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波瑠×松下洸平は“答え”を導き出せるのか 『#リモラブ』が描く“家族”になることの難しさ

リアルサウンド

20/12/23(水) 6:00

「問題はその先だ。心と心が繋がっているか。それは、お互いをよく知るってこと。とても簡単で、とても難しいこと。面倒なことでもある」

 『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ)第7話で江口のりこ演じる富近が言った言葉がここに来てグサグサと胸に刺さってきている。それぞれイチャコラしながら順調にいい方向に進んでいるように見えていた、優しい人たちの恋と友情が、ここにきて波乱の展開を迎えている。

 美々(波瑠)も青林(松下洸平)も、五文字(間宮祥太朗)も、「普通の恋は邪道」と言っている私たちは、たぶん皆不器用だ。バブリーな花束やネックレスを贈り、「今日泊っていきなよ」とスマートに誘える「昭和の男」及川光博演じる朝鳴と、富近のカップルが燦然と輝いて見えるように。SNSはじめ様々な便利な手段に囲まれて生きる私たちは、なんでもそれらに依存してしまいがちで、いろんな顔を使い分け、小器用に人と関係性を築くことができたとして、誰か一人と深く関わろうとしたところで躓く。

 美々と青林は、SNS上で「草モチ」と「檸檬」として知り合って、現実世界でも互いの心の中から離れない、毎日「好きだったな」と思い返す存在になったのに、これ以上何がいるのだろう。第9話では、「濃厚接触」を期待してもキスにさえ至らず、互いに結婚を意識しているにも関わらず美々の期待が異常に高まるだけでことごとくすれ違う、ままならない2人が描かれた。

 なぜ、彼らは前に進めないのか。彼らは、まず互いを心の底から分かり合いたいからだ。心と心を100%分かり合った上で濃厚接触したいし、結婚したい。美々は、マスクも「草モチ」も、「産業医としての大桜美々」も「頑張り過ぎてしまう大桜美々」も取っ払って、ありのままの「生身の自分」をそのまま受け止めて、抱きしめてほしいのだろう。

 これまでは、SNS上の「草モチと檸檬」としての会話か、「美々と青林」としてのリアルな会話かという段階だった。ようやくリアルな会話で愛を育むようになった2人は、さらに「その先」である「心と心」の会話をしようと試みる。

 第9話において、美々は「こんな風に喋ってても、心の中では違うことを考えてたりするでしょ」と言う。その「青林には全く聞こえていない、でも視聴者はずっと聞いてきた、美々の毒あり、無邪気あり、時々とんでもなく勘違いばっかりしているお茶目な心の声」は、SNS上の会話や、リアルな会話以上に、ドラマ全体を形作っていたものだった。その彼女の本質ともいうべき「声」を、まだ当の青林は知らない。

 だから、ストレスによる円形脱毛症問題もあり、美々は「心の声」を外に解放しようとする。でも、いざ外に出してみると、予想とは違う答えが返ってきたりして、美々はちょっと変な顔をする。期待と現実があまりにも異なり、プロポーズされるのだと浮かれていた美々と、嫉妬にかられて黙り込んでいただけだった青林という、尋常じゃなく離れた心の距離に気づき愕然とする。

 今までSNSを通して、当初は素性も知らない者同士「心と心の会話」他愛のない会話をして互いを深く理解し、心の中に存在すると思うほど近くに、相手を感じていた彼らは、それがまやかし、富近が言うところの「浅瀬でパシャパシャやって泳いだ気になっているだけ」に過ぎなかったことを本当の意味で知ったのだった。

 しかも、その美々の「過度な期待」の原因となったのが、青林のことを知りたいばかりに、SNSの先にいた「檸檬2」こと五文字に相談するという「手軽な手段」に飛びついたことにあり、青林が、そのやり取りを知ってしまったことで嫉妬に駆られ、プロポーズを取りやめるに至ったというところがまた、絶妙である。

 ここにきて恋のライバルとして再浮上した五文字。美々に片思いし続け、それでも大好きな友人、青林とうまくいってほしいと心から願っている、社内イチの癒し系男子。実は自分と同じでストレス耐性がない美々のことを誰よりも理解し気遣っている。

 彼が特に最強に強烈だったのは、第8話における、五文字が逆に「マスクをする」ことで美々との距離を物理的にも心理的にも狭めてしまう(ソーシャルディスタンスが保てなくなってしまう)から、彼女のことを心配する気持ちを抑えられない自分は「マスクをしないほうがいい」と美々に投げかける場面だった。

 ある意味、彼らにとっての「マスク」と、SNS上で彼らがやり取りする時に使う「草モチ」「檸檬」「檸檬2」という仮の名前は似ている。仮面なのである。マスクやSNS上の名前によって、パーソナルスペースが守られるから、素性を隠せるから、彼らは安心して相手に近づける。ちょっと大胆に。ちょっと気を緩めて。だから、SNSでのやり取りを極力やめて、本当の意味で分かり合おうと努力する美々と青林の心の距離はどんどん遠のいていっているのに、五文字は、「檸檬2」というマスクをすることによって、「草モチ」美々との心の距離をグッと狭めてしまったために、美々にとって、五文字が青林より気楽でいられる存在になってしまいかねないのである。

 なんだかいろいろと頭でっかちな若者たちの恋を「やれやれ」という目線で見ている大人カップル、朝鳴・富近にも、出世という夢と、息子と過ごす時間どっちをとるか問題を乗り越えたと思ったら、「新しいお母さん」問題が浮上するなど、ぶつかる壁はいろいろある。順風満帆そうな八木原(高橋優斗)・栞(福地桃子)も、結婚を前に、八木原と、栞の父(西堀亮)それぞれの夢の両立に悩んでいる。「普通の恋は邪道」とは言うけれど、意外とどの世代も「恋」と名の付くものは何かしら大変なのだ。特に「家族」になろうとすると。

 じゃあ、どうするの?教えて、富近先生!と全てすがりたいところだが、最終回、彼らがこの難解な問題の答えを自分の力で出してくれるのを待とう。

※高橋優斗の「高」ははしごだかが正式表記。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜23:00放送
出演:波瑠、松下洸平、間宮祥太朗、川栄李奈、高橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、福地桃子、渡辺大、江口のりこ、及川光博
脚本:水橋文美江
演出:中島悟、丸谷俊平
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/remolove/
公式Twitter:@remolove_NTV
公式Instagram:@remolove_NTV

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