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ドージャ・キャット「Say So」なぜ世界的ロングヒット? TikTok発、次世代アーティストの成功を辿る

リアルサウンド

20/5/6(水) 12:00

 TikTokを制する者が音楽チャートを制すーーそんな現象が近年ますます加熱している。

 カントリーラップ「Old Town Road feat. Billy Ray Cyrus」が2019年のビルボード・ホット100で年間第1位となったリル・ナズ・X。現時点で「Roxanne」のSpotify総再生数が70億回に迫っているアリゾナ・ザーヴァス。「Dance Monkey」のヒットでオーストラリアの路上ライブから世界の舞台に飛び出したトーンズ・アンド・アイ。彼/彼女らは皆、動画投稿アプリTikTokでのバイラルヒットをきっかけに世界的ブレイクを果たしたアーティストだ。さらにはドレイク、ジャスティン・ビーバー、チャンス・ザ・ラッパーなど、すでに確固たる地位を築いている大物アーティストたちにとっても、TikTokを活用したプロモーションはいまや必須となりつつある。

リル・ナズ・X「Old Town Road feat. Billy Ray Cyrus」
アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」
トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」

 そんなTikTokで現在バズを巻き起こしている楽曲が、ドージャ・キャット「Say So」だ。2019年11月7日に発表された2ndアルバム『Hot Pink』からシングルカットされた同曲は、全米チャートで最高5位を記録。4月末の現在も5位をキープしており、今後もロングヒットが見込まれている状況だ。

ドージャ・キャット「Say So」

 ドージャ・キャットは2013年にデビューシングル「So High」をSoundCloudで発表。当時18歳の頃から、彼女の発信拠点は前述のSoundCloudやTumblr、そしてYouTubeといったオンライン上のプラットフォームにあった。そんなドージャが一躍注目を集めるきっかけとなったのが、2018年にリリースされた「Mooo!」。デビューアルバム『Amala』のデラックスバージョンに収録された同曲は「牛」をテーマにしたラップソングで、そのナンセンスな歌詞もさることながら、ドージャ自ら牛に扮したファニーでセクシーなMVが話題となり、瞬く間にソーシャルメディアでミーム化。チャンス・ザ・ラッパー、ケイティ・ペリー、クリス・ブラウンといった人気アーティストがこのMVをTwitterで絶賛したことも、ドージャの追い風となった。

 その勢いのまま、ドージャはリコ・ナスティーをフィーチャーした「Tia Tamera」をリリースし、Tygaが客演した「Juicy」は全米チャートで最高41位にまで上昇。さらには「Candy」もTikTokのリップシンクやダンスチャレンジのBGMとしてミームソング化するなど、ドージャの存在感は日増しに大きくなっていく。そして決定打となったのが「Say So」だった。

 「Say So」がリリースされてから実際にTikTokでバズるまで、時間はさほどかからなかった。ここで鍵を握っていたのが、人気TikTokインフルエンサーのヘイリー・シャープだ。彼女がみずから考案した「Say So」のダンス動画を公開すると、他のインフルエンサーたちもそのダンスを次々と模倣。こうしてヘイリーが生みだした「Say So」ダンスはTikTokユーザーのなかで一気に拡散されていったのだ。

@yodelinghaley

and here’s the dance🤪🥰 and THANK YOU FOR 10 MILLION HEARTS OMG THAT’S CRAZY

♬ Say So – Doja Cat

 TikTokを起点とした「Say So」のバイラルヒットは、ここからさらに加速してゆく。なかでも重要だったのが、今年2月に公開されたMVでヘイリー考案の振り付けを採用し、さらにはそのヘイリーと、おなじくTikTokスターのドンテ・コリーをカメオ出演させたこと。通常、このような流行はダンスルーティーンの出どころが曖昧なまま拡散されがちだが、ドージャはここでオリジネイターのヘイリーや、それをさらに拡散させたTikTokerをフックアップしてみせたのだ。結果としてこのMVはTikTokユーザー内での話題性をさらに押し拡げただけでなく、ドージャが人気インフルエンサーたちからの信頼を得ることにもつながった。

 「Say So」ダンスは芸能人やセレブにも拡散。海外ではセレーナ・ゴメスやジェームス・チャールズらの投稿が話題となり、ここ日本でもマルチタレントのけみお、バーチャルタレントのキズナアイ、双子TikTokerのりかりこがダンス動画を投稿。国内における「Say So」の認知も着々と広がりつつある状況だ。

@selenagomez

@lola.amitha my girl taught me something on tik tok. I’m new. But Lola is awesome

♬ Say So – Doja Cat

@mmkemio

日曜日

♬ Say So – Doja Cat

@kizunaai0630

このダンスに夢中になってしまった( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )##kizunaai ##キズナアイ ##vtuber ##foyoupage ##fyp ##dojacat ##踊ってみた

♬ Say So – Doja Cat

 日本といえば、「Say So」の日本語カバーも大きな話題となった。しかもそれを投稿したのは、なんとインドネシア人YouTuberのレイニッチ・ラン。日本文化への関心を公言してきたドージャもこのカバーには胸を打たれたようで、自身のInstagramでレイニッチの歌声を絶賛。このカバーをチェックするようにと興奮気味に呼びかけていた。

レイニッチ・ラン「Say So」日本語カバー

 ここまで「Say So」を取り巻くバイラルヒットの変遷をざっと追ってきたが、ここでひとつ断っておきたいのが、ドージャはソーシャルメディアの活用に長けた戦略家である以前に、優れたシンガーであり、ソングライターであるということだ。画家の母と作曲家で映画プロデューサーの父の間に生まれ、幼い頃からピアノやダンスを学び、兄の影響で早くからラップスキルも磨いてきたドージャ。彼女が「Say So」というヒット曲を生み出せたのは、こうした下積みがあったからこそなのだ。

 また、同曲の日本語版がインドネシアで生まれたことは、近年の東南アジアにおける日本産ポップスの需要、ひいては欧米を含めたシティポップの再評価とも無縁ではないと思う。現行のR&Bやラップミュージックと、70年代のシルキーなファンクサウンドを接続させた「Say So」は、きっと日本のポップリスナーの琴線にも触れるはずだ。

 1979年にChicが発表したディスコクラシック「Good Times」のスムースなギターリフをサンプリングし、MVでも70年代のディスコを再現してみせた「Say So」は、いまやTikTokユーザーを越えて幅広い層で支持を集めている。そんな中、ドージャは今年、映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』に新曲「Boss B*tch」を提供し、さらなる認知を広めた。現在の音楽シーンを席巻するTikTok発のスターたち。2020年にそのクイーンの座を射止めるのは、間違いなくドージャ・キャットだ。

■渡辺裕也
文筆業。ミュージック・マガジン/サイン・マガジン/MUSICA/音楽と人/クイック・ジャパン/Mikiki/OTOTOY/ビルボード・ジャパン/ナタリー/月刊ラティーナ/ロッキング・オン・ジャパン等に寄稿。

ドージャ・キャット『Hot Pink』

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ドージャ・キャット『Hot Pink』
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