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西野七瀬&横浜流星のラブストーリーの裏側は!? 『あなたの番です 劇場版』撮影現場レポート

ぴあ

『あなたの番です 劇場版』 (C)2021『あなたの番です 劇場版』製作委員会

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12月10日(金)に公開され、11~12日の国内映画ランキング(全国週末動員ランキング・興行通信社提供)で初登場1位に輝き、初日から14日間の全国累計で動員80.9万人、興収10.9億円を記録する大ヒットとなっている、話題の『あなたの番です 劇場版』。本作の撮影に密着した筆者が、物語のカギを握る役柄を演じた西野七瀬と横浜流星の現場での様子をレポートする。

劇場版の一番の見どころはラブストーリー

先が読めないミステリーとして2019年の連続ドラマ放送時から大きな人気を集め、考察ブームを巻き起こした『あなたの番です』だが、その人気のもうひとつの柱となっていたのがロマンスの側面。スリルとサスペンスのドキドキだけでなく、主人公となる年の差夫婦の手塚菜奈(原田知世)と翔太(田中圭)のイチャイチャにもドキドキしていたというファンも多いはず。

そこからの今回の劇場版に関して「あくまで僕の中での一番の見どころはラブストーリーなんです」と語っていたのは、他ならぬ企画・原案の秋元康。「(脚本の)福原(充則)くんは、こんなにラブストーリーを書ける人なんだ、と。本当にいいラブストーリーになっていて、胸がキュンとするようなセリフもあるので、ぜひそこは注目してほしいなと思います」と述べているが、手塚夫妻はもちろんマンションの住民たち含めてさまざまな恋や愛のカタチが描かれていて、その中でも反響を呼んでいるのが西野七瀬演じる黒島沙和と横浜流星演じる二階堂忍のラブストーリーだ。

黒島は、一見、物憂げでか弱そうな理系の女子大学院生。しかし男たちを惑わす魔性の一面も持ち合わせていて、加えてサイコパスで猟奇的な衝動を心に抱え、過去には人知れず他人の命を奪ってきている。犯した罪と抑えきれない業に葛藤する黒島が出会ったのが、同じキャンパスに通う二階堂。頭脳明晰ながら、コミュニケーション能力に欠けていて、他人の匂いが苦手。しかしなぜか黒島の匂いだけは大丈夫で、二階堂はそれが恋とは分からずに黒島に惹かれ始め、また黒島も二階堂に対して特別な思いを自覚する。

対極でありながら似た者同士でもあるふたり。彼のためにも自分のためにも、すべてを打ち明けるべきなのか。そんな中、黒島は菜奈と翔太のウエディングパーティーでクルーズ船に乗り込むこととなり、二階堂もまた招待客ではないながら黒島を追って乗船する。

西野七瀬のクランクアップはあのシーン

さて、その少し前のまだつき合ったばかりの黒島と二階堂の話。二階堂は黒島が暮らすマンション・キウンクエ蔵前に彼女と訪れるが、エレベーターに乗り込もうとするとそこに住民のシンイー(金澤美穂)とクオン(井阪郁巳)が姿を見せる。「彼氏殿でござんすか?」とおかしな日本語でぶしつけに聞くシンイーに、二階堂はとまどい照れながらも「……はい」。「……彼氏、なんですね」と口にする黒島に、二階堂が焦って「違いました!?」と返すと、黒島は「彼氏ですよ」と笑って二階堂の手を握り、エレベーターにふたりで乗る……。

これはテレビ放送された『劇場版公開記念!「あなたの番です」金曜ロードショー完全新撮SP!!』の“黒島・二階堂編”で描かれた場面だが、実はドラマSP・劇場版を通じて西野の最後の撮影となったのが同シーン。ドラマSPと併せて制作が進められていた劇場版がクランクインしたのは、2020年12月10日。そこから1カ月強で撮影が進められ、2021年1月21日にクランクアップとなったが、同シーンの収録日は前日の1月20日。キウンクエ蔵前のスタジオセットの撮影日で、住民役のキャスト陣の多くが出番を終えていく中、西野もこのシーンをもってゴールを迎えた。

ドラマSPを観ている方はご存じのとおり、同シーンではエレベーターに乗り込むふたりをじっと見ている男がひとり。靴をトーン、トーンと鳴らすその男は、黒島の影の協力者である内山達生(大内田悠平)。大内田も同シーンをもって撮影を終え、まず大内田に佐久間紀佳監督から花束。そしてこのシーンでは出番のなかった田中圭が姿を見せ、田中から西野に花束が贈られた。「ありがとうございました。またこの大好きな現場の撮影に戻って来られて、すごく楽しかったです」と西野。

撮影初日に「いきなり難しいシーンでごめんなさい」

一方で、楽しさもありながら難しさもあったに違いない役どころ。さかのぼれば、クランクインは本編初日と同じく12月10日。その初日のファーストシーンで撮影されたのは、黒島が物理的にも精神的にも追い込まれている中で翔太に呼び止められ、そこで図らずも涙してしまうという場面だ。何しろ現場入りした西野に監督がまず口にしたのは、「いきなり難しいシーンでごめんなさい」というお詫びの言葉。それでも西野は「大丈夫です」と笑顔を見せ、そして撮影に入れば一転して泣き顔へ。

黒島を強引に引っ張っていこうとする翔太に対して、黒島は抵抗しながらもそのまま引きずられるような態勢になってしまうというシーンだが、段取り(動きの確認のリハーサル)では西野の踏ん張る力が思いの外強くて田中が引っ張れず、一同が大笑いする一幕も! しかしそれも熱演の証拠。撮影の合間には共演者の尾野幹葉役の奈緒と無邪気に談笑しながら、本番となるとミステリアスで危うげな表情を見せる。フラットでいながら、繊細にして時に大胆。西野と黒島、もちろんキャラクターは大きく違いながら、人を惹きつけるそんな魅力は共通するところなのかもしれない。

撮影終了の挨拶で、「前の撮影のときとは(コロナ禍で)状況が変わってしまって、いろいろ大変なところもありましたけど、本当、最初から最後まであっという間に楽しく終わりました」とも語っていた西野。その後少しいたずら気な表情で、内緒話をするように口の横に手を当てると、「残り1日……明日、ビールを差し入れしたので頑張ってください(笑)」。スタッフにとってはビールよりも西野のその笑顔がパワーの源になったに違いない。

横浜流星の撮影初日は、原田知世との初共演シーン

そして、二階堂を演じた横浜。横浜も西野と同日の1月20日にオールアップ。「……すいません、言葉が見つかりません……」と沈痛な表情で語っていた横浜だったが、これはSPドラマのフェイクドキュメンタリー内の言葉で横浜の最後の撮影のセリフ。このショットをもって、横浜もすべての出番を終えた。

横浜のアップに際しても田中が姿を見せ、花束とハグ。挨拶を求められた横浜は「またこのチームで二階堂を演じることができて、本当に幸せでした」と話し始めながらも現場を気遣い、「皆さん明日もまた早いと思うので、僕の挨拶はこれで終わりにします」と手短に締めようとしたところ、一同から「嫌だ~!」の声。さらに田中から「もっと欲しい!」のコールもあって、「そうですね……いや、もう本当に何だろうな(笑)」と笑顔で続け、「映画版ということですごい船で撮影をしたり、グリーンバックの中で撮影をしたりもしたので完成が楽しみです」と語ってみせた。

横浜は本編のクランクイン翌日の12月11日に撮影入り。最初のシーンは原田知世とのふたり芝居で、連続ドラマでは原田演じる菜奈は二階堂の登場以前に殺されてしまっていたため、これが両者の初共演となった。クルーズ船の廊下を歩きながら、心の内に抱えるものを菜奈にぶつける二階堂。一連の事件の犯人として翔太は黒島を怪しむ一方、二階堂は翔太を怪しんでいる。尖っても光ってもいて、深みも重みもあるナイフのような横浜の芝居と声と存在感。それを原田演じる菜奈がそれこそ真綿のように包んでいく。ふたりのやりとりの心地いい緊張感が、スタジオに広がっていた。一方で合間には、スタッフも交え、笑顔で言葉を交わしていた横浜と原田。ふたりの組み合わせも今作の見どころだ。

西野と横浜が担う、劇場版の切なく美しいラブストーリー

西野と同じく演じるキャラクターと本人は大きく違いながら、それでも生真面目でいてチャーミングというのは横浜と二階堂で共通する要素かもしれない。現場ではシーンごと、監督に意見を求めつつ自分の考えを語り、また本番後にも監督と話す姿がしばしば見られた。クルーズ船の撮影はスタジオセットと併せて実際のフェリーを借りてのロケも行われたが、ある日の撮影で悲鳴が上がる一幕があった。映画さながらに現場でも事件が……ということではもちろんなく、これは撮影終わりに横浜の姿を目にしたフェリーの女性スタッフ陣から思わず漏れてしまったもの! 悲鳴が上がるのも納得で、致し方なし!?

西野と横浜の共演シーンとふたりが織りなすドラマに関してはぜひ映画館で確かめてほしいが、ピュアさと一方でのセクシーさ、切なさと美しさに溢れていて、まさにラブストーリーとしての“あな番”が十二分に堪能できる。秋元の言葉に頷くばかりだ。黒島と二階堂のシーンでは、それぞれ相手を気遣いながら、真摯に芝居を作り上げていた西野と横浜。菜奈=原田と翔太=田中のラブストーリーと併せて、ふたりの演技と物語も注目だ。

取材・文:渡辺水央

『あなたの番です 劇場版』
公開中
(C)2021『あなたの番です 劇場版』製作委員会

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