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野村正昭 この映画がよかった! myマンスリー・ベスト

私の10月第1位は、日本映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、外国映画『異端の鳥』に決定!

毎月連載

第27回

20/10/31(土)

10月公開の日本映画、この10本

①劇場版「鬼滅の刃」無限列車編
②スパイの妻 劇場版
③望み
④浅田家!
⑤瞽女GOZE
⑥小説の神様 君としか描けない物語
⑦みをつくし料理帖
⑧生きちゃった
⑨ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ
⑩劇場版 BEM〜BECOME HUMAN〜

※対象は9/27~10/22公開のもの

今回は諸事情で、日本映画、外国映画ともに、10月22日公開分までを対象として、マンスリーテンを選ばせていただきました。23日以降公開分は来月分にてということで、何卒よろしく。

さて、10月公開分で、何が驚いたかというと、やっぱり『劇場版「鬼滅の刃」無限列車』に尽きるでしょう。1カ月前には、まさか、こんな事態になろうとは予想もしていませんでしたが、じわりじわりと、ヒットの兆しが見えてきて、ついに大ブレイク。公開されてから慌てて、新宿のシネコンに出かけるも、夕方からの回は完売で入場できず。翌日、改めて他のシネコンに出かけるも、ここでも午後からの回は満席でOUT。考えの甘さを思い知らされた。ロビイでは、市松模様の着物で刀をさした若い男性や、口に棒のようなものをくわえた着物姿の女の子(これが誰をさしているのかは、映画を観て分かった)がウロウロしていて、内容を殆ど知らなかった私にとっては、このコスプレ騒ぎは何事かと茫然としてしまいました。日を改めての午前中、3度目のトライで、ようやく見参。

さすがに、その時は物語のアウトラインを少しは予習していましたが、その効果もあってか、いやぁ、面白かった。鬼滅の刃ならぬ付け焼き刃でも、何とか間に合うもんですね。笑いあり、涙あり、アクションシーンも迫力満点で、一気に観ることができて、大満足。様々な状況が作用して、記録的なメガヒットになった経緯は既に報道されていますが、それでも映画自体に力がなければ、ここまで数字が伸びなかったことを思えば、やはり大したものだと言わざるをえません。炭次郎も禰豆子も善逸も伊之助も、みんな魅力的なキャラクターだし、煉獄さんのラストファイトには感動させられました。と、ここまで書いたところで、10日間の興行収入が史上最速で、100億円突破の報が。どこまで記録を更新されるのか、興味津々。

しかし、ひとつのシネコンで一日20〜30回近く『鬼滅の刃』が上映されているので、必然的に他の作品が霞んでしまうのも仕方がないところ。初日が被った『みをつくし料理帖』や上映中だった『浅田家!』『望み』『ミッドナイト・スワン』あたりが軒並み一日2〜3回上映になってしまって、寂しい限り。ことに『みをつくし料理帖』は昨年NHKで放映された黒木華主演のTVドラマ版と何かと比較されたりしていたけれど、映画版も松木穂香や菜緒も好演、かつての角川映画ゆかりのキャストも結集し、美術も充実、健闘していただけに、広く観られないのは勿体ないと思うことしきり。

今月は、この10本以外にも『あざみさんのこと』『アイヌモシリ』『鬼ガール!!』なども入れたかったのですが、御容赦のほどを。(私が観た10月の日本映画は18本)

『スパイの妻 劇場版』(C)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

10月公開の外国映画、この10本

①異端の鳥
②ある画家の数奇な運命
③フェアウェル
④わたしは金正男を殺してない
⑤82年生まれ、キム・ジヨン
⑥アウェイデイズ
⑦靴ひも
⑧パピチャ 未来のランウェイ
⑨ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン
⑩トロールズ ミュージック★パワー

※対象は9/27~10/22公開のもの

コジンスキーの原作小説を角川文庫で初めて読んだのは、確か同じ原作者の『チャンス』(79)が公開された頃だったから、もう今から40年近く前。記憶も朧(おぼ)ろですが、なんともいえず、嫌な気分になったことだけは覚えていて、その『異端の鳥』を観て、おぞましさが甦り、慄然とさせられました。勿論、具体的なディテールは忘れましたが、戦時下における少年の想像を絶する地獄めぐりは、文句のつけようがない出来栄えだけに、「二度と観たくない傑作」としか言いようがなく、これは私にしてみれば、最大級の褒め言葉のつもりなんですが。そういう作品に、日比谷のシャンテで私が観た回は、ほぼ満席の状態で、日本の映画観客層の厚さにはビックリ。決して後味が良いとはいえない、この作品が真面目に支持されているのは心強いです。

ディズニーやマーベル作品の不在の中で、地味な作品の健闘が目につきますが、それでもハリウッドのメジャー大作が観れないのは寂しい限り。そうしたヒット作と拮抗してこそ、正常な状態なんだろうと思うので、来春以降の展開に期待しつつ、それはそれとして、『アウェイデイズ』のような旧作や、ドキュメンタリーの傑作『私は金正男を殺してない』それに韓国の良心作『82年生まれ、キム・ジヨン』は、それぞれ独自の面白さがあり、『私は金正男を殺してない』以外、水先案内できなかったのが残念。

そういえば、30日からスタートの「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」は、往年のフランス映画の底力を久々に堪能できて、大いに楽しめます。旧作だけど、全然古びてないどころか、滅茶苦茶面白い。『オー!』(68)と『警部』(78)を除く6本は、どれもソフト化されておらず、中でも『プロフェッショナル』(81)は劇場初公開で、エンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしく、サントラ・ファンからも公開が待望されていただけに、必見の注目作。未公開作は、まだまだ沢山あるので、ぜひ第2弾も実現してほしいなあと、これは一ファンからのお願いですが。(私が観た10月の外国映画は15本)

『ある画家の数奇な運命』(C)2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG

プロフィール

野村正昭(のむら・まさあき)

野村正昭(のむら・まさあき)1954年山口県生まれ。映画評論家。年間新作800本を観る。旧作も観るが、それを数えると空恐ろしい数になるので、数えないことにしている。各種ベストテンの選考委員を務めている。

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