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the pillows「Funny Bunny」はいかにして特別な歌となったか エルレ、Uru…カバーの歴史辿る

リアルサウンド

19/10/15(火) 19:30

 10月初めのある日のこと、Twitterのトレンドの上位に「Funny Bunny」というワードが入っていた。何だ? と思ったところ、それが他でもないthe pillowsの楽曲のことだと知り、ちょっとビックリした。

 それはこの歌がアクエリアスのCMソングとして起用されているのが話題になっているからだった。そのCMでは「見えない「がんばれ」篇」として、スポーツに取り組む子供たちと、そこでサポートする大人の姿が描かれている。

 ここで「Funny Bunny」を唄っているのは女性シンガーのUru。彼女は今までにもさまざまな曲をカバーしてきた。同曲の伴奏はピアノだけで、Uruは透明感あふれる素晴らしい歌声を聴かせている。

(関連:the pillowsが30年愛され続ける理由ーーバンドの奇跡の軌跡を辿る

 また、もうひとつ驚いたのは、同じタイミングで、ギャツビーのCMでもやはりこの歌が唄われていることだ。こちらはアコースティックギターの弾き語りで、テンポを落としての生々しい歌声が静かに響くテイクになっている。唄っているのは佐藤緋美(ひみ)という二十歳の俳優。なんと浅野忠信とCHARAの長男である。

 そしてどちらのCMも「Funny Bunny」の〈キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで 走ってきた〉というフレーズが心に残る構成になっている。強調される、「キミ」のことを励ますような歌のメッセージ性。とくにアクエリアスのほうは、親の目線からの応援という側面が明白だ。

 僕はこの解釈のされ方を見て、「Funny Bunny」が多くの人の心を射抜く名曲になっている事実を再確認した。というのは、決してわかりやすい応援ソングなんかではないように思っていたからだ。むしろ最初に聴いた時は、山中さわおが誰かに向けて書いた私信のような曲というイメージのほうが強かったくらいである。

 さらに「Funny Bunny」には、この世への違和感や、その中での反骨心めいた感情も埋め込まれている。そうしたシリアスさの中で「夢」について唄っているところには、曲を書いた当時の山中の若さや青さを感じる。これが書かれたのはもう20年も前のことで、彼はまだ30歳。少年から青年期を終え、大人の年齢へと足を踏み入れる頃だった。

 そうした背景を知るだけに、この歌が誰かへの応援歌として親しまれていることは新鮮でもあった。なにしろ山中は不特定多数の他人を応援する歌を作るような気質の人ではない。ただ、そうしたパーソナルな作風こそがこうした解釈の幅を生み、多様な捉えられ方を生んでいる側面はあるだろう。

 ところでこうしてCMで起用された「Funny Bunny」への反響について探っていたら、その中に「懐かしい」というリアクションをするリスナーもいた。たしかにこの曲は20年の間にさまざまな形でカバーされているので、そう感じる人がいるのも当然といえる。

 順を追って振り返ろう。the pillowsによるオリジナルの「Funny Bunny」は、1999年にリリースされている。当時のオリジナルアルバム『HAPPY BIVOUAC』の中の1曲だった。

 この頃は彼らがアメリカンなオルタナティブロックに傾倒していた時期で、それまでのUKロック的な段階を知るファンはずいぶん土臭い音になったと感じたはずだ。当時の山中はThe PixiesやThe Breeders、Sonic YouthやThat Dogにハマっていたことを明らかにしている。こうしたオルタナ系のバンドは爆音を鳴らすことが多かったが、中にはメロディアスな曲もあり、「Funny Bunny」はそうした部分をうまくバンドサウンドに取り入れていたと思う。

 ただ、とくに派手なナンバーでもない「Funny Bunny」は、あくまで「彼らの中のいい曲」という立ち位置だった。それが年を追うごとに特別な歌へと変わっていったのである。

 まず2000年になり、ガイナックスによって製作されたOVAのアニメ『FLCL(フリクリ)』である。the pillowsの楽曲が数多く使われたことでも知られている作品で、「Funny Bunny」もその中の1シーンでフィーチャーされた。

 続いて2004年にはthe pillowsのトリビュート盤『SYNCHRONIZED ROCKERS』がリリースされる。この中で「Funny Bunny」はELLEGARDENによって演奏されており、オリジナルよりもエモーショナルな熱気が感じられる仕上がりになっている。もっとも細美武士は個人的な思い入れの強かった「この世の果てまで」のほうを演奏したかったようだが、そちらはYO-KINGが唄うことが決まっていたため、数ある楽曲の中から「これは名曲じゃないか」と感じた「Funny Bunny」を選び直したといういきさつがある(参照:書籍『ザ・ピロウズ ハイブリッド レインボウ』2009年、USEN)。

 また、2007年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まったマンガ『SKET DANCE』では、ストーリー中のバンド演奏の場面で「Funny Bunny」の歌詞が登場していた。そしてこの作品がテレビアニメ化された2011年にはthe pillowsも主題歌に関わりながら、カバーバージョンも作られた。「Funny Bunny」はThe Sketchbookというこのアニメのために作られたバンドによって演奏されている。これは楽曲の良さをストレートに生かした、バランスのいいアレンジになっている。

 2014年にはthe pillowsのトリビュート盤の第2弾『ROCK AND SYMPATHY』が制作され、ここではBase Ball Bearがカバー。やや軽やかなアレンジだが、その一方ではサビ始まりの構成にすることで楽曲のエネルギーが押し上げられている。もうこの頃には「Funny Bunny」はすっかり特別な曲として認知されていた。

 さらに翌2015年にはアイドルネッサンスによる「Funny Bunny」が発表されている。こちらもサビ始まりで、しかもストリングスの音色も使ったドラマチックなサウンドだ。これは今年のUruのバージョンにも言えるが、男性的な言葉使いの歌詞を女性が唄うことで、歌に込められた意志がより引き立てられる感がある。

 最後にもうひとつ、「Funny Bunny」のスペシャル版が体験できた瞬間について記しておこう。その舞台はこの4月に東北にて行われた『ARABAKI ROCK FEST.』だった。ARABAKIは大型のロックフェスの中でも最初にthe pillowsをヘッドライナーに起用したフェスだが、今年は彼らの30周年を祝うトリビュートを企画。the pillows がGLAY、ストレイテナー、9mm Parabellum Bullet、UNISON SQUARE GARDEN、SHISHAMOといったアーティストたちと共演するそのステージのラストに現れたのは、山中の少年時代からの憧れである佐野元春だった。そして熱狂の中、彼らは「Funny Bunny」と佐野の代表曲「アンジェリーナ」のセッションを行ったのである。夢の共演を終えた山中が放心状態のような表情をしていたのが印象深いライブでもあった。

 今週、10月17日の木曜日には、横浜アリーナでの公演『LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA』が予定されている。30周年の記念となるこのライブについて山中は、自分たちを見たい人みんなが来れるようにチケットが売り切れない規模のハコでの開催を考えたものだが、フタを開けてみれば早々にソールドアウトした。当日の彼らは並々ならぬ気合でもって、音楽で真っ向勝負するとのことだ。「Funny Bunny」の演奏ともども、当日を期待して待ちたい。(青木優)

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