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BOYSぴあ FUTURE 第5回 奥野壮

奥野壮「バレエを通じて人と競う楽しさも悔しさも知った」

全1回

第1回

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『仮面ライダージオウ』で鮮烈な俳優デビューを果たした奥野壮さん。Huluオリジナルドラマ『悪魔とラブソング』と特撮ドラマ『超速パラヒーロー ガンディーン』が、放送・配信となりました。

11年間続けたクラシックバレエの道に区切りをつけ、芸能界へ。順調にキャリアを積み上げる一方、インタビューでは「焦る気持ちもある」と本音も。たくさんのライバルたちと競い合っていかなければいけない芸能界でひたむきに走り続ける20歳の素顔に迫ります。

今でも飛んで2回転はまわれます!

── 奥野さんは普段からよく自分のことを負けず嫌いとおっしゃっていますよね。

そうですね。負けず嫌いです。

── その負けず嫌いはやっぱり11年間続けたバレエから培われたものなんでしょうか?

完全にバレエですね。この技ができるとかできないとか、人と競うことが楽しかったり悔しかったり、そういう感情を覚えたのはバレエから。物心ついた頃からずっとそういうことを繰り返していたので、人一倍負けん気が強いというのはあるかもしれないです。

── ちなみにバレエで得意な技はなんですか?

トゥール・アン・レールというその場で飛んで、2回転して着地する、男性のバリエーションでよくある技が得意でした。

── さすがに今もうできないですか?

いや、トゥール・アン・レールくらいなら今でもまわれますよ。

── すごい! バレエって一見すると優雅ですけど、身体能力が問われるし、レッスンもハード。しんどくはなかったですか?

バレエは、「1日休んだら他人じゃ気づかない自分自身の違和感を感じて、3日休んだら他人でもわかる違和感になって、1週間休んだら踊れなくなる」とよく言われるんですけど、まさにその通りで。1日体を動かさないだけで、身体の感覚がちょっと違うなってなる世界なんですね。毎日の地道な練習の積み重ねがひとつの大きな技や舞台につながる。それはもうキツかったです。

── バレエをやっていた頃は週何回くらい練習していたんですか?

週6でした。バレエの苦しいところはすぐに結果がわからないところ。ひとつの技ができるようになるまでものすごい時間がかかるので、それはやっぱりしんどかったですよね。先が見えないというか。着実に一歩ずつ進んではいるけど、すぐに結果がほしい人間としては、肉体的なキツさだけなく、そうした精神的なキツさもありました。

その分、技ができるようになったときは何よりうれしかったし。楽しいところもいっぱいありましたけどね。

── 役者業もすぐには結果が出ない世界。バレエで鍛えた精神があるからこそ、焦らずにすむところも?

いや、そこは全然焦る!(笑)。

── 素直(笑)。

仕事が入っていない時は考えちゃいますね、やっぱり。でもそれはバレエをやっているときからずっとそう。そんなに精神的に強くないから、どうしても焦るし、目先の結果に目がいく。最近になってやっとひとつひとつ地道に頑張っていればいいことあるかなって考えられるようになってきました。

一度大きな挫折を経験したから、小さな挫折に耐えられる

── バレエをやっていて一番達成感のあった思い出は?

東京バレエ団のオーディションに受かったことですね。中学3年生のときに、東京バレエ団に通っている子から「オーディションがあるから受けてみる?」って誘われたんですよ。東京バレエ団というのは50年以上の歴史がある大きなカンパニーなので、オーディションとなるとやっぱりそれなりの人数が受けに来るわけで。自分が受かるかどうかなんてまったくわからなかったですけど、そこで合格したときは今までの苦労だったり努力が認められた気がしてうれしかったですね。

── じゃあ、一番悔しかった思い出は?

東京バレエ団に入ったことですね。

── 深いですね…。

やっぱり本気でプロを夢見る子たちが集まるところだったので、レベルが高くて。うまい子たちを見ていると、どれだけ努力してもこの差は埋まらないのかなとか勝手にあきらめてしまったところがあって。そうやって周りとの才能の差に挫折したことが今思うと悔しかったなって。

── ずっと好きで続けてきたバレエを最終的には自分で辞めると決めたんですよね。その決断をするのも難しかっただろうなと思ったのですが。

いや、そのときはもう見たくなかったんですよね。もういいや。どうせできないしって投げやりになっていたところがあって。今考えれば地道に続けていれば、いつかその差を埋められたかもしれないけど、当時の僕にはその差はとても大きなものに見えて。決断したというよりは、もういい、あきらめたって。投げやりというか、これ以上続けていてもしんどいしやりたくないって、どこか意地になっていましたね。

── そうやって一度挫折したことが、役者業を邁進する上で原動力になっている部分はありますか?

役者をやっていても挫折はあって。オーディションでもあの子が受かったんだってわかると、僕よりあの子の方が良かったのかなとか考えちゃうし。そういう小さな挫折はいっぱいあるんですけど、一度大きい挫折を経験しているから、あんまり動じなくなったというのはあるのかもしれない。

確かにオーディションのときのあの子は良かった。けど、僕にも必ずいいところはひとつはあるはずだってポジティブに考えられるようになったりとか。続けられないですからね、毎回毎回挫折していたら。

── 20歳になりましたが、大人になったと感じる部分もありますか?

まだまだ子どもです(笑)。今言ったような小さな挫折にすぐ悔しい想いをしたりするので。でもそういう部分は子どもでもいいのかなって思っています。

── 他に自分の負けず嫌いな性格を形成する上で影響を与えられたものはありますか?

漫画ですね。特に『ONE PIECE』は大きいです。

── 『ONE PIECE』で一番の推しキャラは?

サンジです!

── それはなぜ?

カッコいいから。「女のウソは許すのが男だ」という台詞とか痺れますよね。俺言えねえってなりますもん(笑)。ウソはウソじゃん!って思う。そういう自分にないところを持っているサンジがカッコよすぎて好きです。

飯島さんとはマイペースなところが共通点

── ではここからはそんな奥野さんの最近のお仕事のお話を。6月19日から配信中の『悪魔とラブソング』では、男女問わず慕われるクラスの人気者・神田優介を演じています。

明るくて優しくて、友達も多い、俗に言ういいヤツ。学年に1人はいるようなムードメーカータイプですね。

── そのあたりは、実際の奥野さんとは…?

めちゃくちゃ遠いです(笑)。僕は優介みたいにコミュニケーション能力が高いわけではなく。普段はわりと寡黙というか、あんまり喋らないタイプなので。人とポンポン会話を進められる優介のことをいいな〜と思いつつ、自分にはできないな~という目で見ていました。

── 基本的に人見知りなんですね。

そうですね。一旦様子を見ちゃいます。

── そこからどうやって人見知りの壁を突破するんですか。

突破しない場合の方が多いかも(笑)。基本的に向こう待ちになったりはしちゃいますね。同世代の男の子とかだったらわりと話ができることもあるんですけど、相手が女優さんだと向こうがどう思っているかわからないし、めちゃくちゃ気を遣います。

── 今回の現場はどうでした? 同じ「男劇団 青山表参道X」の飯島寛騎くんがいますが。

飯島さんとは一度共演はさせていただいたのですが、一緒になったのは数シーンだけだったので、そこまで交流があったわけではなくて。今回初めてがっつりお芝居をさせてもらって。本当、気のいいお兄ちゃんが1人できたみたいな感じになれました。

── 2人の間でどんなやりとりがあったんですか?

役的にも2人でいることが多くて。控え室で「最近どうなの?」とか「次の仕事決まってるの?」とか向こうから話しかけてくれて、いろいろ近況を話し合ったり。あとはよく一緒に電車で帰っていたんですけど、まったく喋らないことが結構あって。普通そういうときって気を遣って喋らなきゃとかなるじゃないですか。でも飯島さんとだと沈黙が普通というか、それが不快にならないんです。

── いいですね、それ。

たぶん飯島さんも僕もマイペースなんだと思います。特に今回は同級生役というのもあって、先輩だから気を遣わなきゃという感じが一切なく。なんでも気さくに話せたし、この作品を通して飯島さんとの距離はちょっと縮まったのかなと。

── 優介はいいヤツとのことですが、いいヤツ感を出すために心がけたことはありますか?

僕は普段喋らないタイプなので、現場にいても自分から積極的に話しかけにいくことはあんまりないんですけど、今回に関しては撮影中のちょっとした空き時間にも、クラスメイトの子たちの輪に入って、なるべくコミュニケーションをとるようにはしていました。それはやっぱり神田優介という役が輪の中心にいる人物だったからで。お芝居というよりも、撮影外のところで、そういう違いはありましたね。

── カメラが回っていないところでも、役に近い状態でいるというのは昔からのスタイルですか? それとも俳優業をやっていく中で身につけたものですか?

どうなんだろう。今回に関しては意識してというより、自然とやっていたので。でも確かに言われてみると、これまでの作品ではどうやっていたかのか今になって気になりますね(笑)。

マリアみたいな子が実際にいたら…一歩引きます(笑)

── そもそも役づくりの基本ルールみたいなものはありますか?

今回のような原作モノについては、しっかり原作を読んで、神田というキャラクターがどんなキャラクターなのかを自分の中で理解するっていう、当たり前のことなんですけど、それが第一です。その上で、台本には原作と違う部分もあったりするので、原作の優介というキャラクターを残しながらこの台詞を言うにはどんな言い方が正しいかを自分なりに解釈していくことが多いのかな。

── 原作の優介を読んだ上で、役づくりのエッセンスになったものはありますか?

原作にある「ラブリー変換」という言葉がドラマではなくて。優介にとって大事なワードなので言いたかったんですけどね。だから、台詞には出てこないけど、ラブリー変換っぽい雰囲気というか、優介がちゃんとラブリー変換をしているんだと感じられるような言い方は意識していました。

── 主人公のマリアはストレートな言い方で周囲の反感を買うキャラクターですが、実際にマリアみたいな女の子が身近にいたらどう思いますか?

うーん……好きではない(笑)。ストレートに自分の気にしているところを言われたりしたらやっぱり傷ついちゃうかも。ただ、そこが彼女の魅力でもあるので。理解するのに時間はかかるだろうけど、そういう子なんだってわかれば友達になれる感じはしますね。でも、しょっぱなからあの感じだと一歩引きます(笑)。

── そう考えると、本当に優介はいいヤツですよね。

尊敬します。優介には共感するところも多くて。みんなに優しくする一方で、こっちは友達だと思っているのに、周りから見たらうわべに見えたりとか、そういう部分は自分にもあったりするので。

マリアみたいにストレートに気持ちを伝えたいというのもわかるし、優介が言うようにそれを柔らかく変換することが大事っていうのもわかるから、結構どっちにも共感できます。

── マリアを中心とした友情の物語でもあると思うのですが、奥野さんにとって友達というと真っ先に浮かぶのは?

小中と一緒だった地元の友達ですね。地元の友達とはマリアみたいにダメなものは「それはダメじゃない?」ってストレートに言い合える関係で。今でも何人かとは連絡を取り合っています。

── 奥野さんは大阪府出身ですよね。全然、大阪弁が出ないなと。

こっちにいると標準語になっちゃいますね。相手が標準語だと標準語がうつっちゃうというか。

── 「なんでや!」とか言いますか?

めちゃくちゃ言います(笑)。大阪に帰ったらコテコテの大阪弁ですよ。

── 大阪人はボケとツッコミの役割分担が明確ですが、奥野さんは?

僕はツッコミです。ボケは……そんな面白い人間じゃないので(笑)。それこそ大阪弁って「ラブリー変換」という概念が一切ないぐらいズバズバ言うじゃないですか。周りの友達がそんなふうに面白おかしくキツめの言い方で笑いをとりにいく人たちが多かったから、僕はその中でわりと普通のことをスンッと言っているタイプです(笑)。

撮影の1ヶ月前から家では車いすに乗って生活していました

── そして、『超速パラヒーロー ガンディーン』も放送中です。奥野さんにとっては2度目のヒーロー役。もう1度ヒーローをやるのって勇気がいりませんでしたか?

いや、まったく気にしていなかったですね。ヒーローというより、パラスポーツと特撮が混じっちゃうというコンセプトが面白くて。「やりたい!」という気持ちが勝ちました。

── 演じた森宮大志は車いす生活を送る高校生。車いすでの演技をする上でどんな準備をしましたか?

この役はオーディションでいただいたんですけど、オーディションのときは車いすの使い方も全然わからなくて。バックをするにはどっちにタイヤをひねればいいんだっていう状態でした。

で、撮影に入る1ヶ月前くらいに車椅子をお借りして。家の中では車いすで生活していたんですけど、キッチンとか立って使うことを前提につくられているから、車いすからだと目線が全然違うんですね。だから何をするにしても最初は不自由な部分があって。

── 車いすからベッドに移動したりという動きも大変ですよね。

そうした普段車いすで生活している人の仕草については、パラ陸上の選手に細部まで教えていただきました。

── パラ陸上の選手に指導をしてもらえたんですね。

はい。劇中でレースシーンがあるので、1ヶ月前からみっちり練習をさせてもらいました。

── 選手の方々と関わる中で印象に残ったことはありますか?

やっぱりレースってキツくて、僕だと400mレーンを全力で1周するだけでゼーハーするんですよ。で、選手の方に「普段の練習ではこれをあと何周するんですか?」って聞いたら、「50周」だと。たったの400mでこんなにキツいのに、20kmも車いすで走るなんて、この人たち頭おかしいんじゃないかと思いました(笑)。

── (笑)。

しかもそれを当たり前のことのように「普通にやるよ?」って話しているんですよ。これはもうバケモノじみた精神力と身体能力だなと。完全に僕たちからは考えられない世界。トップで戦う選手たちは毎日これだけの努力をしているからこそ、あの速さで走れるんだなって。なんとか必死に食らいつこうとしましたけど、無理でしたね(笑)。

レースの面白さにパラとかパラじゃないとか関係ない

── 体づくりもされたんでしょうか?

パラの選手たちって上半身が戦車みたいなんですね。10何年もやってきた人たちの体にたったの1ヶ月や2ヶ月じゃかなわないというのは重々承知の上で、少しでも近づけるようにパーソナルジムに通って、上半身を集中的に鍛えました。

── 特にキツかったのは?

ベンチプレスですね。もうプルップルになって、乳酸溜まりまくりです(笑)。

最初は40kgが精一杯だったんですけど、撮影の後半では70kgまで上がるようになって。ちょっと喜んでいたら「70kgじゃまだまだだよ」って言われて。どうやら自己評価が甘かったみたいです(笑)。

── パラスポーツにふれてみて、改めて感じた魅力はありますか?

パラスポーツというより、レースというものの魅力を感じました。今回僕がやらせていただいたのはパラ陸上ですが、車いすということ以外は健常者のレースと何も変わらなくて。やっぱり見ていると白熱するし、コンマ数秒の世界で戦う世界。ほんのわずかの差で勝ち負けが決まって、それに沸いたり悔しがったりするところに魅力があるわけで。そこにパラとかパラじゃないとか関係ないなと思ったんですよね。

── わざわざカテゴリー分けする必要がないと。

もちろんパラスポーツだからこそという意味では、上半身の力だけでこんなに早く走れるんだっていう感動はあります。でも、それだけじゃなくて。陸上でも水泳でも、人同士が競っているのって応援したくなるし白熱する。そうしたレースそのものの魅力がパラスポーツにもあるんだということを今回すごく感じました。

── では最後に、これから20代の道を歩んでいきますが、奥野さんの思うなりたいカッコいい男像は?

悲しいときはちゃんと悲しんで、楽しいときはちゃんと楽しんで、自分の感情をちゃんと自分で消化できる人間臭い人になりたいなとは思います。それがカッコいいかはわからないですけどね。そのときそのときで感じるものをちゃんと感じられる人になりたいです。

Q.平均睡眠時間は?

5時間くらい。寝るのはだいたい1時くらい。ついつい夜更かししちゃって、ゲームしたり漫画を読んだりしちゃうんですよね。

Q.朝起きて最初にすることは?

ゲーム。休みの日は、寝る手前までゲームして朝起きて1回ゲームするっていう(笑)。『モンスト』とか対戦型のスマホゲームもやりますし、FPS系のゲームもいろいろやります。

Q.自分の脳内を占めているものを割合で示すと?

お芝居が6割。あとはゲームが2割、漫画が1割、残りの1割が食事と睡眠です(笑)。

Q.スキマ時間にすることは?

ゲーム。ゲームばっかりでごめんなさい(笑)。だいたいゲームか漫画です。

Q.これだけは食べられないというものは?

しいたけ。きのこ類が昔からダメなんです。20歳の大人なので、好き嫌いはカッコ悪いなと思って、出されたものは食べるようにはしていますけど、しいたけはちょっと…。

Q.カラオケの十八番は?

『歌うたいのバラッド』。

Q.今一番ハマっている漫画は?

『ワールドトリガー』。

Q.自由にどこにでも行けるとしたらどこに行きたい?

集英社! 編集さんと漫画家さんが打ち合わせしているところとか見たいです。僕、いつか週刊少年ジャンプの表紙に載るのが夢なんですよ。『ジオウ』で一緒だった板垣李光人くんが『約束のネバーランド』に出たときにジャンプに載ってて、悔しい~~と思いました(笑)。

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撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明

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