海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔
ダニエル・クレイグ
連載
第63回

── 今回は、やっと公開になる『007』シリーズ最新作『007ノー・タイム・トゥ・ダイ』のジェームズ・ボンドことダニエル・クレイグです。彼がボンドを演じる最後の作品なんですよね?
渡辺 そういう話ですね。ちゃんと有終の美を飾れているのかが気になるところ。前作『007スペクター』(15)のラストでは、宿敵でもあるスペクターの首領、ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)を殺さず、愛車であるアストンマーティンのDB5にマドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)を乗せて走り去っていました。今回もブロフェルドは登場しますが、実働部隊として活躍するのは“フレディ・マーキュリー”ことラミ・マレック扮するサフィンのようです。かつてスペクターで暗殺者として働き、今はテロ業界のトップに君臨する男……らしいです。

── 『ボヘミアン・ラプソディ』(18)でオスカーを獲得した人ですね。
渡辺 私は彼が苦手なのでテンションが落ちてます(笑)。というか、世界を震え上がらせるような悪役にしては小粒じゃないですか? それでいうとブロフェルドを演じたクリストフ・ヴァルツも小粒。ヴァルツの使い方はやっぱり発掘してきたタランティーノが一番うまい。つまり小悪党。マレックもサイコキラーなどのドメスティックな悪人は良さそうだけど、ワールドワイドの悪人となると迫力が足りないような気がします。驚くようなカリスマがない限り、小粒な印象の人は世界を揺るがす悪人に向かないんじゃないかと。

その点、『スカイフォール』(12)が傑作になった要因のひとつには悪役のハビエル・バルデムに悪の魅力があったからだと思います。『ノーカントリー』(07)でオカッパ頭の殺し屋を演じオスカーを手にした役者だったから、当然なんですけどね。

── 監督はキャリー・フクナガですね。
渡辺 最初は私の好きなダニー・ボイルだったんですが、プロダクションチームと揉めて降板し急遽、フクナガにバトンタッチされた。この監督どうなんでしょう? ダニー・ボイルの『007』なら想像もできたけど、この監督はどんな個性があるのかよく分からないので見当もつかないですね。
── そこで、ダニエル・クレイグです。どんな人なんですか?
渡辺 ダニエルさんって、ボンドを演じてやっとブレイクした感じじゃないですか? それまでも『ロード・トゥ・パーディション』(02)や『レイヤー・ケーキ』(04)など、いろんな映画に脇役的立ち位置で出続けていて、さほど印象のない人だった。
実は私、『トゥームレイダー』(01)のときにインタビューしているんですよ。あのときはアンジェリーナ・ジョリーが圧倒的だったせいもあってか、彼の印象がまったくなくて、ボンドに抜擢されて、「あ、あのときの人だ」と思ったくらい。当時からオーラが凄かった、なんてことはみじんもなかったので、役者もどこでどう変わるか分からないと思っちゃいますよ。

そもそも、彼が007に抜擢されたときも、金髪碧眼のボンドはこれまでいなかったので「大丈夫かっ!?」という感じだったけど、結局は問題ナシ。それどころか、みんな拍手で彼を受け入れた。
── そうでしたね。
渡辺 ダニエルさんになってボンド像がリアルになりましたよね。ショーン・コネリー時代は高級車に美女、世界を駆け巡って男性の憧れ的存在になり、ロジャー・ムーア以降はスパイのカリカチュア的な感じになっていた。それが、ぐっと方向転換して今の時代に合ったキャラクターになったんだと思います。だからこそ『スカイフォール』のような作品も生まれる。
彼はボンド役を引き受けたときのことをこう語っていました。
※ダニエル・クレイグが語るボンド役を引き受けたときの気持ち、その他作品のときのエピソード、若き日のウェイターのアルバイト話など、続きは無料のアプリ版でお読みください!