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クロマニヨンズのライブから伝わる“生きる”ことへの希望ーー全国ツアー東京公演を振り返る

リアルサウンド

19/12/5(木) 18:00

 ザ・クロマニヨンズが11月20日、全国ツアー『ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020』の東京・TSUTAYA O-EAST公演を行った。本ツアーは10月9日発売の13枚目のアルバム『PUNCH』を引っ提げ、全国58公演、来年4月の北海道公演まで約半年にわたって行われる。

甲本ヒロト(Vo)

 開演前からメンバーの名前を呼ぶ声が絶えず飛び交い、会場は待ちきれないといった雰囲気。そんな中、お揃いのピンクのツアーTシャツでメンバーが登場。Tシャツ一枚でこんなにきまるのかと、彼らのオーラに圧倒されたのも束の間、アルバムの1曲目でもある「会ってすぐ全部」から『PUNCH』収録曲を次々に披露した。甲本ヒロト(Vo)のブルースハープを合図に始まった「ケセケセ」では、観客が合いの手を入れるタイミングが完璧で、アルバムを聴き込んでライブに来ていることを感じた。甲本が〈ケセケセ〉〈シネシネ〉と歌いながら、ジェスチャーをして歌う姿も痛快だ。「ビッグチャンス」では甲本がツイストダンスをしながら〈労働後 メシうまい イェイ〉とグッドマークを客席にむける。

小林勝(Ba)

 観客も腕を上げ、会場全体で乾杯しているかのようなハッピーな空気が流れた。「アルバム曲順通りにやらせてもらっています。A面最後の曲は~」と紹介し始まったのは「小麦粉の加工」。繰り返し歌われる〈あっというまだよ〉という歌詞の通り、ベースの音が一歩一歩進んでいく時間のようで、切なくなった。

 続いて、このまま『PUNCH』の曲だけをやると30分くらいで終わってしまうと言い「一生懸命考えた結果、他のアルバムからもやった方が良いという天才的発明により、やらせていただきます」とおちゃらけたように話すと、過去リリースアルバムから楽曲を披露した。その後「あ、忘れるとこでした。こんばんは。ザ・クロマニヨンズです!」と遅ればせながら自己紹介し、これは前座でこの後に本当のクロマニヨンズが出てくるんじゃないかと「不安だったでしょ」と気遣いを見せた。

真島昌利(Gt)

 その後「B面やってこうと思います!」と「クレーンゲーム」へ。甲本が〈やることやるだけ 生活のドアホ〉と頭をかきながら歌う仕草が、思い通りに行かないことを歌うこの曲の雰囲気と合っているように感じた。その後、真島昌利(Gt)がギターをリッケンバッカーに持ちかえたことに対し「(真島は)なに持っても似合うだろ? 時々は俺のことも見ろ?」と茶目っ気たっぷりに話し、会場は笑いに包まれた。続くバラード曲「リリイ」では、甲本は真島のギターにあわせ、無邪気な笑顔で踊り歌う。コーラスの中〈アア ヤヨイ マヂカ リリイ〉と歌いあげる光景がとても美しく、ついさっきまでアップテンポな曲でフロアを揺らしていたこととのギャップもあり、こみ上げるものがあった。甲本も感触が良かったのか「ええかんじです~」と機嫌よくステップを踏む。続くバラード「長い赤信号」では、真島が歌う姿を、甲本が優しく微笑みながら見守る姿が印象的だった。また、2人が肩を組む一幕では会場から歓声が上がっていた。ライブが終盤に差し掛かっていることに触れ、「楽しんで帰ってくださいよ。自分の分け前、全部とってかえれよ!」と声をかけた。

 「生きる」で天井が割れるかと感じるくらいの大合唱が響き出した時には、会場の温度が1、2度上がったような感じがした。〈ずっとここには 時間なんかなかった〉という歌詞からは、甲本が「今この瞬間を生きる」という考えを大切にしているのだろうということが伝わってきた。続く「どん底」では冒頭アカペラで〈どん底だから あがるだけ〉と、「雷雨決行」では〈引き返す訳にゃ行かないぜ 夢がオレたちを見張ってる〉と歌われ、彼らから生きる希望を思い切りもらった気持ちになった。「最高! 今日は最高!」と甲本が叫び、「ギリギリガガンガン」へ。甲本はステージの端までせりだし、下手から上手まで最前列の観客にハイタッチ。最後には笑顔でステージの真ん中に座りこんでいた。最後にアルバム最後の曲でもある「ロケッティア」を披露し、甲本はシェーのポーズをしながら、メンバーらはステージを後にした。

 鳴り止まない手拍子に応え、上半身裸になったメンバーが再登場。「あと何曲か、楽しんでやります」と、アンコールで「突撃ロック」などを披露。「楽しかった! またやらせてください! ロックンロール!」と言い残し、ステージを去った。

桐田勝治(Dr)

 ロックンローラーのイメージと言えば、派手で酒好きで奔放、といった感じもあるだろうか。けれど、このライブで印象的だったのは、クロマニヨンズのあたたかな包容力だった。甲本はライブの間中、とにかく客席をみていた。右から左、下から上、観客一人一人の表情を見て、時に微笑んだりする。手を目に当て双眼鏡のようにしたり、二階席を指さしたり、後ろの人にも視線を送る。満面の笑みで、人差し指を立てて甲本が歌うと全てを肯定してくれている気がする。このバンドがあるから、生きられる。彼らは「生きる」力をくれる。クロマニヨンズのパンクロックを聴くと涙が止まらなくなる、希有なバンドだと思う。是非この先のツアーを体感してみてほしい。

(ライブ写真=柴田恵理)

■深海アオミ
現役医学生・ライター。文系学部卒。一般企業勤務後、医学部医学科に入学。勉強の傍ら、医学からエンタメまで、幅広く執筆中。音楽・ドラマ・お笑いが日々の癒し。医療で身体を、エンタメで心を癒すお手伝いがしたい。Twitter

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