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大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん

2つのおせちと、ピンピンしていた友達のお父さん

毎週連載

第108回

21/1/31(日)

前回登場した銀行員の兄は、私のことをとても応援してくれているし、テレビ番組で「家族を取材したい」という企画の際は、「良いよ良いよ。全然やるよ」と協力してくれたりも。単純に「テレビに出たい」というミーハーなところもあるんですが非常に助かっています。だから、兄の仕事関係の人に配るであろう「サイン、5枚書いてくれ」とかは喜んでやるのですが。ただ、全く知らない女性社員の方への結婚お祝い動画を撮らしてくれと言ってくるのはどうかと思うし、さらに「化粧なんてしなくて良いよ」と言い放つノンデリカシーさは、さすがに腹が立ちました。

でも基本的には、家族みんな仲は良いほうかと。毎年お正月は、高齢の母ががんばって煮しめ、おなます、田作を作り、兄が銀行の取引先の割烹みたいなところで豪華おせちを買ってきて。私は私で、東京の高級デパートのおせちを買って実家に届く手配をして。やっぱり田舎の高齢の両親には、東京の高級デパートってうれしいらしく。

ただ、こうなると兄のおせち(3段重)私のおせち(2段重)がバッティング状態に。仕方ないので、大みそかに私のおせちを食べ、正月に兄のおせちを食べるということに。結果、両親も兄嫁も「どっちのおせちも美味しいね」と気を使いつつ、ひたすらおせちを食べ続けるという正月に。あとは、母のお手製のお雑煮(鰹節出汁)を元旦の朝に一度食べたりして。子供の頃はそこまでだったのに、年を重ねると、おせちとかお雑煮とかがとても美味しく感じます。

また、今年のお正月は緊急事態宣言が出る前ではあったけど感染者数が急増した時期だったので、実家へ戻ったものの友達と会うつもりはなかったんです。例年なら同級生10人くらいで大晦日に集まってカウントダウン。その後、神社へ初詣に行くというのがお決まりなんですけど。今年は、みんな静かにそれぞれの家で過ごしたようです。

でも、同級生のひとりの静香ちゃん(通称しっか)から正月早々に連絡が。「佳代子、もしかしてこっちに戻ってる? うちのお父さん、そろそろ死にそうなんで一目会いに来てくれんかな?」と。もちろん、しっかのお父さんのことはよく知っていて、ここ最近は、しっかファミリーの新年会にお邪魔することもあったので驚いてしまい。「え、どっか悪いの?」と聞くと「いや、もう90歳だから」と。そう言われたら気になるので、とりあえず顔を出すことに。

でも、しっかの家へ行ってみると、90歳のお父さんは、まったくもって死にそうもなく。確かに、耳は遠くなっているし歯もほとんどないから、何を喋っているのか分からない部分もあるにはあるけど、普通に酒をガンガン飲んで大きな声で喋りまくっていて非常に元気。私に「飲め飲め」と、1センチも減っていないグラスにビールをガンガン注いでくれて。小一時間ほどお邪魔して帰りましたが、この後、しばらくはハラハラして過ごしました。

もし、私が自覚ないままコロナウイルスに感染していたとして、90歳のお父さんに感染させてしまったらどうしようと。可能性はゼロじゃないですからね。だったら「会いに行くなよ」という話なんだけど、しっかが「死にそう」って言うから。東京に戻ってから2週間ひたすら何も起こらないことを祈っていました。私は特に発熱とかもないし、しっかからも連絡がないので、乗り切ったなという感じです。

今回、私はコロナ禍の中、帰省をしたわけですが難しいですよね。感染が怖いと思う一方で、高齢の両親だったりしっかのお父さんだったりと「会える時に会っておかないと後悔してしまう」相手がいると、対策しながら帰るという選択も仕方ないのではと思ってしまいます。

改めて、一刻も早く感染が収束するか、ワクチン接種が進んでほしいと思いました。



構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

大久保佳代子おおくぼ・かよこ

1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/

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