。長女の吟を演じる松井玲奈は、『まんぷく』(NHK総合)以来の朝ドラ出演となる。お見合いが失敗に終わり、追い打ちをかけるように、音に交際を申し込む春彦を目にした吟のメンタルが気にかかる。少女時代に芥川龍之介『鼻』を愛読していた三女・梅(森七菜)の第一声は、またしても芥川の名言。「運命は偶然よりも必然である」と姉たちに聞かせるが反応はいまいち。黒縁メガネの文学少女も順調に個性を伸ばしているようだ。作家としても活躍する松井だが、劇中では作家志望の妹・梅を持つ姉を演じており、ひねりの効いた配役がおもしろい。

 歌手を目指す音の結婚観は、妻が夫に従うのでなく「一緒に歩いて、お互い支え合って、生きていく」というもの。「私は結婚する気はありません」と春彦の申し出を断った音の本心は、結婚をしたくないのではなく、従来の夫婦像への疑問があるのだろう。「男はいろんな可能性があって自由なのに、女はそれ(結婚)しか道がない」と嘆く音に、光子は若い頃の夢を聞かせる。歌劇団で踊るという光子の夢は、『あまちゃん』(NHK総合)で演じた鈴鹿ひろ美と重なる部分だ。

 「夢をかなえる人は一握り。あとは人生に折り合いをつけて生きていくの」と言って、「私はあんたたちのおかげで幸せ」とほほ笑む光子。夢をかなえることそれ自体に男女の差はないが、そのために越えなくてはならないハードルに、今では想像もつかないほど男女間で大きな差があった。光子の言葉を聞いた音は「私、幸せ捨てても夢を取る」と告げる。

 音にとって、音楽は自身の運命なのだろう。「運命は性格の中にある」という芥川の言葉は音のことを言い当てており、自分にとっての幸福が天啓とも言える音楽の中にあることを音は知っていた。

 その頃、運命の相手は福島で譜面をにらんでいた。しかし1年半のブランクは大きく、「全然降ってこない!」と裕一(窪田正孝)は絶叫する。見かねた川俣銀行の同僚たちは鉄男(中村蒼)を促し、夜を徹して企画を練る。満月の夜に鉄男がそらんじた和歌から着想を得た交響曲「竹取物語」は見事、国際作曲コンクールに入賞。失恋を経験した裕一が「音楽に別れを告げるため」に作ったこの曲が、裕一の運命を変えることになる。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む