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PFFアワード2020グランプリ、障害者の表現の可能性探る「へんしんっ!」公開

ナタリー

21/3/8(月) 12:00

「へんしんっ!」メインビジュアル

第42回ぴあフィルムフェスティバルのコンペティション・PFFアワード2020でグランプリを受賞した石田智哉監督作「へんしんっ!」が6月下旬より劇場公開される。

本作は、電動車椅子を使って生活する石田が障害者の表現活動の可能性を探ったドキュメンタリー。演劇や朗読で活躍する全盲の俳優・美月めぐみ、ろう者の通訳の育成にも力を入れているパフォーマーの佐沢静枝ら、多様な“ちがい”を橋渡しする人たちを訪ねる。また振付家でダンサーの砂連尾理に「車椅子を降りた石田くんがどんなふうに動くのかを見てみたい」と誘われ、石田もパフォーマーとして舞台に立つこととなる。

劇場公開にあたり、バリアフリー上映ではなく、日本語字幕と音声ガイド付きのオープン上映を実施。劇中の音声に加え、字幕はスクリーンに投影、音声ガイドは会場スピーカーから流れる形式だ。石田は「本作における、日本語字幕と音声ガイドは、この映画制作で自分が探究し、掴んでいったものを『自分なりに表現する』には不可欠なものとなった。この上映の形に、驚きや戸惑いが生じるかもしれない。だが最後まで、観たときに何らかの引っかかりや新しい感覚、面白さを感じてもらえたならば、作り手として、これほどうれしいことはない」と伝えている。

「へんしんっ!」は東京・ポレポレ東中野、CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)ほか全国で順次公開。なおメインビジュアルは「二重のまち/交代地のうたを編む」や「人生フルーツ」の宣伝美術を担当したグラフィックデザイナー、成瀬慧が手がけた。

石田智哉 コメント

「表現活動をする人を撮ることで、自分がどう変わっていくのかを大切にしたい」。制作スタッフと集い、お互いの経験を話した初回撮影の最後、私はこう語った。映画冒頭のインタビューを観るたびに、その場で汗ばみ、少し震えて発した声と、いざ制作がはじまり、言葉にしたことを作品にのせるまでには、多くの葛藤があったことを思い出す。
佐沢さんと美月さんから自分の思いを観客に届けるための活動が共有され、その活動には多岐にわたる観点を含んでいることを目の当たりにした自分は、圧倒されるばかりで、返せる言葉がなかった。ただ、その場で「やりたい」と強く心に決めたのは、二人が語ったことや問いかけを自分の中に取り込んで、そのことに対する、自分なりの応答を、映像作品として形にしたいとの思いであった。その後、約1年かけて編集し、本作はぴあフィルムフェスティバルにて上映する機会を得た。そこでの上映では日本語字幕と音声ガイドを間に合わせることができなかったが、どのように届けるかにも私の思いが込められることを映画祭に参加することで実感し、今回の劇場公開にあたっては、日本語字幕と音声ガイドのある状態で上映することにした。本作における、日本語字幕と音声ガイドは、この映画制作で自分が探究し、掴んでいったものを「自分なりに表現する」には不可欠なものとなった。この上映の形に、驚きや戸惑いが生じるかもしれない。だが最後まで、観たときに何らかの引っかかりや新しい感覚、面白さを感じてもらえたならば、作り手として、これほどうれしいことはない。
「へんしんっ!」というタイトルは、本制作をスタートから見守り、数々の励ましやアドバイスをくれた篠崎誠さんからもらった言葉である。「映画作りを通して、体と心が変わっていくこと」が切に込められたタイトルである。これ以上に作品のことを深く、そして、自分らしく語ってくれる言葉は思いつかなかった。
長い月日をかけて、迷いながら、映画を作ることは、貴重で味わい深い経験であった。出演者のみならず多くの人からあらゆる言葉をかけてもらい、鼓舞された。自分の姿を映像で見続け、自分の声を聞き続け、あれこれと思い悩みながらパソコンを使って言葉をつづり続け、本作は完成した。この過程によって、自分が何をすることに<よろこび>を感じるのかが、以前よりも、少しだけ、はっきりと分かったような気がする。自らの変わっていく姿を映画に閉じ込めることができ、このことを作品として観てもらえる機会に恵まれたことへ感謝の思いでいっぱいである。

(c)2020 Tomoya Ishida

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