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『なつぞら』“強気な”マコさんがヒロインの成長を後押し 貫地谷しほり、演技と声で発揮する安定感

リアルサウンド

19/9/10(火) 6:00

 みんなの頼れる姉御・貫地谷しほりが帰ってきた! これはもちろん、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)にてのことだ。彼女が演じるのは、ヒロイン・なつ(広瀬すず)のアニメーターの先輩であるが、貫地谷もまた朝ドラのヒロイン経験者ということもあって、“帰ってきた”というのは二重の意味を持っている。

【写真】貫地谷しほりの『アイネクライネナハトムジーク』出演シーン

 本作で貫地谷が演じているのは大沢麻子という、なつの務める東洋動画スタジオの元先輩。スタジオでは「マコ」の愛称で親しまれ、高いプロ意識と歯に衣着せぬ物言いで、劇中で描かれている創成期にあった日本のアニメショーン界の一翼を担い、盛り上げてきた存在なのだ。結婚を機にスタジオを退社しイタリアへと渡った彼女だったが、現在は帰国。アニメーション制作会社「マコ プロダクション」を立ち上げ、後輩のなつたちに、今また大きな影響を与えている。結婚と渡伊によって物語から退場し、一時的に出演回がなかったわけだが、再登場し、残り1カ月を切った本作の盛り上げ役を、またも大いに買って出ているところなのである。

 先述したように、マコさんは非常に頼れる先輩だ。登場したばかりの頃はなつの存在を軽視していた彼女だが、次第にその才能を認めるようになっていった。マコさん自身はスタジオ入社直後からみんなの信頼を勝ち得た人で、なつは彼女との衝突を繰り返しながら大きく成長してきたのだ。劇中で描かれている以上に、なつは細かなところで影響を受けてきたに違いない。サバサバとした人物に思えるが、鋭く俯瞰的な観察眼で、日本アニメーション界の舵切りを行ってきたのだ。

 ところで、この手の“強気”なキャラクターといえば本作では、なつの故郷・十勝の姉妹である夕見子(福地桃子)がいる。彼女は、明確な“悪役”の存在しない『なつぞら』において、なつとの対立関係を作り上げていたポジションであり、夕見子が不在となってから(なつが上京してから)、強気なマコさんの役どころには大いに興味を惹かれるものがあった。開拓者としてなつが奮闘する姿に対し、誰もが優しく味方となるだけでは正直なところ面白味に欠ける。優しい“あの子”と対立する者があり、それがやがて互いに認め合い、“対立関係”から“共闘関係”に転換していくところにこそドラマがあるのだ。

 マコさんの『なつぞら』復帰、さらにはなつが東洋動画から“マコプロ”へ移ったことで、彼女の出番はとうぜん多くなる。マコさんが登場するたびに物語展開は引き締まり、ぐっと温度が上がるその安定感が強い魅力だ。しかしそれは物語展開やキャラクターとしてだけでなく、演じる貫地谷しほりがいち俳優として、やはり見ていて安心する存在だからというのも大きいだろう。

 現在33歳の貫地谷だが、10代の頃より俳優活動をスタートさせ、『スウィングガールズ』(2004)などの大ヒット作にキャリア初期から出演。これまでに膨大な数の作品に出演し、経験を積み重ねてきた。そして冒頭で述べたように、貫地谷が朝ドラヒロインを務めた『ちりとてちん』(2007-2008/NHK総合)は彼女の初主演作であり、また同時に、その才能を世に知らしめた出世作にして代表作でもある。同作で“女流落語家”という役どころに挑んだ事実が物語るように、彼女の発語は美しい。

 それを証明するかのように、貫地谷は映画・ドラマ・舞台だけでなく、透き通り、力のある声を武器に、これまた多くの作品でナレーターも務めている。近作だと『集団左遷!!』(2019/TBS系)での、物語を声で牽引していったことが思い起こされるだろう。彼女が『なつぞら』に与える安定感は、この“声の力”にも秘められているのだろう。

 そして間もなく、出演した映画『アイネクライネナハトムジーク』も公開される。恋愛群像劇である同作では、数いる恋人たちのうちの一人を好演。自身の“恋心”を自覚する瞬間の貫地谷の表情に注目して欲しい。『なつぞら』とは全く違う彼女の力を知ることができるはずである。

 広瀬と貫地谷の年齢はちょうど一回り違い、キャリア的にも10年ほど開きがある。なつを導くだけでなく、“朝ドラヒロインの先輩”としての撮影現場での彼女の立ち振舞い方も気になるところだ。本作において少しばかり特異なポジションにあるマコさんを演じる貫地谷しほりは、残りの放送の強固な追い風ともなりそうだ。

(折田侑駿)

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