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欅坂46にとって“フロントメンバー”とは何なのか? 過去シングル曲のポジション構成から考察

リアルサウンド

20/1/15(水) 7:00

 年明け直後の『CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ 2019 ⇒ 2020』(TBS系)で披露された「黒い羊」で、2期生の森田ひかるのパフォーマンスが好評を得たことで、欅坂46のセンターに対する注目が集まっている(参考:欅坂46 2期生 森田ひかる、センター抜擢の意義とは? 「黒い羊」パフォーマンスから見えた新たな道筋)。誰がセンターに立つかで印象が変わるのも欅坂46ならではの楽しみ方だろう。しかし、確かにセンターは重要な立ち位置だが、ステージを作り上げているのはひとりではない。今回はそのセンターをすぐそばで支える“フロント”というポジションに焦点を当ててみよう。欅坂46にとって“フロント”とは何だろうか。

(関連:欅坂46 『二人セゾン』MV

 そもそもフロントとは前列のことであり、複数列のうちの最前列を意味する。最前列はライブやテレビ披露の際に画面に映りやすく、MVでも映し出されるカットが自然と多くなる。したがって、フロントメンバーは視聴者にグループの“顔”として認識されやすい。その上、前に人がいないためダンススキルや表現力も求められる。さらに、たとえ他のメンバーが完璧にダンスをこなしたとしても、ひとりのミスがグループ全体に影響を及ぼしてしまう可能性があるのが前列だ。そのためフロントは、ある程度の信頼と実力がなければ務まらないポジションである。

 フロントに選ばれる理由には人気やダンススキル、あるいは将来性などといった様々な要素が挙げられる。仮にスキル面ではまだまだだとしても、今後の成長が期待されるメンバーが立つことも少なくないし、また逆も然りだ。重要なのは、何かひとつだけの要素に絞らないことだろう。人気だけで選べばパフォーマンスが見劣りしてしまうし、将来性だけで選べば今いるファンが遠ざかってしまう。あらゆる要素を考慮した上でフロントメンバーを構成することが作品の質やグループの未来に繋がるのではないだろうか。

 欅坂46はこれまで8枚のシングルをリリースしてきた。その中で、1作目~5作目までの間に当時のメンバー全員がフロントを経験している。そしてその間にも、それぞれの特性を活かした人選がされているのが興味深い。たとえば、3作目のシングル曲「二人セゾン」ではバレエ経験者を前列に据えたことで柔らかなイメージが押し出されている。5作目のシングル曲「風に吹かれても」には黒スーツをスタイリッシュに着こなす前列のメンバーたちの存在が欠かせない。このようにフロントを入れ替えている期間にも、楽曲との関連性を感じ取れる人選がされてきたのだ。

 もとより、欅坂46のダンスそのものはポジションも非常に流動的で、フォーメーションがさほど重要ではないため、ほとんど“席替え”的なものではある。とはいえ、サビではポジション通りに整列したり、比較的フロントメンバーが目立つのは確かであり、何よりこうして周りから考察される対象にもなる。少なくとも5作目までの欅坂46は、全員に担当させながらも曲に合わせたフロントにしたことで“当事者意識”が一人ひとりに芽生えたはずだ。グループにおける自分自身の役割やアンデンティティを見つける手掛かりにもなったことだろう。まさにそれこそ初期の欅坂46におけるフロントの意義だったのではないだろうか。

 ひとまず全員が前列を経験したことで、6作目以降はフロントの意味合いにも変化が起きたと見てよいだろう。加えて、この時期から平手友梨奈がグループ活動から離れることが度々あったため、フロントメンバーがその代わりを務めることが増えていった。6作目の「ガラスを割れ!」では前列にいた今泉佑唯と小林由依がセンターに立ち、7作目の「アンビバレント」では結果的に前列の全員がセンターを経験している。つまり、この時期の欅坂46のフロントにはセンターとほぼ同等の役割が与えられていたのだ。欅坂46を取り巻く議論でよく目にするのが不動のセンターに対する是非だが、実際のところは他のメンバーが何度もセンターを経験している。なので、フロントのメンバー構成こそもっと注目されるべきではないか。

 選抜制になった現在、ポジションの持つ意味は以前にも増して強くなった。だからこそ、9作目のフロントに立つ2期生の田村保乃と松田里奈には期待せざるを得ない。2期生が本格的に活動し始めた今、フロントからも彼女たちへの期待感が読み取れるだろう。そして、これまでフロントを何度も務めてきた小林と渡邉理佐が、その2人を支えるようにして両端に立つのは2期生にとっても心強いはず。年末の音楽特番でも常にこの小林と渡邉は抜群の安定感を発揮していた。現時点で楽曲との関連性はわからないが、“将来性”と“経験値”に重きを置いたメンバー構成であることは容易に理解できる。

 どのグループでも重要なポジションとなるフロント。欅坂46の場合、全員に担当させながらも曲に合わせた人選がされてきた初期段階から、センターという大きな役割を同時に担わせた期間を経て、現在は新メンバーと手を取り合って進んでいくモードへと移り変わっているようだ。単にポジションと言えども、そこにはその時どきのグループの状況や目的が見えてくる。(荻原梓)

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