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大森靖子も参加のZOCが示す、新たなアイドル像 活動1周年でZepp Tokyo公演実現するグループ力

リアルサウンド

19/9/9(月) 7:00

 大森靖子が共犯者(プロデューサー兼メンバー兼同志)として参加するアイドルグループ・ZOC。始動1年目にしてCDデビュー、9月9日には活動1周年を記念した初のワンマンライブ『We are ZOC』をZepp Tokyoにて開催するなど、今最も勢いに乗るグループの一つだ。アイドルに限らず、ライブ活動をするグループの多くは、小さなライブハウスや地下のイベントスペース、野外でのフリーライブなどのステージを重ねてステップアップしていく。ももいろクローバーZやでんぱ組.incなどのグループも下積み時代にはそのような活動を行っており、始動1年目で2000キャパ超えに挑むことは異例といえる。では、なぜZOCはそれを可能にしたのだろうか。

(関連:ZOCの信念を貫き通す眩しさ “家族”のように集った6人の特別な関係性

 ZOCのメンバーは、藍染カレン、戦慄かなの、香椎かてぃ、西井万理那、兎凪さやかの5人に大森靖子を加えた6人。冒頭にも書いた通り「大森靖子プロデュース」ではなく、大森自身も“共犯者”としてアイドル活動に不定期で参加している。ZOCというグループ名は「Zone of Control」(支配領域)の略語と、大森が活動の軸として重きを置く「Zone Out of Control」(孤独を孤立させない)の2つの意味を重ね合わせたことに由来。”孤立しない崇高な孤独が共生する場所”として定義している。メンバーの孤独を孤立させないという大森の意志が、グループ名からも伝わってくるように、ZOCは社会に馴染めず、教室から逃げ出し、自分の世界に閉じこもり、いわゆる綺麗な道を歩んでこなかった、どこかに闇を抱えるメンバーたちの居場所となっているのだ。

 学生時代、ひきこもりから脱出するために応募したオーディション『ミスiD2018』で大郷剛賞を受賞。ダンスや歌を得意としており、ZOCのパフォーマンス担当と言っても過言ではない藍染カレン。複雑な家庭環境・いじめ・非行・少年院帰りという異色の経歴の持ち主。自身の経験を活かしてNPO法人を運営し、講演活動を行うなど社会派な一面も見せ、更生中に夢見たアイドルの夢を叶えた“ファビュラス”担当・戦慄かなの。『ミスiD2017』で大森靖子賞を受賞。ヤンキー風な容姿からも垣間見れるやんちゃなキャラクターで、マキシマム ザ ホルモン2号店メンバーオーディションに参加するなど話題となった香椎かてぃ。容姿に対するコンプレックスや、女の子の面倒臭い部分を包み隠さずさらけ出し、コンプレックスの全てを“カワイイ”に変え突き進む、共感力の天才・兎凪さやか。現在断食中(活動休止中)の生ハムと焼うどんの元メンバーでアイドルとしての栄光と挫折を経験。天真爛漫なキャラクターで、MCなどの役回りもこなせる仕事人、マルチな才能を見せる西井万理那。様々な生い立ちを持ち合わせたメンバーそれぞれが、テレビ出演、イベント、グラビアへの挑戦、アパレルブランドの展開など個人の強みを活かした活動も積極的に行っている。

 一人ひとりの個性の強さが、ZOCというアイドルグループとしての相乗効果を生んでいるところも彼女たちの特徴だ。ビジュアル面で言うと、彼女らの衣装はミスiDの選考委員も務める東佳苗のブランド・縷縷夢兎(るるむう)が監修。それぞれのキャラクターに合わせた“使い魔”(モチーフ)があり、着こなしやヘアメイクからも圧倒的な個性と“カワイイ”を感じることができる。

 こだわりの詰まった衣装を身に纏い撮影されたメジャーデビューシングル曲「family name」のMVでは、力強くダイナミックに踊りきる姿が印象的だ。さらに、冒頭、薄暗い部屋で携帯を見つめる香椎かてぃが、机をひっくり返し部屋を飛び出すシーンは、解放や始まりを感じさせるエモーショナルなシーンになっている。作詞作曲は大森靖子が担当。歌詞は、彼女たちの生い立ちや、自分らしさに寄り添ったものになっている。〈family name 同じ呪いで だからって光を諦めないよ〉〈生き抜いたその先をみてくれ 私と この世の果てまで〉〈正論も正義も全部邪魔なだけ〉と、アイドル道を切り拓いていくことへの決意や、〈かわいそう抜きでもかわいいし 私をぎゅってしないなんておかしい〉“カワイイ”への執念、ありのままの自分を愛することの意義、そして〈クッソ生きてやる〉に彼女たちの積年の想いが集約されている。想いの丈を込めた〈クッソ生きてやる〉の絶唱は、心を思わず動かされるし、彼女たちだからこそ歌うことのできる切実なメッセージは、ますます今後のZOCの強みとなっていくに違いない。

 従来のアイドルでは考えられなかったマイナス要素を武器に変えたメンバーの強い個性。アイドルの固定概念を壊しながら突き進んでいく、圧倒的な求心力。さらにはメンバーだけでなく、同じような悩みを持ったリスナーの“「孤独を孤立させない」場所”となり得たこと。それらの要素が合わさったことで彼女たちの人気は加速し、活動1周年でZepp Tokyoワンマンライブを行うまでに至ったのだ。

 そして1周年の今日、ZOCは日本屈指のライブハウス・Zepp Tokyoの舞台に立つ。結成からの1年、小規模な特典会やチェキ会を通して目に見える形でファンと交流し、リリースイベント、『ビバラポップ!』や『TOKYO IDOL FESTIVAL』といったフェスへの出演など、ライブ活動も積極的に行ってきた。少し前の彼女たちには、想像もつかないようなことが日々起きてきた中で、その変化に敏感に反応しながらも、着実に歩みを進めている。その過程すら美しく見えるのは、立派な彼女たちの魅力だろう。Zepp Tokyo公演が、ミクロな感情を起爆剤に変え、ZOCの、そして一人ひとりの生き様が投影されたステージになることを期待している。ZOCのスタートラインはここからだ。(石見優里佳)

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