Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

KEYTALK、KANA-BOON、ロットン、スカパラ、マンウィズ……今春ベストアルバムでキャリアを総括するバンドたち

リアルサウンド

20/4/5(日) 12:00

 この春、注目のベストアルバムのリリースが相次いでいる。KEYTALK、KANA-BOON、ROTTENGRAFFTY、東京スカパラダイスオーケストラ、MAN WITH A MISSION。いずれも、音楽シーンの第一線を長年張り続け、ロックフェスのステージでも多くのオーディエンスを前に強烈な存在感を発揮し続けてきたバンドだ。彼らはどのようにそれぞれの道を切り開き、キャリアを積み重ねてきたのか。楽曲を軸に、その歩みを振り返ってみたい。

KEYTALK

KEYTALK『Best Selection Album of Victor Years』

 まずは3月18日にビクター在籍時代の5年間を総括するベストセレクションアルバム『Best Selection Album of Victor Years』をリリースしたKEYTALK。2枚組、全20曲のトラックリストには、シングル曲を中心にライブでもおなじみの楽曲が並んでいる。

 メジャーデビューシングル「コースター」やメジャー初期の代表曲「パラレル」に象徴される、ツインボーカルによるエモーショナルな歌と、その歌と同じくらいメロディアスなギター、タイトで手数の多いドラム。その“基本形”は今も変わらず彼らの真ん中にある。そしてこの5年間の中でKEYTALKはその“基本形”をどんどん発展させ、いくつものフェスアンセムを生み出してきた。

KEYTALK – コースター 【YouTube限定MUSIC VIDEO】
KEYTALK – パラレル【YouTube限定MUSIC VIDEO】

 振り付けもあっという間に定着した「MONSTER DANCE」や「MATSURI BAYASHI」といったオーディエンスを問答無用で巻き込んでいくダンスチューンから「桜花爛漫」や「スターリングスター」のようなメロディと歌が際立つポップチューンまで、ベストアルバムを聴き返すと、彼らがシーンの中で揉まれながら、自分たちの武器をひたすら研ぎ澄ませてきた軌跡が浮かび上がってくる。

KEYTALK/「MONSTER DANCE」MUSIC VIDEO
KEYTALK – 「MATSURI BAYASHI」 MUSIC VIDEO

 2018年にリリースされたビクター最後のアルバム『Rainbow』は、その意味では彼らにとってひとつの到達点といえる作品となった。「黄昏シンフォニー」や「セツナユメミシ」には、フェス的な盛り上がりとポップミュージックとしての強度、その両面においてさらにスケールアップしたKEYTALKがいる。2019年のユニバーサル移籍以降の彼らはますます音楽的なバンドになってきているが、その萌芽も、このベストアルバムにはしっかりと記録されている。

KEYTALK/2017年6月7日11thシングル「黄昏シンフォニー」MUSIC VIDEO
KEYTALK/2017年8月30日12thシングル「セツナユメミシ」MUSIC VIDEO

KANA-BOON

KANA-BOON『KANA-BOON THE BEST』

 そのKEYTALKとほぼ同時期に結成され、同年にメジャーデビューを果たしたKANA-BOONもまた、フェスという場を主戦場にファンベースを広げてきたバンドだ。3月4日にリリースされた『KANA-BOON THE BEST』には、自主時代やインディーズ時代の楽曲、そしてシングル化されていないアルバム曲も含め、彼らのこれまでの全軌跡が凝縮されている。

 KANA-BOONの場合、なんといっても高速4つ打ちビートとギターロックという組み合わせを一躍ロックシーンの主流フォーマットにしたということの意味は限りなく大きい。「ないものねだり」のキャッチーな4つ打ちギターロックは、フェスにおいてライトユーザーを前に鳴らすのにきわめて効果的な“最適解”だった。KANA-BOONの登場以降、若手バンドのキラーチューン(この“キラーチューン”という言葉自体が“踊れてノレる”という意味を含むようになったのも彼ら以降だと思う)は4つ打ち一色になっていったし、その流れは今も終わっていない。

KANA-BOON / ないものねだり

 ただし、彼らの楽曲を振り返って改めて感じるのは、KANA-BOONの5年間はそのパブリックイメージやステレオタイプからいかに脱却するかという闘いの歴史だったということだ。「結晶星」や「生きてゆく」「シルエット」といった曲には、よりスタンダードで広いポップミュージックを目指す彼らの思いが滲んでいる。とりわけ「ダイバー」以降、アルバムでいえば3rd『Origin』以降の楽曲には、より大ぶりのリズムとリフでスケールの大きなロックを鳴らそうとするKANA-BOONの姿が見える。その意味では、彼らの本当の真価が問われるのはこれからなのかもしれないと思う。

KANA-BOON 『結晶星』Music Video
KANA-BOON 『生きてゆく』
KANA-BOON 『シルエット』

ROTTENGRAFFTY

ROTTENGRAFFTY『You are ROTTENGRAFFTY』

 先ほどの2組と比べるとぐっと世代が上がり、昨年結成20周年を迎えたのが“響く都”京都の雄、ROTTENGRAFFTYだ。ファンリクエストとメンバーセレクションによる2枚組ベストに『You are ROTTENGRAFFTY』というタイトルをつけるところからして彼らの姿勢が鮮明に出ている。

 メンバーが選んだ楽曲が並ぶディスク2の1曲目「暴イズDE∀D」やファンリクエストで選ばれディスク1に収録された「夕映え雨アガレ」など初期の楽曲の衝動の塊とでもいうようなテンションから、和を感じさせるモチーフが印象的な「零戦SOUNDSYSTEM」や「響く都」、クラブミュージックを大胆に取り入れた「D.A.N.C.E.」のような楽曲へ。そこには貪欲すぎるほど貪欲に新たな要素をバンドに取り入れ、自分たちのものにして爆音でぶっ放してきた彼らの歴史が見える。境界を飛び越え世界を広げていく、それこそまさにミクスチャーの精神だ。

ROTTENGRAFFTY「暴イズDE∀D(2020 reRec ver.)」
ROTTENGRAFFTY「夕映え雨アガレ」
ROTTENGRAFFTY「響く都(New Mix)」

 当初は自主企画としてスタートし、2012年以降はフェスへと発展し続いている『ポルノ超特急』にブッキングされているメンツを見渡せばよくわかるが、ロットンを中心にしたバンドの輪は年々広がり続けている。それは彼らがロックというカルチャー、京都という街、そしてともに闘っている仲間。自分たちの人生はもとより、そうした周囲の人生や歴史までをも自分ごととして背負い込んで突き進んでいる証拠だろう。

ROTTENGRAFFTY – D.A.N.C.E.(OFFICIAL VIDEO)

 ファン投票でワンツーフィニッシュを決めた「THIS WORLD」や「金色グラフティー」をはじめ歌詞に散見される〈お前〉という言葉は、彼らのすべての活動がメッセージであることを示している。ディスク2の最後に収められ、すでにライブアンセムとなっている新曲「ハレルヤ」の硬派な響きは彼らの矜持そのものだし、一方で「I Believe」や「アイオイ」のような切実な楽曲がちゃんとファン投票で選ばれていることは、ファンが彼らの音楽だけでなく姿勢と思想そのものに共鳴していることを如実に物語っている。

金色グラフティー / ROTTENGRAFFTY
ROTTENGRAFFTY – 「アイオイ」 Music Video YouTube Ver.

東京スカパラダイスオーケストラ

東京スカパラダイスオーケストラ『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』

 そして、ジャンルを越境して独自のポジションを築いてきたといえば、このバンドも欠かすことはできない。デビュー30周年の今、何度目かの絶頂期を迎えている東京スカパラダイスオーケストラだ。3月18日にリリースされたベストアルバム『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』がとんでもない。

 ディスク1&2の2枚に収められた15曲のボーカルトラックを並べると非常によくわかるのだが、スカパラほど柔軟に音楽性を変化させてきたバンドはいない。桜井和寿が歌う「リボン」、甲本ヒロトが歌う「星降る夜に」、チバユウスケが歌う「カナリヤ鳴く空」、中納良恵が歌う「縦書きの雨」、斉藤和義の歌う「君と僕」――いずれも彼らフィーチャリングされた側のオリジナルだといってもおかしくないような完成度だ。組むボーカリストの“本業”やスタイルや声質に徹底的に寄り添うようにして楽曲を作っていくやり方は、ただ「フィーチャリング」と呼ぶにはあまりにも丁寧で込み入っている。そのしなやかな身のこなしこそ、スカパラがここまでの存在になった大きな要因なのだと思う。

「リボン feat. 桜井和寿(Mr.Children)」Music Video / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
東京スカパラダイスオーケストラ / 星降る夜に
東京スカパラダイスオーケストラ / カナリヤ鳴く空
縦書きの雨 feat.中納良恵(EGO-WRAPPIN’) / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
東京スカパラダイスオーケストラ「君と僕 feat. 斉藤和義」

 その意味で、スカパラの真価がわかるのが、ディスク3のインスト盤だ。ここに入っている17曲には、それこそ音楽の自由とスカの世界の広さがはっきりと提示されている。ロマンティックなメロディラインが高揚感を煽る「Break into the Light~約束の帽子~」、妖しげな雰囲気がインパクトのある「火の玉ジャイヴ」に、スカの本領発揮ともいえるパーティチューン「White Light」。こんなにも豊かな表現で、あらゆる感情を描き出すインストバンドがほかにいるだろうか。彼らは30年という歴史の中で、スカという音楽をこんなにも柔軟に、しなやかに乗りこなしてきたのだ。こんなバンドがここ日本で生まれ、長きにわたって続き、そして世界でも認められる存在となったことを、我々はもっともっと誇り、讃えるべきだ。

Break into the Light~約束の帽子~/TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
東京スカパラダイスオーケストラ / 火の玉ジャイヴ
White Light [2020 Remaster]

MAN WITH A MISSION

MAN WITH A MISSION『MAN WITH A “B-SIDES & COVERS” MISSION』

 さて、最後に紹介するのは、4月1日にB面&カバー集『MAN WITH A “B-SIDES & COVERS” MISSION』、そして4月29日にリミックス集『MAN WITH A “REMIX” MISSION』を立て続けにリリースするMAN WITH A MISSIONである。今年2月9日に結成(つまり南極の氷の中から復活)して10年を迎えたオオカミたち。その記念プロジェクトとして、上記2作品に続いてベストアルバム『MAN WITH A “BEST” MISSION』のリリースが控えている。

 さて、この10年の彼らのキャリアを振り返ると、その見た目のかわいらしさとは裏腹に、ロックバンドとして非常に真っ当に楽曲を積み重ねてきた彼らの真面目な歩みが見えてくる。MAWMのみならずロックフェスやロック系DJイベントでの一大アンセムとなった「FLY AGAIN」の、シンプルなサビメロでどこまでも高揚していくあの感じ、荘厳でスケールの大きなイントロから一気にエモーショナルなメロディが爆発する「Emotions」、アグレッシブなビートと鋭いギターリフが問答無用でリスナーを鼓舞する「Raise your flag」、メッセージがこもったドラマティックなメロディが美しい「Remember Me」など、彼らの楽曲はどれも本気で“ど真ん中”に投げ込まれている。音楽的な機能性も真摯なメッセージも演奏のワザもすべてが常にハイカロリー。一切手をゆるめることなくパンパンに注ぎ込まれているのがMWAMのロックだ。

MAN WITH A MISSION 『FLY AGAIN 2019』
MAN WITH A MISSION「Emotions」

 パンクロックの激しさとメッセージ性、ミクスチャーロックの力強さ、ダンスミュージックの高揚感。つまりロックミュージックがその長い歴史の中で獲得してきたすべてを混ぜ合わせて最大出力でぶちかますこと。MAN WITH A MISSIONがやってきたのはそういうことだ。彼らは常にロックの先達へのリスペクトと愛情を楽曲に込め、磨き抜かれた演奏スキルによって体現してきた。言葉を換えるなら、この時代にロックのロマンとパワーを復権するために走ってきたといってもいい。“オオカミ人間”という特異でキャッチーなキャラクターは、それを可能にする最大の武器となった。今や彼らがオオカミなのか人間なのか、気にする人はひとりもいないだろう。堂々ロックの王道に立つバンドとして、MWAMはますますスケールを広げ、のびやかに進化している。

MAN WITH A MISSION 『Raise your flag』
MAN WITH A MISSION 『Remember Me』

■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む