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立川直樹のエンタテインメント探偵

京都でのChar『Smoky in the Night』、金沢城公園玉泉院丸庭園の『MYSTIC GARDEN』…良質なエンタメを求めて東奔西走!

毎月連載

第37回

『KANAZAWA ART SHOW ~MYSTIC GARDEN~』

“東奔西走”とはまさにこのことを言うのだろう。レッド・ツェッペリンの『フィジカル・グラフィティ』を聴きながら東北自動車道を爆走して(『カシミール』は絶対的永遠の名曲だ)日光から東京に戻り、渋谷の伝承ホールで川島ケイジのコンサートを観た翌日には、京都国際映画祭の仕事のために京都に向かい、イベントの間には美術館「えき」KYOTOで『西洋近代美術にみる 神話の世界』展を観て、大阪を2度往復、近藤房之助プロジェクトの打合せをして、“Machi Decor JAZZ”のライブも聞いた。

その週末、10月20日の夜は京都東急ホテルでCharの『ROCK★HOUSE Smoky in the Night』。ホテルでのライヴといえばディナーショーという形が通例になっている中で、ホテルの中にROCK CLUBを作ってしまおうというプロジェクトの東京、金沢に続く開催だったが、“アコースティック”と“エレクトリック”の2部構成で、西麻布の名ロック・バー“PB”のFUKU-ChangのDJも入ってのパフォーマンスとビュッフェ形式のフリーなスタイルは、ひとつの潮流になるような予兆も感じさせてくれた。MCも含めてのCharの達者なパフォーマンスはロック芸の極致に達していた。

そして26日には金沢城公園玉泉院丸庭園でのスペシャルパフォーマンス『MYSTIC GARDEN』。歴史のある前田家の庭園の石垣に映像を映し、そこにダンサーのパフォーマンスを絡ませ、音楽が流れるというアート・コラボレーションを周到な準備の上に作り上げたが、キング・クリムゾンの名曲『サーカス』が流れ始まってすぐに外国人も含む沢山の観客から歓声が上がった時は、何とも言えない達成感があった。

でも、それがあるから、エンタテインメントに関連する仕事を続けている人は、切磋琢磨し、物作りが続けられるのだと思う。どんなに忙しくても気になるものを見に行きたいと思うのも、思わぬ出会いや発見があるからだ。

安田章大主演『忘れてもらえないの歌』、ギャラリーXの写真展『CATCH IN THE WIND』

舞台『忘れてもらえないの歌』

東京公演の千秋楽の前日にTBS赤坂ACTシアターで観た『忘れてもらえないの歌』も期待していた通りによく出来ていた舞台だったし、脚本・演出の福原充則と音楽監督の門司肇のコンビは2017年の『俺節』に続いて独自の演劇空間を作り上げていた。

読み応えのあるプログラムに載っている門司肇の言葉を引用すれば「今回の作品は、戦中・戦後を通じて日本に新しく入ってきた音楽(主にJAZZ)に憧れた若者達が、希望と絶望の狭間に揺れながら右往左往する青春群像劇」。『マイ・ブルー・ヘヴン』や『シング・シング・シング』などの往年のJAZZの名曲といい感じで並んでいるオリジナル曲も書き下ろし、生バンドもうまくまとめている門司さんは「福原さんのダイナミックな演出には、いつも驚かされます。大胆な転換や、曲の使い方、歌の入れどころなど、そう来たかーと」とも言っているが、福原演出作品に関わるのは『ぶっせん』『俺節』に続いて3回目になる二村周作の美術セットの使い方も含めて、時空が見事にコントロールされている。

そして絶対に書いておきたいのが主役の安田章大のうまさ。関ジャニ∞のメンバーとして活動しながら、俳優としてコメディからシリアスな作品まで数多く出演、その演技力は高く評価されているが、『俺節』に続いて今回もエンターテイナーとして一級であることを証明していた。『ギター弾きの恋』のショーン・ペンと時おり、重なって見えたのも、うまさ故かも知れない。

『427FOTO』

あとは六本木のフジフイルム スクエアの中のギャラリーXで開催されていた写真展『427FOTO*Sahel Rosa PHOTO Exhibition「CATCH IN THE WIND」』が作品の量は少ないとは言え、見応えがあった。モデルはサヘル・ローズ。撮影地はイラン・イスラム共和国の高地シーラーズ。モスクのステンド・グラスの美しさなどは息をのむような魅力があったし、その世界は完全に時空を超えていた。機会があれば、違う空間でプロデュースしてみたいと思った。

作品紹介

Char’s Special Performance『ROCK★HOUSE Smoky in the Night』

日程:2019年10月20日
会場:京都東急ホテル 宴会場2階「葵の間」
プロデュース:立川直樹
出演:Char(Vocal/Guitar)/古田たかし(Drums)/澤田浩史(Bass)/DJ FUKU-Chang

『KANAZAWA ART SHOW ~MYSTIC GARDEN~』

日程:2019年10月26日、11月2日、3日、9日、16日、23日
時間:18:00~、19:00~、20:00~(所要時間:約15分)
開場:金沢城公園玉泉院丸庭園

舞台『忘れてもらえないの歌』

日程:2019年10⽉15⽇~30⽇
会場:赤坂ACTシアター
脚本・演出:福原充則
出演:安田章大/福士誠治/中村蒼/佐野晶哉/木竜麻生/高月彩良/村上航/大堀こういち/桑原裕子/渡辺哲/銀粉蝶
※11月4日~10日までオリックス劇場(大阪)にて上演

『427FOTO*Sahel Rosa PHOTO Exhibition「CATCH IN THE WIND」』

会期:2019年10月18日~31日
会場:ギャラリーX(富士フイルム 東京ミッドタウン本社1階 フジフイルムスクエア内)

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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