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銀杏BOYZの二度目の日本武道館公演にあった“誕生日みたいな、葬式みたいな、結婚式みたいな気持ち”

リアルサウンド

19/1/29(火) 18:00

 2019年1月15日、銀杏BOYZ二度目の日本武道館ワンマン。2017年10月13日、初の日本武道館ワンマンの時、ライブ後半のMCで「味をしめてしまったみたいなので、来年また武道館でやります。すいません、嘘です。こればっかりは俺だけで決められない」と言った峯田和伸だったが、意外と早く実現したことになる。

 ステージは、床も後方の壁も赤が基調。峯田が出演した映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』の原作者であり、峯田とは長きにわたり親交の深い末井昭と、ライターの島本なめだるま親方(という呼称を知っている時点で年齢がわかる)たちのバンドで、昔、西原理恵子のマンガによく出てきた(のを読んでいたという時点でも年齢がわかりますね)ペーソスがオープニングアクトを務めてからしばし経ち、開演時間の18時30分ぴったりにライブのスタートを告げる映像が流れる。続いて峯田、最近おなじみの赤と青と白のジャージ姿で登場。アコースティックギターを抱える。

 歌う前に峯田、1月15日というのは特別な日であることを告げる。2003年にGOING STEADYの解散と今後は銀杏BOYZとして活動していく、ということを発表した日(その時点では銀杏は峯田ひとりだったが)。2005年に銀杏BOYZのアルバム『DOOR』『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』2枚をリリースした日。2014年にアルバム『光のなかに立っていてね』『BEACH』をリリースした日……ほんとだ。全然気がつかなかった。

 「だから、誕生日みたいな、葬式みたいな、結婚式みたいな気持ちです」と言ってから峯田は、1曲目「生きたい」を歌い始めた。そして曲の途中でステージに出てきた山本幹宗(Gt)、藤原寛(Ba,Cho/AL)、岡山健二(Dr/classicus)、加藤綾太(Gt/2)ら4人のサポートメンバーが、後半のブレイクで「ベイベー!」と叫んで峯田が床に転がると同時に爆音を発し、全員での演奏が始まった。

 「若者たち」、そして「駆け抜けて性春」のYUKIが歌うパートでは、オーディエンスから大ボリュームのシンガロングが起こる。

 「駆け抜けて性春」の次の曲は、昨年秋~冬のツアーでプレイされた新曲「GOD SAVES THEわーるど」。ステージの様子を追うビジョン(画面)、峯田が歌うたびにすごいアップになる。顔のアップを超えて目のアップになる瞬間も。

 〈I don’t wanna die (死にたくない) 愛はどんなんだい〉というサビの「I DON’T WANNA DIE FOREVER」と〈告別式では泣かなかったんだ〉で始まる「漂流教室」を続けて歌ったあとのMCでは、高校2年の時に祖母が亡くなり、その1週間後にカート・コバーンが亡くなった、本当に好きな人が亡くなる初めての体験だった、という話をする。

 バンドをやめようと思ったことが二回だけある、そのうちの一回はレコーディングを投げ出してタクシーで帰る途中だった、カーラジオでかかったRCサクセションの「スローバラード」を聴いてやめることを思いとどまったーーという思い出も、言葉にした。

 そこから「新訳 銀河鉄道の夜」「NO FUTURE NO CRY」「SEXTEEN」を経て、メンバーがはけ、ステージが峯田だけになる。震災のあった2011年3月11日に、銀杏BOYZのマネージメントの社長であり、かつてはRCのマネージャーだった坂田さん(坂田喜策)が亡くなったこと、銀杏の武道館を見せたかったこと、でもきっと今ここに観に来てますよねーーという話をしてから、「坂田さんが引き合わせてくれた」という紹介で、元ボ・ガンボスのDr.kyOnを呼び込み、彼のピアノで「スローバラード」を歌う。次は「光」。レコーディングにDr.kyonが参加した曲だ。ふたりで始まり、曲の後半からメンバーが合流して、kyOnと銀杏の爆音セッションと化した。

 kyOnが去り、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を歌い終えた峯田。「最後のアルバムから今日で5年……5年って長いですよね」。そうか、9年待ったことがあるから、それくらいなんとも思わなくなっちゃってたけど、まあ確かに長いよね、と改めて思った。ちなみに、今歌った曲が主題歌だった、峯田和伸主演映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』からは、何年だっけ……うわ、9年だ。「そろそろ出さないと。今年なんとか完成させるということを目標にして、2019年はがんばりたいと思います」「アルバム買ってくださいなんて言わない、聴いてくれればいい」と峯田。

 そして「バンドやっていていちばんライブで歌った曲」という紹介で「BABY BABY」へ。この曲をリハスタに持っていってメンバーに聴かせた時の話をした峯田、「初めて歌った下北沢のスタジオの感じで歌いたいと思います」と、客席に背を向けてメンバーと向き合い、それぞれに曲のコードを教えてから歌い始め、それにだんだん楽器の音が加わっていく。2コーラス目に入るところで峯田「2番はお客さんが歌ってくれます」と、スタンドごと客席にマイクを向ける。「若者たち」と「駆け抜けて性春」を超える、とてつもない大きさのシンガロングが巻き起こった。その最初のリハスタにいた元ドラマー村井守が、アリーナ後方のPA脇で見守っている。

 本編ラストは「僕たちは世界を変えることができない」と、サビで〈ロックンロールは世界を変えて〉と歌う「エンジェルベイビー」の二連発。峯田、ノドがつぶれていくのにも一切かまわず、すさまじいテンションで歌いきる。

 そして、アンコールに応えて出てきて、曰く、「前半、しゃべりすぎた。しゃべるほど音楽の価値が下がる気がして、今日はしゃべんねえぞって決めてたのに。しゃべっちゃったなあ」だそうです。「武道館、抽選なんですよね。1月15日にまたやりたいです」とも口にする。

 何をやってもいいから、なんとかして、とにかく生き延びてほしいーーというメッセージを、峯田らしい言い方で伝えてから、「あんたたちのことなんてとっくに好きじゃないんだよ。ただ愛してるだけなんだよ」というセリフを決めて「ぽあだむ」に入ったが、歌詞を間違えてしまい曲をストップ。「あんたたちのことなんて~」のくだりからやり直し、二度目は無事に曲の最後まで走り切る。

 ラストは「もしも君が泣くならば」。超満員の武道館、この日何度目かのピークを迎える。歌い終えた峯田は、「どうか世界がひとつになりませんように」と、このライブのタイトルを口にし、「僕ときみが、僕ときみのままでいられますように」とひとこと足してからステージを下りた。

 峯田がGOING STEADYで音楽を始めて20周年のタイミングだったこと。「エンジェルベイビー」「骨」「恋は永遠」のシングル3枚=「恋とロックの三部作」をリリースした直後だったこと。サポートメンバーを集めてバンドでのライブを再開し、1年以上かけてそれを固めて来た集大成的な時期だったことーー。

 というようないろんな意味合いが、前回の銀杏BOYZ初日本武道館にはあった。でも今回は新曲のリリースとかもなかったし、そのへんちょっと位置付けが曖昧かもなあ、という思いが、正直、観る前はあったのだが、終わってみると、僕のそんな気持ちはきれいに消えていた。

 要は、今、ここでやるべき、観るべき価値だけでできたライブだった、ということだ。観ながらいろんなことを思い出したし、これからのいろんなことも考えた。銀杏BOYZに関しても、自分個人に関しても。

 2018年、リリースは一回目の武道館のライブ映像作品『デイドリーム 祈り』しかなかったものの、ツアーがあったりしてライブは比較的活発だったから、というのも理由だろうけど、それだけではない。峯田にとって銀杏BOYZが絶対に必要であること、このバンドでライブをやることが不可欠であることが、一本一本からひしひしと伝わってくるステージを、今の峯田がやっているからだと思う。で、もちろん、こちらにとっても絶対必要だし、銀杏BOYZ。改めてそう感じさせる、掛け値なしにすばらしいライブだった。

(文=兵庫慎司/写真=松木宏祐)

■公演情報
銀杏BOYZ
『世界がひとつになりませんように』
2019年1月15日@日本武道館
■SET LIST■
1.生きたい
2.若者たち
3.駆け抜けて性春
4.GOD SAVES THE わーるど
5.骨
6.恋は永遠
7.夢で逢えたら
8.ナイトライダー
9.I DON’T WANNA DIE FOREVER
10.漂流教室
11.新訳 銀河鉄道の夜
12.NO FUTURE NO CRY
13.SEXTEEN
14.スローバラード(RCサクセション)
15.光
16.ボーイズ・オン・ザ・ラン
17.BABY BABY
18.僕たちは世界を変えることができない
19.エンジェルベイビー
<ENCORE>
1.ぽあだむ
2.もしも君が泣くならば

銀杏BOYZ オフィシャルサイト

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