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いま、最高の一本に出会える

chelmicoから感じる“時代の寵児”としてのポテンシャル ブレイク背景と巧みなラップスキルを分析

リアルサウンド

19/8/23(金) 16:00

 最近、「なぜchelmicoに注目が集まっているか?」「chelmicoがタイアップに選ばれる要因は?」という記事を目にする機会が増えた。そこでつらつらと思い出したのは、先日、ハタチそこそこの編集者との会話で生まれた、90年代後半~00年付近のPUFFYがいかにとんでもないスターだったかの説明だった(とはいえ、PUFFYはいまも現役で活動されているので、「往時の」といった扱いをするのが非常に失礼なのは百も承知なのだが……)。

chelmico「Balloon」MV

 しかしジェネレーションギャップか、『アメトーーク! 』(テレビ朝日系)の時間帯に冠番組『パパパパパフィー』を持ち、出す曲はすべてスマッシュヒット、奥田民生をはじめとする敏腕ミュージシャンに囲まれ、雑誌の表紙は当たり前……という当時のブレイクっぷりを伝えても、いまいちピンとこないようだ。

 無理もない。あれほどのメディアスターとなるような「アーティスト」が現在いるのか、と言われれば、現在は見かけづらいし、想像もつかないだろう。そこで筆者が例に出したのが「ネクストPUFFY」とも言われるchelmico。例えばchelmicoが上記のような存在になったら……という話をしたら「なるほど! そういうタイプのスターだったんですね。その例えで分かりました」との反応を得られた。

 その若い編集者がそう理解できたように、PUFFYとchelmicoには多くの共通点がある。女性二人組であること、キュートであること、仲良しであること、ガツガツしないこと、オシャレであること……といった外側の部分に加えて、音楽的なクオリティが高いこと、パフォーマンス力(ボーカル/ラップ)が高いこと、「いま現在」を象徴する音楽であること、そして誰も傷つけない音楽であること。そういった様々な要因が共通している。

「爽健美茶」視聴映像

 そういった意味でも、chelmicoも時代の寵児となり、例えばこの先冠番組を持つような存在になってもそこまで驚かないし、普通にテレビ番組で活躍する姿も想像できる。また上記のような共通点は、時代の要請でもあるだろうし、その要請に応えられるキャラクター性、そして彼女たちの「ピースフルさ」という部分が、爽健美茶のCMに起用された「爽健美茶のラップ」やApple WatchのCM曲に使用されている「Player」(1stアルバム『POWER』収録曲)、「switch」のVTuberドラマ『四月一日さん家の』オープニングテーマ採用などに繋がっているだろう。

「switch」MV

 chelmicoのブレイク要因は前述した通りだが、それを超えて注目していただきたいのは、新譜『Fishing』である。

 このアルバムはイメージとして、上記のような「キャッチーで、キュートで、フレッシュな存在であるchelmico」という、幅広いリスナーや様々なメディアがキャッチしやすい糖衣でしっかりとコーティングしながら、その実は恐ろしくハイスキルで、ラップに対してのこだわりが詰まった作品になっているのである。

 もともと、フロウ面を中心にしたラップスキル、そして情感や世界観づくりの精度は非常に高かったchelmico。その上でとにかく今回驚かされたのは、そのライミングスキルの高まりと、RachelとMamikoのライミングの個性差である。Rachelは母音を丁寧に追いながら、それを小節末で踏んでいくオーソドックスな構成はもちろん、韻を小節の真ん中や頭でも連結させ、そういった入り組んだライミングによって生まれる聴感の良さを提示する。それらは「ひみつ」や「Summer day」で顕著に現れているが、決してロングライムでは無いが、短い韻で細かく刻んでいくことで、Rachel特有の、声にインパクトのある、「縦のビート感」が映えるラップを、よりクールなものにしている。

chelmico「Summer day」

 一方、フロウや音感にメロウにたゆたうような「横のグルーヴ」があるMamikoは、文字で起こすと厳密には踏み外しているのだが、発音や発声、口の開き方でライミングしているように聴こえさせる、R-指定が言うところのMC漢 a.k.a GAMIが使う「漢踏み」のようなライミングを、その独特のメロディアスなフロウの中に織り込んでいく。

 その意味でも、声質的には近い部分のある二人だが、ラップスタイルという部分での差異はこのアルバムではかなり顕著になっているし、それがユニゾンしたときの感触は、これまで以上にハピネスな聴き心地がある。彼女たちの結成経緯が「お互いにRIP SLYMEのファンだった」ということは巷間よく言われることで、それはそれで事実なのだが、それがこれまでは「女の子二人組ラッパーの、ラップへのキャッチーな入り口」という意味合いを持っていた。しかし今回のアルバムを経た上では、「RIP SLYMEからハイセンスなライミングとフロウ、MCごとの個性と、それが収斂したとき快感をしっかり学んだ二人」という意味合いに変わるだろう。それぐらい、今回の『Fishing』におけるラップの組み立ては非常に巧みだ。

 ラップというアートフォームは、RHYMESTER・宇多丸の言葉を引けば「スッゲー敷居低い歌唱法」(「ザ・グレート・アマチュアリズム」)であるし、誰でも出来る表現方法なのではある。そしてchelmico自身も、キャラクターとしても「ラッパー然」とはしないし、ラップに対して研究熱心であることはアピールしない。それよりも(これは邪推ではあるが)「スッゲー敷居低い歌唱法」であることを逆手にとって、「なんかラップやってます~」であったり、「ラップやったら出来ちゃった」といったパブリックイメージを持たれていたり、そういったイメージを利用している部分も少なくはないだろう。

 しかし彼女たちに対して、様々なアーティストから客演オファーというラブコールが引きも切らないのは、こういったスキルフルさと、ラップスキルやラップの構造に対して、非常に真面目に考えていることが影響しているだろう。その意味では、「キャッチーな存在としてのchelmico」という「周りからの需要や要求」の方向に寄ってしまった部分がなんとなく垣間見れてしまったアルバム『POWER』(2018年8月)が、どことなくボンヤリとした印象の作品になってしまっていた印象がある。しかし彼女たちの本質的なミュージックラバーー性、「アーティストとしてのエゴ」がより強く見える『Fishing』は、彼女たちの「ラップを作る」ことに対しての誠実さピュアネスが透けて見えるし、だからこそスキルフルで、重心のしっかりした作品になっているし、そのクオリティは非常に高い。

 しかし、そう重く考えさせない「軽やかさ」もこのアルバムには貫かれており、そのバランス感覚の見事さと真面目さが、chelmicoが国民的スターになってもおかしくないかも? と思わせる要因にもなるだろう。

 リリックの内容や世界観に触れる紙幅が無くなってしまったが(「Navy Love」などのセンチメンタルさや、「Bye」のドラマティックさもホント素晴らしい!)、もうそんなリスナーも少なくなっていると思うが、もし「chelmicoってなんか可愛い女の子がラップやってるグループでしょ?」程度の認識でいるリスナーこそ、このアルバムを聴いて、その度肝を抜かれていただきたいのである。

(文=高木 “JET” 晋一郎)

■ライブ情報
<追加公演>
9月28日(土)
会場:マイナビBLITZ赤坂 
時間:17:00OPEN/18:00START
チケット一般発売:9月14日(土)〜
info: HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

<HP先行>
受付期間:8月21日(水)21:00〜8月25日(日)23:59
受付はこちら
※受付券種:1F立見/2F指定

『chelmico Fishing Tour』
9月7日(土) 福岡DRUM Be-1 Open 17:30 / Start 18:00 (info:キョードー西日本 0570-09-2424)
9月14日(土) 宮城・仙台MACANA Open 17:30 / Start 18:00 (info:仙台MACANA 022-262-5454)
9月16日(月・祝) 北海道・札幌SPiCE Open 16:30 / Start 17:00( info:WESS 011-614-9999)
9月20日(金) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO Open 18:15 / Start 19:00 (info:ジェイルハウス 052-936-6041)
9月22日(日) 大阪・梅田CLUB QUATTRO Open 16:15 / Start 17:00 (info:GREENS 06-6882-1224)
9月28日(土) 東京・マイナビBLITZ赤坂 Open 16:00 / Start 17:00 (info:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999)
9月29日(日) 東京・マイナビBLITZ赤坂 Open 16:00 / Start 17:00 (info:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999)

チケット:All Standing  ※東京公演のみ2階指定席あり
¥3,500 (税込)drink別
4歳以上チケット必要

■イベント情報
『Fishing』を対象店舗で購入した方に先着で『The LIVE -MADE BY EDWIN-』入場券&特典引換券をプレゼント

『The LIVE -MADE BY EDWIN-』
日時:8月29日(木)10:00~19:00
※chelmicoのライブ出演は、17:30~
会場:B&C HALL 寺田倉庫 (東京都品川区東品川2-1-3)
※ライブ終了後、chelmico本人から『chelmico特製トートバック』プレゼント

<対象商品>
8月21日発売 chelmico『Fishing』 ¥2,800+税

<対象店舗>
タワーレコード新宿店
タワーレコード渋谷店
タワーレコード池袋店
タワーレコード横浜ビブレ店
タワーレコード川崎店

<イベントに関する問い合わせ>
(株)ワーナーミュージック・ジャパン カスタマー・サービス・センター
問い合わせはこちら(受付時間 10:00-18:00 土日祝日弊社休業日除く)
※会場への問い合わせはお止め下さい。

■リリース情報
2nd Album『Fishing』
2019年8月21日(水)リリース
¥2,800(+税)※初回限定生産分のみ豪華デジパック仕様

chelmicoオフィシャル

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