Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

ムロさんの芝居は完璧! 今こそ観てもらいたい、やさしい気持ちになれる『マイ・ダディ』

月2回連載

第75回

特にハマったのは、“本物”を見せてくれるクリスマスの描写!

前回オマケで紹介した『スーパー戦闘 純烈ジャー』にまさかの反響をいただきましてありがとうございました!(笑)もっとちゃんと紹介すれば良かったかな♡では続編でそうしますね。さて、今回は日本と韓国から1作品ずつお薦めしたいと思います。まずは『マイ・ダディ』。ムロツヨシさんが初主演した感動ドラマです。

優しく誠実でユーモアもたっぷりで、皆から慕われている牧師の一男は、中学生になる娘ひかりとふたり暮らし。8年前に妻に先立たれて、牧師と掛け持ちのガソリンスタンドでのアルバイトに勤しみ、男手ひとつでひかりを育てています。

『マイ・ダディ』

そんなひかりも一男に似て素直ないい子。少々の反抗心があるものの、けっして裕福とは言えないまでも幸せな毎日を送っていた彼らですが、ある日、ひかりが倒れてしまいます。

そのとき、彼女が白血病に侵されていたことが分かると同時に、実は一男の実の子でもなかったことが判明します。肉親をはじめとする血縁者以外で骨髄ドナーを探すのは数百万にひとりという確率になってしまうため、一男は一念発起し、あることを始めます……。

『マイ・ダディ』

ムロツヨシさんが初主演した映画、ということがセールスポイントとして報じられていますが、それだけじゃない。そもそもこれまでムロさんが主演していなかった方がおかしい、と思えるほど、彼の芝居は完璧です。

『マイ・ダディ』

ムロさん本人のやさしさがにじみ出ていて、困った人を見る目はとことんやさしく、ハマり役。それに、父と娘の歯車が嚙み合わないっていうところもリアルでいい。

特に思春期の女の子は、父親に対してなかなかいい感情を持ちにくいものじゃないですか。その関係性が、物語に見事に生かされていますし、後半で登場するキャラクターが見た目で判断しちゃいけないキャラだったという意外性には泣かされると思います。

『マイ・ダディ』

ムロさんやストーリーだけでなく、どこが私にハマったかというと、実はクリスマスの描写。ほんと、大道具さん小道具さん、あっぱれ!という仕事ぶりなんですよ。

日本でクリスマスの描写をすると、キリスト教徒の多い国とは全く違う美術になってしまうことが多いんですが、この作品は一男が牧師という設定だけに、とことん突き詰めて本物のクリスマスを見せてくれます。マジで正しい!と思いましたね。

『マイ・ダディ』

そういった細かなところに感激しつつ、物語は大号泣。秋になるとつい人恋しくなるものですし、思いどおりに人には会えない昨今ですから、こういったやさしい気持ちになれる映画は今こそ観てもらいたいと思います。

主人公のしゃべれない、聞こえないというもどかしさを追体験できる

もうひと作品は『殺人鬼から逃げる夜』。韓国のサスペンススリラーです。

聴覚に障がいを持つギョンミは会社からの帰り道、血を流して倒れている女性を発見。実はそれは、世間を騒がせている連続殺人事犯のやったこと。偶然ながらも事件の現場を目撃してしまったギョンミは、連続殺人犯ドシクの次のターゲットになってしまいます。

『殺人鬼から逃げる夜』

ドシクは、ただただ人を殺したい衝動を抑えられないというサイコな動機で人殺しを続けている男。そんな彼が耳の不自由なギョンミを相手にするのはたやすい……はずなのですが、まるでゲームをしているかのように、ギョンミを追い詰めていくことを楽しむようになります。

『殺人鬼から逃げる夜』

いや~~、これは怖かった! 逃げても逃げても追いかけてくるサイコパスがいるのに、その存在を正確に知らせることができないギョンミの視点が強烈で。映画館を満席にして、騒いでもいい世の中だったとしたら、ぜひとも応援上映をしたいと思ったほど。同じ韓国映画でこの手のサスペンスは傑作『チェイサー』がありますが、あれよりもずっとしつこいんですよ。

『殺人鬼から逃げる夜』

これを観ていて気づいたのは『ファーザー』のような視点。あの作品も、当事者が見えているものを追体験させるという試みをしていましたが、本作もそれ。ギョンミがしゃべれない、聞こえないというもどかしさを追体験できる、という仕組みです。

『殺人鬼から逃げる夜』

目の前に犯人がいるっていうのに、それを周りの人に伝えられないなんてシーンもあって、「そこにいる! はよ!」ってつい言いたくなっちゃう(笑)。また、どこからどう見ても『シャイニング』のオマージュだよね、というシーンが登場しますので、それもお楽しみに。

※次回は10月1日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

(C)2021「マイ・ダディ」製作委員会
(C)2021 peppermint&company & CJ ENM All

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

アプリで読む