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笠松将、“悪役”ポジションで頭角を現す 『3年A組』『デイアンドナイト』で発揮する特異な存在感

リアルサウンド

19/2/3(日) 10:00

 山田孝之がプロデューサーを務めた『デイアンドナイト』で、大きな存在感を示している者がいる。高身長でがっしりとした恵まれた躯体と、切れ長の眼が印象的な俳優・笠松将である。作品ごとに高い柔軟性をみせ、このところ急激に頭角を現しつつある存在だ。

参考:『デイアンドナイト』清原果耶が語る、プロデューサー山田孝之の姿と普段とは違った演技アプローチ

 現在26歳の笠松は、2013年頃から俳優活動をスタート。まだデビューから5年ほどの若手俳優の一人だが、映画、ドラマ、CM、ミュージックビデオと、メディアやジャンル、作品規模を問わず、その活動は多岐に渡り、出演作数もかなりのものである。最近では、放送中の『3年A組 -今から皆さんは、人質です- 』(日本テレビ系)第4話で、物語のキーとなる半グレ集団・ベルムズの一人として登場し、その印象が強く残った方も多いだろう。これまでにも笠松は、いわゆる“悪役”を数多く演じてきた。

 星野源が主演した『連続ドラマ Wプラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~』(2017・WOWOW)で見せた、歯止めの聞かない“凶暴性”のリアル。悪たれどもの大活劇『デメキン』(2017)では、いまや若手俳優の中でも抜きん出た存在である伊藤健太郎と山田裕貴を相手に、半グレ集団のトップを演じ、残虐非道で冷酷無比なキャラクターを血の通ったものに仕上げていた。安全であるはずの客席からスクリーンの中で跳梁する笠松の姿を見上げ、思わず激しい嫌悪感を募らせたものである。それほどまでに彼の演じる“悪役”は、あまりに過剰で過激なキャラクターでありながら、説得感あるリアリティを湛えているのだ。

 そんな笠松が『デイアンドナイト』で演じるのは、夜な夜な裏稼業に精を出す若者といった役どころ。しかし、先に述べてきたような粗暴なキャラクターではなく、やんちゃで無鉄砲ではあるものの、愛嬌たっぷりな“あんちゃん”といった存在だ。思いがけず犯罪の片棒を担ぐことになり、自身の「正義」のため、やがてはその裏稼業の中心ともなっていく主人公・明石幸次(阿部進之介)を、彼はチームに迎え入れる存在でもある。若いゆえの思慮の浅さは感じるものの、なんとも憎めない好人物を、無邪気で快活な笑顔で嬉々として笠松は演じている。物語が大きな展開を迎えざるを得ないときに、彼自身の見せる大きな変貌ぶりもまた、鮮烈な印象として脳裏に焼き付くことだろう。

 しかし今作だけでなく、昨年大きな話題を呼んだ『響 -HIBIKI-』での笠松の姿も思い出していただきたい。彼が演じたのは、主人公・鮎喰響(平手友梨奈)が所属する高校の文芸部の不良・塩崎隆也だ。異端児である響とは物語の冒頭で対立し、まさかの彼が返り討ちに。彼女の異常さと天才性を証明し、観客を作品世界へと誘導するきわめて重要なポジションであった。この作品でも、序盤の荒々しい姿から後半にかけて変化していく様子が見られるのだが、映画化に際しての原作からの改変により、彼のキャラクターの扱われ方が控えめとなっていたのが少々惜しいと感じられた。

 笠松はこれらの規模の作品だけでなく、初主演を務め、国内の映画祭を賑わせた短編映画『ぼくらのさいご』(2015)をはじめとし、自主制作映画にも多数意欲的に参加して表現力を培ってきた印象もある。この作品では男子中学生に扮し、実年齢より大きな開きがあるものの、思春期にある少年の心の機微を繊細に演じ上げていた姿が思い出される。また、小林太郎の『響』や、在日ファンクの『或いは』などのミュージックビデオでは、表情や佇まい、身のこなしだけで楽曲の世界観や物語性を体現。これらは彼の被写体としての魅力だけでなく、表現力の高さの証明だとも取れるだろう。

 自主制作映画や数多くの作品への出演によってキャリアを積み、運命的な作品との出会いによって、一気にスターダムを駆け上がっていく俳優も多い。そのラインには綾野剛や椎名桔平らの名が挙げられるのではないだろうか。

 その特異な存在感で悪役として引く手あまたの笠松だが、じわじわと知名度も獲得していく中、さらなるハマリ役・アタリ役を得て、次なるステージに進んでいく姿に注目したい。(折田侑駿)

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