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ましのみが迎えた“変化”の理由 sasakure.UKとのコラボ曲「エスパーとスケルトン」から紐解く

リアルサウンド

19/10/16(水) 11:00

 シンガーソングライター・ましのみが10月14日にリリースする配信シングル曲「エスパーとスケルトン」は、まさに2019年のポップスという手触りがする作品だ。

 エレクトロニカを連想させるかのようなイントロで幕を開けると、まず〈どこまで見透かしているの?〉と歌われる。この冒頭1行のみで、相手に心を読まれてしまう主人公の姿が浮かび上がり、「エスパーとスケルトン」という不思議な曲名の謎が一瞬で解けてしまう。自分より一枚上手な好意を寄せる相手をエスパーに見立て「君エスパーね」「私はスケルトンね」という関係性を歌った楽曲だ。

 サビでは〈迂闊に恋せよ乙女〉と繰り返し歌われる。穏やかながら、そこには確実に高感とカタルシスがある。ましのみのボーカルの中でも低めの音域が多用され、生々しさも感じさせる。ソングライターとしてはもちろん、シンガーとしてのましのみの魅力も感じられる。

 作詞作曲はましのみ、そして編曲を担当しているのはsasakure.UKだ。ボカロP出身のミュージシャンであるsasakure.UKは、2019年に桜エビ~ずに「214」という傑作を書き下ろしたのも記憶に新しい。「214」では、作詞作曲編曲のすべてをsasakure.UKが手がけていた。

 そのsasakure.UKは、「エスパーとスケルトン」ではエレクトロファンクやチップチューンの要素もサウンドに盛り込んでいる。ましのみの楽曲のポップさを最大化し、さらに2019年のポップスに仕上げている。

 今回のコラボレーションについて、sasakure.UKは「音楽家とはこうあるべきだ」とコメントしている。その真意をましのみはこう語る。

「明確にやりたいことがあったので、単純に私がうるさかったんだと思います(笑)。ピアノと声をいかして、隙間感があって、高揚感があるものにしたかったんです。その上で、sasakure.UKさんの意見をいかしつつ、やりとりをたくさんして、いつも以上にこだわって制作しました。メジャーデビューしてからいろいろな楽曲を発表していく中で、スクエアなビートで高い音で歌うと、聴く人によっては曲の内容が入っていかないのかな、ということを感じたこともあって」

 「エスパーとスケルトン」では、ましのみは歌い方だけではなく、歌詞も変化させた。

「いい曲であることはもちろん、何度も聴いてもらうため、口ずさめるものや、キャッチーさは大切にしています。今回からはネクストステージで、歌詞については作り込みすぎないようにしました。聴き手が頑張らなくても聴ける、隙間のある歌詞にしたいなと思ったんです」

 ましのみはピアノを弾きながら歌う。それもコラボレーションの刺激となった。

「今回はグランドピアノと声を中心にしたかったんです。sasakure.UKさんも生ピアノは初めてで。ベースの音色やリバーブ感もいろいろ試してもらって、いろんなことにチャレンジさせてもらいました。極限まで生に近いベースの音を使った打ち込みは、弾き語りだけじゃ表現できないノリにしたかったし、体が動き出すような音楽にしたくて。生音とかエレクトロとか、一つのジャンルや要素にとらわれたくなかったし、自由な部分を制限されることなく魂を届けたかったんです。アートワークもMVも、軸が通っているように、ひとつひとつ精査しながら時間をかけました」

 グラフィックデザイナーのQ-TAが担当した『エスパーとスケルトン』のアートワークは、これまでのジャケットとかなり雰囲気が異なる。これまで「ペットボトル」や「水」がアートワークの前面に押しだされてきたことを考えると、大きな変化だ。アーティスト写真も落ち着いたイメージに。率直に言えば、エキセントリックさがなくなった。

「今までは、サウンドや言葉、ビジュアルに刺激を作れば刺さりやすいかなと思っていたけど、逆に私の音楽を届けられる層が狭まるなって感じたんです。弾き語りでもやってきた本質的な部分を、どうやったら作品で表現できるんだろうということは今回改めて考えましたね」

 2リットルの水のペットボトルを手にそう語るましのみは、やりたいことをやっている中村佳穂のスタイルが好きだと語る。そもそも、デビュー当時からましのみはピアノの弾き語りもCDに収録してきた。

 たとえば、2018年の1stアルバム『ぺっとぼとリテラシー』では、横山裕章(agehasprings)、ヤマモトショウ(元ふぇのたす)、冨田謙(元Small Circle of Friends)といった手練れがアレンジャーに名を連ねるなか、ましのみ自身もアレンジを手がけていた。2019年の2ndアルバム『ぺっとぼとレセプション』でも、やはりましのみも編曲していた。彼女のピアノ弾き語りは、アルバムの中で重要なアクセントだった。

「歌いたいから曲を作るようになったんです。歌詞は、もともと文章を書くのが好きだったので自然と書けるようになりました」

 曲を作るようになった彼女は、当初は音楽仲間もなく弾き語りのスタイルで歌いはじめる。『ぺっとぼとリテラシー』がエレクトロ色が濃かった理由をこう振り返る。

「面白い音、引っかかりのある音が好きで、かっこよすぎるのが苦手なんです。完成されすぎたものも嫌だし、アンバランスなものや歪なものが好き。だからロックではなくエレクトロのアレンジが自分には合っていると思ったんです」

 『ぺっとぼとレセプション』では、歩く人、Guiano、宮田’レフティ’リョウといったボカロP出身のクリエイターの名がアレンジャーとして並ぶようになった。

「これまでのエレクトロのテイストもいかしつつ、生演奏もしつつ、アレンジャーの人に頼るばかりではなくて、根本から作りたくなったんですよね。いろいろと自分のなかでやりたいことを考えるなかで、結果的にボカロPのみなさんが作る音楽が自分のやりたいことに近いなと」

 そこから、やはりボカロP出身のsasakure.UKと組んだのが「エスパーとスケルトン」だ。ましのみの変化は早い。彼女が自身の楽曲を届けたいのは誰だろうか。

「『エスパーとスケルトン』の歌の中で〈乙女〉と歌っているんですけど、それは内在的なもので、くよくよしてる心を〈乙女〉と表現しています。同じような気持ちを持つすべての同世代の人に聴いてほしいです」

 楽曲やサウンドへのましのみの探究はこれからも続くという。

「作ることに関しては、知識や技量がまだまだ足りないと思って、日々勉強や練習をしているんです。いいものをライブやリリースで届けたい。自分であることが最大のオリジナリティだと思っているから、これからも何にも縛られずに音楽を奏でていきたいです」

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

■リリース情報
配信限定シングル「エスパーとスケルトン」
10月14日(月)から配信中
配信はこちら

<「エスパーとスケルトン」リリース記念イベント>
名古屋
10月16日(水)18:40集合/19:00開演 
【入場整理番号配布時間】17:30〜18:30 8Fロビー
【場所】ヤマハミュージック名古屋店 8F ヤマハ名古屋ホール

東京
10月19日(土)17:40集合/18:00開演 
【入場整理番号配布時間】16:30〜17:30 2Fロビー
【場所】ポニーキャニオン3Fイベントスペース
詳しい参加方法はこちら

■ライブ情報
『ましのみワンマンライブ(仮)』
11月15日(金)渋谷 TSUTAYA O-WEST
11月20日(水)大阪アメリカ村BEYOND

開場18:15/開演19:00
¥4,000(ドリンク代別・学生キャッシュバック有)

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ましのみ Official YouTube

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