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ジョン・フルシアンテ、ギタリストとしてバンドに与えた影響とは Red Hot Chili Peppersへの復帰を機に解説

リアルサウンド

19/12/21(土) 8:00

 12月16日(現地時間)、Red Hot Chili Peppersが公式Instagramにて、ジョン・フルシアンテの加入を発表した。ジョンは、同バンドを2009年に脱退した元メンバー。テクニカルかつ多彩なギタープレイから、ジョン・メイヤー、デレク・トラックスと並び「現代の三大ギタリスト」とも呼ばれている。彼がバンドに復帰することを知り、SNSを中心に歓喜するファンの声も多く見られた。同時に、2010年に加入したギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーの脱退も発表に。Red Hot Chili Peppers『I’m With You』『The Getaway』で、重要な役割を果たしていたギタリストだけに、ジョシュの脱退を惜しむ声もあった。そこで今回の発表を受けて、ジョンのギタリストとしての功績や、ジョンとジョシュそれぞれがバンドに与えた影響について、音楽ライター・ノイ村氏に話を聞いた。

(関連:Red Hot Chili Peppers「Californication」MV

「ジョンは、ジミ・ヘンドリックスやフランク・ザッパなどの60年代~70年代のギタープレイにインスピレーションを受けて、現代に継承しているプレイスタイルを見せていました。ただ、ジョン自身はThe DamnedなどのパンクやNirvanaといったオルタナティブにも影響を受けていますし、かつ、Red Hot Chili Peppersはファンクの要素も強いバンドです。ハードロックの伝統的なプレイだけでなく、パンクの勢いやファンクのリズム感などといった幅広い音楽性をも咀嚼した上で、自身のインスピレーションに身を任せたフレーズやギターソロを演奏し、スタジアムを熱狂させていました。また、彼のギタープレイの特徴として「枯れたメロディ」という表現がよく使われています。懐かしいメロディや枯れたような歪みなどをフレーズとして添えていて、それは楽曲にも影響を与えています」

 幅広い音楽性を取り入れたギタープレイでRed Hot Chili Peppersのサウンド作りに貢献していたジョン。しかし、脱退後のソロ活動では電子音楽を追求していたようだ。

「もともと彼がバンドを脱退した理由は、自由な創作環境のなかでインスピレーションを追求したいという考えからでした。そのため脱退後のソロ活動ではギターサウンドはほとんどなく、Aphex TwinやSquarepusherを彷彿とさせるようなテクノやドリルンベースを取り入れた電子音楽を制作していました。彼自身はプログラミングでの音楽制作を通して、リズムの探求などに熱を入れていたようで、ソロでの楽曲は、一曲の中で何度もテンポを変えるようなアプローチが特徴的です。そのような楽曲傾向は、テクノレーベル<Acid Test>からリリースしたTrickfinger名義での『Trickfinger』(2015年)に顕著に現れています。音楽の可能性を広げるような楽曲作りに挑んでいるように感じましたし、このようなアプローチはRed Hot Chili Peppersではできなかったことだったと思います」

 ソロ活動で新たな音楽を追求するジョンの一方で、Red Hot Chili Peppersはギタリストとしてジョシュが加入。ジョンとジョシュは、それぞれバンドにどのような影響を与えていたのだろうか。同氏は以下のように述べた。

「ジョンは1992年に脱退後、1999年に再加入しているのですが、その後リリースされた『Californication』、『By the Way』、『Stadium Arcadium』は、ジョンのギタープレイにフォーカスされていました。例えば、『By the Way』では、全面的に彼のギターが押し出されていましたし、彼の在籍時最後のアルバムである『Stadium Arcadium』は二枚組28曲という大作でしたがほぼ全曲にジョンのギターソロが入っています。さらに、ジョンの加入後はサウンドも変化していて、それまでファンクに寄せていたものが、メロディに趣を置く方向に舵を切りました。それほどにバンドメンバーは、ジョンのギターセンスに信頼を置いていたのだと思います。

 ジョシュは、各パートの良さを引き出すタイプでした。彼は歌も上手で、他の楽器もできるマルチプレイヤーなんです。コーラスワークも非常にいい。そのため「ギターで勝負」というよりは、楽曲の隙間に的確なアレンジを入れて、バンド全体のグルーヴやサウンドスケープを広げていく役割を果たしていました。その集大成となったのが『The Getaway』です。リフやソロなどに重きをおかず、多種多様なアレンジが施されていて、楽曲全体の良さに注力されています。また、ジョシュが加入したことで、バンド自体も楽曲の構築力や空間作りに重きをおいたサウンドメイクを強化していったように思います」

 最後に同氏は、ジョンのRed Hot Chili Peppers復帰についてこのような期待を述べた。

「ジョン自身、ヒット曲を何度も披露したり、同じようなセットリストを繰り返したりといった「過去の再生産」を好まない人なので、ソロ活動で追求した音楽をバンドにどう織り交ぜていくのかが楽しみです。アレンジ面に関して電子音楽的なアプローチを取り入れる可能性もあるかと思いますし、リズム面での新たなアプローチ展開にも期待したいです。また、ジョシュによって新たな魅力が引き出されたバンドに、ジョンが復帰することでさらにスケールの大きなサウンドを聴かせてくれるのではないでしょうか」

 ジョン・フルシアンテとジョシュ・クリングホッファー。異なる魅力を持つギタリストが携わってきたことで、Red Hot Chili Peppersの音楽性はさらに広がりをみせた。両者それぞれが在籍していた作品を聴き比べながら、最新作ではどのようなサウンドを展開するのか心待ちにしたい。(北村奈都樹)

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