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NEWS、アルバム『WORLDISTA』は“楽しい”が伝播する CDだからこそできる数々の仕掛け

リアルサウンド

19/2/22(金) 6:00

 NEWSの最新アルバム『WORLDISTA』が、とにかく楽しい。いいクリエイティブとは、きっと作り手の“楽しい”が伝播するものなのだろう。NEWSのメンバーはもちろん、作詞、作曲、編曲、撮影、デザイン……と、関わったすべての人たちが、このアルバムを愛していることが、ひしひしと伝わってくる。そして、その愛情は手にした人をワクワクさせる。

(関連:NEWSのライブはなぜ心を熱くするのか ドキュメンタリー『RIDE ON TIME』から感じたこと

 2017年に『NEVERLAND』、2018年に『EPCOTIA』、そして2019年『WORLDISTA』と、NEWSの頭文字にちなんだキーワードをもとに、コンセプチュアルなアルバムをリリースしてきた彼ら。こだわり抜いた設定、そしてライブ演出に至るまでの作り込み……「N・E・W・S……起・承・転・結でいえば、“転”ですから」と初回盤の特典映像内で増田貴久が話しているように、3作目となる本作はこれまで以上に、いい意味でクセが強い。それは、受け止めてくれる人たちへの信頼があればこその尖りだ。

 『WORLDISTA』のテーマは、バーチャル体験。最新テクノロジーを駆使して開発したアイギアをセットすれば、目の前に仮想空間が広がり、好きな人と、好きな時間を、好きなだけ過ごすことができる。だが、アルバムにアイギアが入っている気配はない。手元にあるのは、赤と青のフィルムで作られた3Dメガネ。むしろ懐かしいとすら感じる超アナログな“アイギア“を通して、歌詞が書かれたブックレットをのぞくと、ある文字が浮き出てくる……。

#想像することがみちしるべ

 これはデータ配信ではできない、CDだからこそできる仕掛け。最新デジタルをテーマに掲げながら、思いきりアナログで楽しむという遊び心。世の中は、デジタル化によってどんどん便利になった。だが、その一方でアナログの不便さを楽しむ人たちも生まれる。便利もほしいけど、そこに自分が介在する手応えを求めてしまう。“めんどくさい、だからこそ愛しい”それは、人間味あふれるNEWSを愛する感覚に近い。

 『WORLDISTA』はディスクをプレーヤーにセットし、再生ボタンを押してもすぐには歌は流れない。メンバーでもない人の声で、「ログインシークエンス-INTER-」がアナウンスされる。おもむろに読み上げられるアクセスコードは「KKMT0915」。

 きっと、これまでのNEWSチームの作り込みを知っているファンなら、このコードにも意味が込められているのだろうと反応したはずだ。「もちろん、K(小山慶一郎)、K(加藤シゲアキ)、M(増田貴久)、T(手越祐也)、0915(デビュー記念日)でしょう!」と、口元が緩んだに違いない。だが、しかしこれは序の口。クイズでいえば誰もが正解する【問1】みたいなものだ。こんなファンが答え合わせをしたくなる“仕掛け”が、この先わんさかと出てくるのだ。

 「WORLDISTAの世界へ、ようこそ」というログイン完了の知らせとともに、聞こえてくるのはNEWSと長年名曲を生み出してきたヒロイズムによる「WORLDISTA」だ。サビの〈イマジナ ギミヤラ/THIS IS THE WORLDISTA〉は、これぞヒロイズムと拍手を贈りたくなる語感の良さ。

 さらに、ブックレットの歌詞を確認すると〈空想ノ世界/想像スルタビ〉と記載されている。「想像する旅」なのか、「想像する度」なのか。それをまた想像させてくれるのだ。そして、歌詞から視線をズームアウトさせると、ただの模様に見えた赤と青のラインが、サビの歌詞〈イマジナ ギミヤラ〉=「IMAGINA GIVE ME OUR LOVE」となっていたことが認識できる。

 NEWSの楽曲は、ヒロイズムを筆頭に長年共に歩んできたクリエイターたちによる作品が多い。きっとそれらに触れてきたファンなら、今回のアルバムを聞き進めるうちに「◯◯さんっぽい」と反応する場面もあったのではないか。きっと、それもNEWSとファンへの信頼関係があるからこそ、安心してクリエイターたちが個性を出すことができたのだと思う。「WORLDISTA」というコンセプトに向かって、それぞれがのびのびと才能を開花させ、集結させていく作業。考えるだけで、すごく大変で、めちゃくちゃ楽しいに決まっている。

 「オリエンテーション-INTER-」のあと、案内されたのは“スペースレース”。エンジン音と共に疾走感あふれる「DEAD END」が聞こえてくる流れは、舞台の場面転換のように鮮やか。そして、スリルがあるから燃えると歌う「CASINO DRIVE」を聞いているうちに、“便利で安全を求めながら、それだけじゃつまらないと思う、私たちは本当に矛盾した生き物だ”と改めて考えさせられたり、エレクトリックなテイストでNEWSの歌声も音素材として美しく調理した「インビジブル ダンジョン」では、“見えない敵とはデジタル社会の匿名性だけではなく、それに惑わされてしまう他ならぬ自分自身の弱さなのでは”と、ハッとさせられたりする。

 音楽を聞いているだけ。それだけのはずなのに、気づけば様々な情景を思い浮かべているのだ。バーチャルなレース場だったり、都会の高速道路だったり、SNSを検索している誰かだったり、NEWSがたどってきた歩みだったり……。それこそが『WORLDISTA』体験なのだろう。

 「第一チェックポイント-INTER-」では、大勢の観客が沸き立つスタジアムに誘われ「SPIRIT」「BLUE」とアンセムソングが響き渡る。そして、意識は広大なピッチから、再び個へと向かい孤高の闘志を歌う「FIGHTERS.COM」へ。気づけば、“この曲がコンサートで披露されるときには……”と、またもや新たな風景が、閉じたまぶたの奥に広がっていく。

 すると今度は、ネオエレクトロニックワンダーステイト社(いわずもがな頭文字はNEWS)による「発表会-INTER-」の様子が聞こえてくる。イノベーションを起こす画期的なプロダクトを前に胸を弾ませる、あの感覚が蘇る。そこに、懐かしのゲーム音+ラブソングという「Digital Love」が。これも、また1つの革新だ。

 そして、加藤シゲアキがラジオでも紹介したKacoによる「リボン」では、〈まだなにひとつ なにひとつ リボンかけて かせてない〉という歌詞に、どんなに成長しても返しきれない愛に思いを馳せる。見えてくるのは、NEWSとファンでもあり、家族でもあり。友人や恩師、そして恋した誰か。それは自由にイメージしていいのだと思う。想像こそがみちしるべ、なのだから。

 ここまで多くの仕掛けを楽しませてもらったが、「クイズ-INTER-」では大きなモヤモヤが残る。加藤が「NEWS 6枚目のアルバム名は?」との問いに、『White』ではなく7枚目の『QUARTETTO』と答えて、不正解になっているのだ。熱量を示す「バワリー」という言葉や、4人体制で始動した『チャンカパーナ』の発売日にちなんだ数字など、すべてに意味をもたせるNEWSチームが何も考えていないとは思えない。“きっと何か……”と深読みしたくなる。

 思い返せば「ログインシークエンス-INTER-」で、これは「ベータプログラム」だと言っていた。そして、公式HPに記載されていたのは「バージョン10の発売日」という言葉。そして「発表会-INTER-」のアナウンスで「バージョン1のゴーグルでパンフレットを見てください。大事なメッセージが浮き出てくるはずです」と言っていた。私たちが手にしたこの3Dメガネつきの『WORLDISTA』はバージョン1なのだろうか? とすれば、バージョン10とは?

 そして、メイキング映像で映り込むMVセットの壁にかかっていたカレンダーは、1月22日(水)となっていたが、2019年1月22日は火曜日だったはず。ということは、これは2020年の1月22日(水)に何かがある? ……と、考えれば考えるほど聞き返したくなるし、見返したくなる『WORLDISTA』。嗚呼、なんてめんどくさくて、愛しい作品なのだろう。このアルバムを引っさげたライブも、そして“S”のテーマで作られる次作アルバムも期待せずにはいられないではないか。(文=佐藤結衣)

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