Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『エール』窪田正孝が歩み始めた“音楽のない世界” 幼なじみとの再会は何をもたらす?

リアルサウンド

20/4/18(土) 6:00

 裕一(窪田正孝)に試練の時が訪れる。『エール』(NHK総合)の第3週「いばらの道」では、裕福で順風満帆に見えた裕一の人生に大きな壁が立ちはだかることに。幼少期の仲間たちが成長し、裕一と新たに築いていく関係性や、川俣での新しい環境の中で歩みを進める姿が描かれた。

【写真】窪田正孝撮り下ろしカット

 裕一にとって、音楽を諦めたことは大きな決断であり挫折だっただろう。裕一がこれまで自由に音楽をやれていたことも、夢を大切に持ち続けることができたことも、作曲の才能があったからだけではなく、裕福な環境の中で両親が応援してくれていたことが一つの要因にあった。しかし、裕一にとってはこれが当たり前のことだったため、自分が苦労をせずに夢を追えていたことに気が付かなかった。

 裕一のおおらかで優しい気持ちは、言い換えれば裕福な人間の余裕でもある。こうしたことを“個性”だと指摘し、背中を押してくれる友人もいた。しかし一方で、裕一に仕返しをした志津(堀田真由)のように「昔は音楽家でございって顔してたけど、今は銀行家でございって顔。バカバカしい!」と、良く思わない者もいる。裕一の心の余裕は、優しさや人当たりの良さとして歓迎されることもあれば、甘さや嫌味として厳しく受け止められてしまうこともある。環境の変化や、志津、鉄男(中村蒼)との再会で、裕一の気持ちに変化は訪れるのだろうか。

 朝ドラの楽しみの一つに、幼少期に過ごした仲間たちの成長がある。まさにその楽しみを大いに感じられたのが今週のエピソードだろう。裕一は商業学校で楠田史郎(大津尋葵)と友人になるが、史郎は幼少期に裕一をいじめていた主犯にいつもくっついていた少年だった。裕一と同じハーモニカ倶楽部に所属した史郎は、裕一が作曲に苦しんだときも、“裕一らしさ”は誰のことも受け止める「優しさ」だろうと助け舟を出す。

 裕一が川俣に来てから初めて恋をした女性は、幼い頃に裕一を投げ飛ばしたとみ(白鳥玉季)だった。当時、裕福な家庭に育ったとみだが、実家が倒産しダンスホールの踊り子として生計を立てていた。思わぬ再会とほろ苦いエピソードについ胸が苦しくなる。しかし、嬉しい再会もあった。裕一が幼少期に助けてもらった鉄男との再会だ。藤堂先生(森山直太朗)の紹介で新聞記者になった鉄男は、裕一が音楽を続けていないことに対して詰め寄るが、彼の言葉が音楽への情熱に蓋をしていた裕一の心を変える好機になるのではないだろうか。

 青年期に入った裕一は内気でおとなしいものの、音楽に対する激しい気持ちを楽譜にぶつけたり、恋をしたり、様々な感情と出会っていく。こうした裕一の成長を窪田は繊細に演じる。特に印象的なのは、裕一の曲がハーモニカ倶楽部の講演会で演奏されたシーンだ。指揮をした際に映し出された裕一の苦悩の表情と顔を歪めた泣き顔は、セリフがなくともその姿だけで、視聴者を突き刺すように悲しみを伝える。泣いている表情を断片的に見ただけで、ついもらい泣きしてしまうほど裕一の感情が伝わってきた。

 次週はそんな裕一が新たな一歩を歩み出す。そして将来の伴侶、音(二階堂ふみ)との文通が始まることが明らかになっている。裕一が成長していく様子を、そして再び音楽の道に戻っていく姿を見届けていきたい。

(Nana Numoto)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む