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『MIU404』は一挙手一投足に宿るスイッチに寄り添う 星野源が抱える“しなかった”ことへの後悔

リアルサウンド

20/8/1(土) 6:00

 あのとき、ああしてれば……私たちが目を背けたくも繰り返し蘇る脳内映像の正体は、いつだって“しなかった”ことへの後悔だ。金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)第6話のタイトルは「リフレイン」。志摩(星野源)が「何度も何度も何度も何度も」心の中で叫び続けてきた過去が解き明かされる。

参考:『MIU404』麻生久美子はワケあり4機捜の“頼れる母親”? 物語に厚みを加える稀有な存在感

 「相棒殺し」そう志摩のことを呼ぶ人がいることを知った伊吹(綾野剛)は、相棒としてその真相を探る。直接、志摩に聞いても“刑事なら自分で調べろ”と一蹴されてしまった伊吹。そんなことでへこたれずに、プライドをくすぐる形でエリート新人の九重(岡田健史)の協力を仰ぎ、臨時のバディが誕生した。

 当時、初動捜査を担当したのは、桔梗(麻生久美子)と陣馬(橋本じゅん)。面白半分で話すことじゃない。余計なことを広めるな。志摩と一緒に傷ついた2人は、頑なに口を閉ざす。それでも伊吹は知りたいと願った。志摩の心を巣食う絶望を。銃口を向けられても死を恐れないほどの重い何かを、相棒として一緒に担ぎたかったのだ。

「俺が、4機捜に来たのがスイッチだとして……玉突きされて入った俺が、404で志摩と組むことんなって、2人で犯人追っかけて、その一個、一個、一個、全部がスイッチで。なんだか人生じゃん? 一個、一個大事にしてぇの。あきらめたくねぇの。志摩と全力で走るために」

 以前、志摩が九重の前で玉を転がしてみせたピタゴラ装置。九重は、志摩がその落ちた玉のようになったのではないかと考えた。状況的に見て、おそらく多くの人が「きっとそうだ」と思い込むはずなのだ。捜査一課のメンバーがそう睨んだように。そして、桔梗も陣馬も深追いしないことで、落ちたのかもしれない志摩をそっと見守ろうと決めていたのだろう。

 だが、伊吹は落ちた玉ではなく、落ちる前の分岐点(スイッチ)に目を向けた。この視点の違いこそが、志摩が感じていた「俺らにないところ」。数の論理に流されることなく、かといって相棒の志摩に肩入れした幻想を抱くわけでもなく。自分自身でファクトチェックをするまで、真実を決めつけないというフラットさ。

 「誰に出会うか、出会わないか」ピタゴラ装置を前に話していた志摩の声がリフレインする。今回、伊吹と行動を共にしたことは、九重にとってもスイッチになった。局長の息子というステータスに全くこびようとしない伊吹。むしろ目的のために積極的に利用していく。そんなしたたかさに触れ、九重の心の鎧が少しずつ脱がされ、気づけば伊吹の置きウエア姿に。

 「大学生みたい」と桔梗に言われて、改めて九重がきっちりしっかりしようとしていたのかに気付かされる。九重は、いつも“局長の息子”として、できる自分でなければならないと武装していたのだろう。カジュアルな装いに身を包めば、年相応の無邪気さがにじみ出る。伊吹と話すことで少しずつ出てしまう方言に、彼の心が裸になっていく。

 そして、たどり着いた志摩の元相棒・香坂(村上虹郎)の死の真相。その事実に触れて、もっとも心を揺さぶられたのは九重だったように見えた。「俺が香坂刑事だったら、志摩さんに言えたかな。自分が使えない奴だって、認めるのは、怖い」。それは、ずっとしっかりしなきゃと気を張ってきた九重の心からこぼれた本音。

 そんな九重を、陣馬は「間違いも失敗も言えるようになれ。バーンと開けっぴろげに! はじめから裸なら何でもできる」と受け止めた。きっとこのやりとりも大きなスイッチになったに違いない。現に飲みには行かないが、「メシなら」と2人の距離が縮まったのだから。

 「スイッチはいくらでもあった。だけど現実の俺は、どれも見過ごした。見ないふりをした」。後悔をしてもしきれない。相棒の死は、不運が重なった事故死だったかもしれない。いや、絶望した自殺かもしれない。それは、自分が追い込んだ他殺と言えるかもしれない……誰かの死を見つめるとき、近くにいた人ほど自分を責めてしまうものだ。

 悔やんでも悔やんでも時間が戻らない残酷な現実に、志摩が刑事を続けていくしかなかったのだろう。「お前が言うな」のブーメランを何度もくらって痛みに耐え、心の中で元・相棒にかけたかった言葉を叫び続ける。その日々が贖罪と感じていたのかもしれない。だが、そんな志摩の心の時計も、伊吹というイレギュラーなスイッチによって、動き始める。

 もう今の志摩は、相棒から「屋上に来い」の電話を無視したりはしない。そこで知ったのは、伊吹が見つけた最期まで刑事であろうとした香坂の姿だった。「お前の相棒が、伊吹みたいなやつだったら、生きて、刑事じゃなくても生きて、やり直せたのにな」と香坂に語りかける志摩は、静かに強く「忘れない」とつぶやく。

 〈どうして どうしてできるだけ やさしくしなかったのだろう 二度と会えなくなるなら〉とは、1988年に松任谷由実がリリースした「リフレインが叫んでる」のフレーズ。今回のタイトルと志摩の気持ちにリンクして、ふいに思い出してしまった。落ちてしまう玉を救えたかどうかはわからない。けれど、できるだけやさしくしていたら、結末が少し変わるスイッチにはなれたかもしれない。

 今、SNSにつぶやいた一言が、通りゆく人に見られた一挙手一投足が、真実を知ろうとして踏み出した一歩が、「その一個、一個、一個、全部がスイッチ」。だから、できるだけやさしく、そして冷静に情報を見つめ、一瞬一瞬を大切に過ごそうではないか。香坂の検体者記録の解剖医欄に「三澄ミコト」の名前があるなんていう、嬉しいサプライズに気づけたほうが人生は楽しいのだから。

(文=佐藤結衣)

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