定番ものに注目の再演もの、日本オリジナル新作など、2021年話題必至のミュージカルラインナップ
21/1/3(日) 12:00
まずは定番のロングランものから見ていくと、日本初演が1967年の『屋根の上のヴァイオリン弾き』が2月に、1987年の『レ・ミゼラブル』が5月に、2002年の『モーツァルト!』が4月に開幕。それぞれブロードウェイ、ロンドン、ウィーンで産声を上げたのちに日本に定着した名作中の名作で、そもそも折り紙付きの作品クオリティとともに、上演のたびに投入される新キャストがもたらす新風によっても人気を維持してきた。
今回も、何年も観続けてきている作品ファンにとっての注目はやはり、「屋根ヴァイ」の凰稀かなめやブラザートム、「レミゼ」の生田絵梨花や六角精児ら新キャスト。一方で今回は、連続テレビ小説『エール』で一躍全国区となった、吉原光夫(2011年より『レ・ミゼラブル』に主演)、山崎育三郎と古川雄大(山崎は2010年、古川は2018年より『モーツァルト!』に主演)を目当てに、初めて足を運ぶ観客も増えるのではないだろうか。いわゆる“朝ドラ効果”のミュージカル界への波及に期待したい。
前回の上演から間を空けずしての再演となり、“定番予備軍”の様相を呈しているのが、有名な冤罪事件を題材にした社会派ミュージカル『パレード』(1月)、革命の嵐の中で起こった悲恋を壮大なスケールで描く『マリー・アントワネット』(1~2月)、ふたりの俳優が一台のピアノのみと綴るスリリングな『スリル・ミー』(4月)、名作漫画の世界をミュージカル界のトップ俳優たちが立体化する『王家の紋章』(8月)などなど。
また再演もので言えば、福田雄一演出の爆笑コメディ『モンティ・パイソンのSPAMALOT』(1月)の6年ぶり、ハリウッド映画化も話題のラップ・ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(春)の7年ぶり、井上ひさし作の傑作和製ミュージカル『日本人のへそ』(3月)の10年ぶり、さらには古典的名作『オリバー!』(9~11月)の実に30年ぶりの“復活”にも要注目。『~SPAMALOT』の山田孝之、『~へそ』の井上芳雄、『オリバー!』の市村正親ら新キャストは、果たしてどんな2021年版を見せてくれるだろうか。
新作に目を向けると、トニー賞こそ獲っていないがブロードウェイで大きな話題を呼んだ、“隠れた名作”の翻訳上演が多いのが今年の特徴。目玉は何と言っても劇団四季の『アナと雪の女王』(6月~)で、映画が社会現象級ヒットとなった2013年以来の“レリゴー旋風”が再び巻き起こることは間違いない。また、無条件で楽しい“ザ・ブロードウェイ・ミュージカル”に、地球ゴージャスが初の海外作品として挑む『The PROM』(3~5月)も期待大。
柚希礼音主演の『IF / THEN』(1月)と高畑充希主演の『ウェイトレス』(3月)は、どちらも現代女性の生き方がテーマとなっている作品。そして濱田めぐみ主演の『アリージャンス~忠誠~』(3月)は、第二次世界大戦下、強制収容所に入れられた日系人家族の実話を描く。毛色はそれぞれ異なるが、いずれも日本で、日本人が、日本語で演じることで、ブロードウェイ版とはまた違った共感ポイントが生まれそうで楽しみな新作たちだ。
翻訳上演ではなく“世界初演”となる日本オリジナルの新作では、日英米合作の『イリュージョニスト』(1月)、今井翼主演の『ゴヤ―GOYA―』(4~5月)、竹内涼真が初舞台にして初ミュージカルに挑む『17 AGAIN』(5~6月)、すでに宝塚では上演されているが男女混合キャスト版としては初演となる『ポーの一族』(1~2月)などがラインナップ中。この中から、いずれ海外でも上演されるような名作が生まれるかもしれない。
ほかにも『ゴースト』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』『BARNUM』『ブロードウェイと銃弾』『メリリー・ウィー・ロール・アロング』『日本の歴史』『エニシング・ゴーズ』など、観逃がせないミュージカルが目白押しの2021年。現時点では発表されていない作品も、きっとまだまだあるだろう。今はとにかく、すべての作品が無事に開幕し、無事に千穐楽を迎えられることを祈るばかり。そして“無事”が当たり前でなくなった今だからこそ、一つひとつのミュージカルを大切に鑑賞したい。
文:町田麻子
※最新の公演情報は各公演公式サイトにてご確認ください。
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