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KEN ISHIIに聞く、テクノアーティストとしての分岐点「ずっと好きだろうなって思えるものを作りたい」

リアルサウンド

19/11/28(木) 19:00

 KEN ISHIIが11月27日に13年ぶりの新作『Möbius Strip』をリリースした。その間、FLARE名義での2枚のアルバムを出し、またKEN ISHII名義でも、他アーティストが手がけたリミックスバージョンを除くオリジナルバージョンだけでも40曲近いダンストラックを発表してきたが、彼には単曲ではなくアルバム単位で表現したいものがあった。どこを切ってもKEN ISHIIらしさが溢れるこのアルバムは、彼がこれまで培ってきた知見、世界中をレコードバックひとつ持って旅してきた経験が反映された、バラエティに富み豊かな色彩を放つ大傑作だ。ジェフ・ミルズ(JEFF MILLS)やドゼム(DOSEM)、Go Hiyama(日山豪)といった参加アーティストも、コラボの必然性を感じさせる。

 アルバムタイトル『Möbius Strip』についてKEN ISHIIは公式コメントで「音楽作りには答えが無く、表も裏も無い」「そして自分にとって無限に続いていくものだ」「まるでメビウスの帯のように」と語っている。

 なお、 FLARE名義の新作『Leaps』がリリースされた2015年にもリアルサウンドでインタビューしているので、合わせてお読み頂きたい。(小野島大)

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「(僕が思う自分らしさは)自由にやっているところ」

ーーなんと『Sunriser』以来、KEN ISHII名義としては13年ぶりのアルバムです。

KEN ISHII(以下、ISHII):アルバムを出すってことは、自分のアーティストとしての存在証明的な部分があるんじゃないかと思うんです。あるいはクリエイティビティ全体のイメージを見せるというか。ただいっぱい曲ができたので出していきますっていうのは違う。ビジュアルひとつ取っても、あるいは映像でもいいんですけど、まとめてちゃんと発表できる場が欲しかった。そしテクノも結構いろいろと細かくトレンドが流れていく中で最終的には自分はこれだ、次まとめて出すとしたらこれだ、っていうひとつの結論が出るまでに結構時間がかかりました。これで行こうと自分の中で固まってきたのが3年くらい前。それがある程度できて、曲もある程度できてきた中で、しっかり音楽以外の部分も併せて出せる場を作るのに時間がかかったという感じです。

ーーKEN ISHII名義で出している楽曲(ダンストラック)も沢山あるわけですが、その先にアルバムとしてまとめるとか、そういうつもりは全然なかったっていうことですか。

ISHII:今となっては全然ないですね。10年くらい前まではチラっと考えてたんですけど、今はたぶん音楽レーベル自体がそういうことを考えていない。アーティストひとりの音楽性をプッシュするっていう感じではなくて、レーベルの音楽性にハマるアーティストを次から次へと出していくスタイルになってる。そういう意味ではひとりのアーティストをじっくり腰を据えてプッシュすることが少なくなってきて、楽曲の賞味期限がどんどん短くなってる。僕が他のレーベルで出すEPはリクエストに応じて、その時のテクノのトレンドにちょっと寄せて出したりしていたんだけど、アルバムにそういう曲を入れるつもりは一切なかった。自分で好きに作っていたものの中で、本当に好きなものだけをアルバムにしたいと思いました。

ーー3年前に方向性が定まってから具体的にはどういう作業になっていったんですか。 

ISHII:音楽的に作りたいものはなんとなくぼんやりと頭の中にあって、何かカラフルな響きがするもの。たぶん今の若いファンが思い浮かべるテクノって、ダークでビートがしっかりしている、いわゆるシンセっぽい感じでスタイルが大体決まっているんです。だけど僕みたいにYMOとかKraftwerkに最初に感化されて、デトロイト・テクノみたいなものでスタイルが決まった人間からすると、もうちょっとファンキーさというか、豊かな色を入れていきたいなと思うんですね。だからそれを具体化していく作業ですね。

ーーアルバムとしては『Sunriser』以来ということになるんですが、前作との連続性みたいなものは考えるものなんですか?

ISHII:いや……考えてないです(笑)。ただ、『Sunriser』を作っていた時もトレンドとか考えてなかったので、結果的に似ている部分はあると思います。音色とか、プログラミングなど自分の手癖とかも含めてね。

ーーこれを聴かせてもらって、そういう意味で実にKEN ISHIIらしい作品だなと。

ISHII:ありがとうございます。まあ、そう言ってもらうのが一番ですね。

ーーそれは要するに我々がイメージするところのKEN ISHIIらしさがこのアルバムに出ているっていうことでもあって。ただ、我々リスナーが思っているKEN ISHIIらしさと、KEN ISHII自身が思うKEN ISHIIらしさにはズレもあるようにも思うんですけど、どうですか。

ISHII:その辺のズレは感じることもあります。実際にこのアルバムは普段DJとしてプレイしているものと必ずしも一緒ではないし、たぶんクラブに来てくれるお客さんは、僕がこういう音楽を作っているとは知らないかもしれない。仮に出されても興味を持たないかもしれないんだけど、そこはズレがあるってわかっている上で両方やっていこうっていう感じですよね。僕ならではの音楽を好きでいてくれる人もどこかにいるはずだという、望みを抱きながらこちらもやっています。

ーー自分が思うKEN ISHIIらしさってなんだと思いますか。

ISHII:これまで自分はすごくラッキーだったと思っているんだけど、曲作りにしても活動にしても、嫌なことを全然やっていない。たまに疲れを感じながらも出なきゃいけない時も無くはないけど、音楽的な部分では、自分が本当に好きなことだけをやり続けてここまで来れていることを思うと(僕が思う自分らしさは)自由にやっているところなんじゃないかと思います。

ーーたとえば楽曲を作る時に、これはFLAREの楽曲だとか、これはKEN ISHIIの楽曲だとか、これはそれ以外の楽曲だとか、ある程度選別しながら作っているんですか?

ISHII:最初にお題がある場合はそうですね。横の繋がりのあるレーベルとか、仲間のアーティストから頼まれてこういうものを作ってって言われたら、多少そういうこともあります。ただ、FLAREに関しては自由ですし、FLAREのアルバムと自分のオリジナルアルバム用の曲で言えば、出発点はそんなに違わないかもしれない。だんだん肉付けしていく過程で大分違ったものになることは多いので、結局は違う音になることは多いですね。

ーー(ISHIIさんは)いろいろと音を加えていくほうですよね。そのよさが今回のアルバムはよく出ていると思います。さっき話されていたような、カラフルで多彩な豊かさがある。

ISHII:だと思いますね。削ぎ落としていくよりかは、加えたいほうかもしれないですね。

ーーFLAREのアルバムとの、音楽性との兼ね合いはどういう風に考えていますか。

ISHII:KEN ISHIIのアルバムだと好きなことをやっても、ある程度大勢の人に聴いてもらいたいっていう気持ちが根底にあります。あとは「自分が考えるテクノとはこういうものだ」というマニフェストでもあるんですけど、FLAREの場合は、テクノとかもあんまり意識していないというか。形にこだわらないところがある。FLAREは究極的には誰にも聴いてもらえなくてもいいというか。自分が本当にその時に好きなことをやって、ある意味で出しっ放しっていう感じですよね。だからスタイル的にも、たぶんKEN ISHII名義だったらちょっと落としていたような曲も、入っているかもしれないですね。

ーーFLAREのほうがエクスペリメンタルですね。

ISHII:そうですね。ただ、暗かったり聴きづらいエクスペリメンタルなものじゃなくて、組み合わせのエクスペリメンタル。本来の意味でのフリースタイル、自由に枠を取っ払っていくイメージですね。

ーーなるほど。FLAREとはタイプが違いますが、エクスペリメンタルな曲は今回のアルバムでもやっていて、たとえばGo Hiyama(日山豪)さんとの「Silent Disorder」などはそういう曲です。

ISHII:彼がハードテクノをやっていたころからの知り合いなんですけど、ここ最近はアートの方面で実験的な音楽をやっていて、その作品がすごく好きだったんです。「そもそも自分はこういう音楽を作ってみたかったんだよな」って思わせてくれる。そういう実験性は自分も今よりもっと持ってたよな、って思い出させてくれる存在なんですよ。

ーーデビューアルバムの『Garden On The Palm』(1993年)の頃ですね。そのままエクスペリメンタルな方向に行こうと思えば行けたわけでしょう。そうじゃなくてレコードバッグを持って世界中を旅して、DJとして頑張るっていう方向に行ったわけですが、それはどこが分岐点だったんです?

ISHII:90年代の後半に『Jelly Tones』(1995年)である程度知ってもらえるようになったんですけど、どんどん大きくなるにつれ、必ずしもこれは元々自分がやりたかったことじゃないなって思うようになった。自分が本来やりたかったことはなんだろう、もう1回原点に帰りたいと思ったんです。もともと自分が好きだったのがデリック・メイだとかジェフ・ミルズだし、彼らのように自分の腕ひとつで行くのがいいなと思って。で、エクスペリメンタルなものは常に作ってみたいっていう気持ちはあったんですけど、まず最初にテクノでデリック・メイみたいな見本がいるとしたら、そことエクスペリメンタルって必ずしも両立しないのかなって思ったんですね。僕はいまだにAutechreがやっていることはカッコいいと思うし、あっちのほうに行ったらカッコいい存在であり続けられると思うんだけど、そのエリアからずっと抜け出せないだろうなとも思った。自分はもっとテクノを楽しみたいし、やっぱりインターナショナルに旅して、プレイしていろんなところを見て周る楽しさを知りたいから。自分の経験を大きく豊かにしていくことーー音楽的な経験だけじゃなくて、いろんなものを見てみたい。かつテクノで世界を知ることができるなら、それが一番だろうと思った時に、自分の腕ひとつでプレイして周って稼いで、自分の好きな音楽を作り続ける。それができるのはエクスペリメンタルというよりもこのスタイルだなってことを2000年くらいに思って。そこが分岐点ですね。

ーー作品としてはエクスペリメンタルなものを続けて、一方でDJとしてダンスフロアを踊らせるっていう、両輪で行くこともできたわけですよね。やっぱりフロアでDJとしてやっていることと、自分の作品が地続きでなければならないっていう思いがあったんですか?

ISHII:地続きであれば理想なんですけど、テクノって本当に世界中に広がっていて大きいジャンルだし、生半可な気持ちではいけないんですよね。両方少しずつやっているようじゃ絶対無理というか両方とも失敗する。エクスペリメンタルなものを突き詰めて、ある意味自分だけの方向性で行けば孤高の存在でずっといられると思うんですけど、一方でテクノって不特定多数を踊らせてナンボなわけで、そういう競争の中に自分を放り込まないと生きていけないから。そこはしっかりやらないといけないっていうのがあると思います。

ーーAutechreもいろんなものを捨てて、本当にストイックにエクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックを突き詰めてますからね。

ISHII:彼らのやっている音楽はカッコいいけど、本当はもう少し普通のことをやりたいんじゃないのかなって、アーティストとしては思うことがある。彼らとも昔よくイベントやフェスティバルで一緒になっていたんだけど、すごく明るくて全然気難しい感じじゃないの。明るくてビールばっかり飲んでいる、普通のナイスガイなんですよ。みんなでべちゃくちゃ喋ってて。だから本当はもっと普通に、クラブでイエーイ! ってやりたいんじゃないかなって思うんだけど。

ーー照明全部消した暗闇ライブじゃ、なかなかイエーイ! にはならないですね(笑)。

ISHII:あそこまで行ったらあれを極めるしかないと思うので。そういうポジションでいいか悪いか、好きか嫌いかっていうところですよね。僕はもっと世界を周って、いろいろ経験したい気持ちが強かったかもしれないですね。

「(耐久性のある曲は)ある程度普遍性のある音が入っている」

ーークラブトラックの賞味期限が短くなっているという話もありましたが、ある程度耐久性があるというか、5年、10年経っても聴けるものは意識しますか?

ISHII:そうなるといいなと思っています。DJトラックは悪く言うと使い捨てみたいになりつつあるので、そうはなってほしくないなっていう気持ちはすごくありますね。アルバムとして出すからこそある程度長く生きてくれると思うし、長く生きるのであれば、それに見合う曲を作りたいって思っています。

ーー耐久性のある曲とはどういう曲ですか?

ISHII:聴く人にとっても、自分にとっても、ある程度普遍性のある音が入っているというか。僕の場合、音色では好きなものと嫌いなものがあると思います。

ーーそれは今作を聴いてもよくわかります。

ISHII:これは5年経っても好きな音だろうなって……音色にもブームやトレンドっていうのがあって、みんな似たような音を使う場合があるんですけど、やっぱりそういうものは使いたくないし、自分がこれはずっと好きだろうなって思えるものを入れ込みたいです。

ーー新しい機材が出てくるとみんなが同じものを使うから、同じような音が氾濫することもありますね。

ISHII:それもありますね。僕も古いものばかり使っているわけじゃなくて、新しいものも使っているんですけど、その中で何が本当に好きか、あるいは自分っぽいかっていうのは選びますね。シンセの音とか、音源が1000入ってたら1000聴きますからね。その中で本当にこの音は自分に合うっていうものを選び込む。音楽を作る上でそれが一番自分の好きな、こだわりたいところでもあるので。やっぱり、自分にしかできない音の重ね具合や選択でありたいと思いますから。

ーー音色や音の重ね方で、自分の中にある程度定番的なものはあるんですか。

ISHII:なんとなくありますね。たぶんそれが自分の味になっているのかなと。

ーー人によってはそういうある種の手癖とか定番を全部排除していこうという考え方をする人もいますね。過去の自分の曲に似ていたら全部ボツにするとか。

ISHII:まあねぇ。そこはあんまり気にしない境地に大分前になっていますね(笑)。自分は今、エレクトロニックな音のいじり方は大体わかったんですよね。これからやりたいこと、ずっとアイデアはあるけどやっていないことはある。そこは自分の能力や経験が及んでいない部分なので、これからトライしたいことはあるんですけど。ただ、今回は自分が本当に作りたいものを作るという意味ではある程度自分ができるところでやっています。

ーーなるほど。

ISHII:ただ音の処理だとか、5年前、10年前にはなかった音の使い方はいっぱい入れています。この10年、15年くらいで聴く環境が変わって、クラブのPA機材もすごく良くなっているし、前は聴こえなかった音が聴こえるようになっている、その分ローエンドに関してはすごく時間かかっていたりするんですよ。ローエンドの部分を確認するためだけにスタジオに入って、全曲もう1回やり直したりとかするし。

 それとは別に、今イヤホンとかでストリーミングとか、コンピューターだけで聴く人も増えているから、そういう人たちの聴き方も考えなきゃいけない。どういうふうにすればどっちでも音が全部聴こえるのかとか、そういう部分が本当に難しくて。日々答えがない中でやっています。最近だったらYouTubeがラウドネスノーマライゼイションの基準を変えたって話があって。そのかけ方に癖があったりするので、YouTubeで一番よく聴こえるにはどういう音圧がいいのかとか。アルバムの最後の作業はずっとそればっかりやってましたね。

ーー今回マスタリングはまりん(砂原良徳)さんですが、そういう話をしたんですか。

ISHII:まりん君とはそういう話はしなかったけど、いわゆる音圧とかラウドネスの数字的にはこれくらいを目指してやってほしいとか、そういう話はしていました。たぶんこれが5年前だったら、なんとなく上げられるだけ上げてくれっていうのが、世の中的にあったのかもしれないですけど、今はまたちょっと押さえられていて。必ずしも音圧ガッツリとか、大きく聴こえるのがいいわけでもなくなってきている。この手の音で一番音質的によく聴こえて、なおかつ音が小さくてインパクトないねって言われない感じにしようっていう意識はあり、その希望は伝えました。

MVでさらに広がるKEN ISHIIの楽曲

ーーKEN ISHIIの中にある多様性という意味では、『パックマン』40周年のテーマ曲(「JOIN THE PAC(Official Theme Song for PAC-MAN 40th Anniversary)」)とMVがめちゃくちゃよかったですね。

ISHII:オファーがあった時は今作っているアルバムとはだいぶ違うぞとは思ったんですけど、自分も子供の時にやっていたゲームだし、正直こういうものに呼んでもらえるのは非常に光栄なことなので。もちろんやらせていただきますと。だからアルバムを作るのとは全然違う頭で作ってはいるんですけど、気合入れてやりました。

JOIN THE PAC (Official Theme Song for PAC-MAN 40th Anniversary) – KEN ISHII

ーー例のテーマとなるメロディを使うことが前提だったんですか?

ISHII:必ずしもそこまで言われなかったんですけど、やっぱりやる以上はそれをやらなきゃ意味がないだろうと思って。自分にお題を与えて、明るさ一辺倒でどれだけ押せるかっていうのが自分の中での課題で。これが結構難しいんですよ。言い方が悪いけど、ただ単に明るいだけの曲って本当に難しくて。いろんなフレーズを作っていると、あんまり明るくないものも出てくるし、起承転結も考える。明るいのがあったらそうじゃないものを持っていくと映えるとか。でも、今回はどこを切っても必ず明るいものにするしかないなと思って。曲のどの部分を切っても『パックマン』のイメージでいけるっていうのを頑張ってやったつもりです。すごくシンプルな曲に聴こえると思うんですけど、大変でした。

ーーMVは音が先にできているんですか?

ISHII:音が先ですね。

ーーMVの画は全部監督が考えたんですか?

ISHII:世界観は全部そうですね。ちょっと80’sっぽい感じというか、ヒップホップ以前のエレクトロの感じに近くて。『パックマン』ができた頃の時代をモチーフにしているんだと思うんですけど、だからヒップホップじゃないんですよね。その前のエレクトロなんですよね。

ーー『パックマン』のMVと今作の「Bells Of New Life」のMVは同じ児玉裕一監督なんですね。

ISHII:そうですね。稀代の映像作家で、超ビッグネームだから、(僕と)接点とかあるのかな? って思っていたんですけど、たまたま縁があっていろいろ話していたら、普通にすごくスウィングするタイプで。しかも「EXTRA」のMV(KEN ISHII、1995年の世界的大ヒット。MVはアニメーション作家の森本晃司が監督)を見た時の衝撃もすごく熱く語ってくれたり、僕の音楽に関してもすごく聴いてくれていて。本当に忙しい人なのに、個人的なメールで「もしお話いただけたら全力でやりますので」って。こっちもちょっと恐縮してたんだけど、そういう縁があって。しかも彼の作風って、僕がこれまであんまり関わったことがない映像のスタイルなんだけど、僕の音楽のこともわかってくれているし、僕の違った部分を引き出してくれたなって気がします。

KEN ISHII – Bells of New Life

ーー「Bells of New Life」はコンセプチュアルな作品に仕上がってます。歌詞のない音楽に対してストーリー性のある画を当てていくのは映像作家のイマジネーションなんですけど、どういうふうにスタートしたんですか。

ISHII:曲とコンセプトを伝えた中で、アートワークもそうだし、アルバムのタイトルは僕の中で決まっていたので、その辺をまとめて出したら、曲といくつかのキーワードで児玉さんの中でバーっと膨らんだみたいで。そのアイデアで全部児玉さんが作り上げた感じですよね。

ーー今までにないというか、テクノのMVとしてはかなり異色なものになっていますね。

ISHII:ショートフィルムみたいな感じですよね。明るくもミステリアスみたいな。曲もそうなんですけど、そういう不思議な感じをすごく出してもらえたなと思います。1988年に世田谷の中学校で実際に起きた”机「9」文字事件”からのインスピレーションもあったみたいですね。『Möbius Strip』というタイトルと実際の事件が結びついたみたいで、それを仕掛けた子供たちがいるっていうふうにイマジネーションが広がっていったようです。そういう実際にあったストーリーとか、細かい小技も含めて、語るところがいっぱいあるビデオで面白いなと思います。

ーーなるほど。このアルバムは今のテクノのトレンドからは離れているって話がありましたが、このアルバムの曲が鳴る現場は、どういうものを想定していますか。

ISHII:せっかくなのでどこかでライブはやりたいなと思っています。もちろんこの中でもジェフ・ミルズとやった曲とかDOSEMとやった曲とかは、自分のDJセットにも入れ込むことはできるんですけど、やっぱり自分の世界観をある程度強くすることを考えると、ライブじゃないと難しいのかなと思うので。来年だと思うんですけど。

ーー楽しみですね。今作はCDを買ったリスナーがちゃんと聴き込むのに相応しい、リスニングアルバムという側面もあるなのかなと思いました。現場が、聴く人のリスニングルームにある、っていうあり方自体が、アルバム的なのかなと。単にDJ用の道具を並べただけのアルバムは今でも結構あるけど、そういうものとは全然違う。フロア向けのダンサブルな曲も入っているんだけど、ちゃんと向き合って聴くこともできるという意味で。

ISHII:そうですね。だと嬉しいですよね。大きな音で聴けるのなら聴いてもらってもいいし、あとはヘッドフォンで細かくこの音どうなってるかな? って感じで聴いてもらうのも嬉しいです。

(取材・文=小野島大)

■リリース情報
KEN ISHII『Möbius Strip』(メビウス・ストリップ)
2019年11月27日(水)リリース
完全生産限定盤 Type A
7インチサイズハードカバー仕様
[CD/CD-EXTRA/7inch Clear Vinyl] 3枚組 折込ポスター付
定価:¥4,600+税
全世界1,000セット限定

完全生産限定盤 Type B
7インチサイズハードカバー仕様
[CD/CD-EXTRA] 2枚組 折込ポスター付
定価:¥3,300+税
全世界1,000セット限定

<収録曲>
*Type A, B共通*
DISC 1
<CD>
1.Bells of New Life
2.Chaos Theory
3.Take No Prisoners (Album Mix) with Jeff Mills
4.Vector 1
5.Green Flash (Album Mix) with DOSEM
6.Silent Disorder with Go Hiyama
7.Prism
8.Vector 2
9.Skew Lines
10.Polygraph
11.Quantum Teleportation with Jeff Mills
12.Vector 3
13.Like A Star At Dawn

<CD-EXTRA>
JOIN THE PAC (Official Theme Song for PAC-MAN 40th Anniverary : Club Mix)
Bells of New Life MV & 25周年スペシャルインタビュー映像
KI Möbius Strip オリジナルフォント(Mac,Windows,Unix対応 OpenType PS)

*Type Aのみ*
<7inch Clear Vinyl>
A side / EXTRA (’95 Original Video Edit Rematered)
AA side / JOIN THE PAC (7” Version)

*写真は、7inch Clear Vinyl封入の【完全生産限定盤 Type A】

■関連リンク
KEN ISHII公式サイト
KEN ISHII Facebook
KEN ISHII Twitter
KEN ISHII Sound Cloud
『Möbius Strip』特設サイト

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