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葵わかなが語る、『任侠学園』で初めて挑んだ役作りの裏側 「分からないのは悪いことじゃない」

リアルサウンド

19/9/27(金) 12:00

 西島秀俊と西田敏行がW主演を務める映画『任侠学園』が9月27日に公開された。困っている人は見過ごせない、義理と人情に厚すぎるヤクザ“阿岐本組”。社会貢献に目がなく、次から次へと厄介な案件を引き受けてしまう組長(西田敏行)によって、経営不振の高校の建て直しを行うことに。いつも親分に振り回されてばかりの阿岐本組ナンバー2の日村(西島秀俊)は子分たちを連れて仕方なく学園に向かうが、彼らを待ち受けていたのは、無気力・無関心のイマドキ高校生と、事なかれ主義の先生たちだった……。

参考:葵わかなが語る、『わろてんか』てん役を通しての成長 「常に向上心をもって演技をしていきたい」

 今回リアルサウンド映画部では、学園一の問題児・沢田ちひろを演じた葵わかなにインタビュー。今回初めて挑戦したという役へのアプローチから、出世作となったNHK連続テレビ小説『わろてんか』以降に変化した考え方についてまで、話を聞いた。

ーー今回演じられた沢田ちひろは、今まで葵さんが演じてきたような役柄とは随分異なる印象を受けました。

葵わかな(以下、葵):そうですね。作風もそうですが、初めていただくような役柄だったので、自分にとってはすごく新しいものだと思いましたし、挑戦的な作品になるだろうなと感じていました。今までこういう役にあまり縁がなかったので、「葵わかなにやらせてみよう」と思ってくださったことがすごく嬉しかったですし、自分なりに頑張ろうと思いました。

ーー髪を赤く染めたりショートカットにしたりと、ビジュアル面でも大きな変化がありました。

葵:私も最初、黒髪だときまらない感じがしたので、「金髪とかにしますか?」って木村(ひさし)監督に話したら、監督が「いや、金じゃなくてこの色で」って見せてくださったのが赤色だったんです。赤は想像していなかったのでビックリしたんですけど、監督の中でこだわりがあったようでした。でも結果的に、赤髪によってすごくキャラクターっぽくなったので、赤にして正解だったと思います。ピアスや制服の着こなし方も、衣装さんやメイクさんと話しながら決めていったんです。靴下を短く履いたり、スカートを短く折ったり、シャツの袖を折ったりというのも、今っぽい感じを意識して作っていきました。

ーーご自身の高校生時代と比べてどうでしたか?

葵:私は優等生タイプだったので、結構真逆と言える感じでした。こういう子に憧れはあったんですけど、学級委員とかもやっちゃうタイプだったので、「スカートも折りません!」という感じで(笑)。でも、ちひろが抱えている悩みは、思春期の子なら誰しもが持っている悩みだと思うので、そういう内面的な部分には共感できました。

ーーちひろは「根は真っ直ぐで正義感が強いが中身はおっさん」という設定で、劇中ではヤクザ用語を連発していましたね。

葵:改めて聞くとめちゃくちゃな設定ですよね(笑)。実は、ちひろの複雑な部分、ちょっと半グレみたいな要素はもともと台本にあったんですけど、中身がおっさんっていうのと、任侠映画が好きという設定は、撮影しながら後からついてきたんです。

ーーそうなんですか?

葵:そうなんですよ。それも、直接言われたわけではなく、シーンごとにドライやテストをやっていく中でなんとなくそうなっていって……。木村監督はすごくひらめきが多い方で、ほぼ毎日、前日に変更台本がみんなに配られて、セリフが追加されたり変更になったりしたんです。もう、どんどんどんどん変わっていくんですよ。もちろん基本的な流れは変わらないんですけど、監督の変更によって、よりシーンが膨らんでいくというか、立体的になっていく。その結果として、ちひろの中身がおっさんになりました(笑)。映画が完成するまで、ちひろがこんなキャラクターになるとは想像していなかったですし、ちひろだけではなくて、たぶんみんなそうだったんじゃないかなと思います。

ーーということは、葵さんの中で事前に準備していたちひろとは結果的に違うちひろになったということですか?

葵:私自身、いつもは結構役を組み立ててから現場に行くタイプなんですけど、今回はあまり組み立てていかなかったんです。正直、どうやって組み立てたらいいか分からなかったというのも理由のひとつですし、木村監督は現場でいろいろ指示をくださる方だと聞いていたので、ちひろみたいな自由な役の場合、自分で決めすぎると、うまくいかなくなるかもしれないと。なので、飛び込むかたちで現場に入りました。そうすると、やっぱり聞いていた通り、監督が細かく指導してくださったので、それをいかに体現できるかが、日々勝負でした。

ーー現場で作っていくというのは大変ではなかったですか?

葵:大変でしたし、緊張しました。でも、特にちひろは台本にないセリフを言うポジションになることが多かったので、すごく面白かったです。先日別の取材で、皆さん同じように思っていたことが分かったんですけど、そういう面でも一致団結していく感じがありました。木村さんが監督で、選手の私たちが「これはホームランだ」「これはヒットだな」という感じでボールを打っていくイメージでした。みんなの相乗効果の結果が、作品にもよく表れているのではないかなと思います。

ーーエンドロールに出てくるNGシーン集からは、撮影の和やかな雰囲気もすごく伝わってきました。

葵:今まで受け身の役が多く、自分から発信していくのは初めてだったので、私は内心ハラハラしていましたが、すごく笑顔の絶えない現場でした。

ーー西島秀俊さんを中心にほぼ毎日飲み会が開かれていたとか。

葵:そうなんです。阿岐本組の皆さんは早くから撮影をされていて、私たち生徒がクランクインした時にはもう既に阿岐本組の皆さんがすごく仲良くなって、出来上がっていて。仲が良い方々が多かったからなのか分からないんですけど、「反省会」という名の会を、毎夜毎夜行っているらしいとう噂は聞いていて(笑)。最初のうちはなかなか参加する機会がなかったんですけど、後半になってお誘いいただいたんです。「いよいよ噂の反省会に自分も出席する時がきた!」という感じで行ってみたら、皆さん歳は離れているんですけど、若手にも分け隔てなく本当に皆さん優しく接してくださって、すごく楽しかったです。

ーーそれは本当に「反省」をしている会なんですか?

葵:最初はしてたのかもしれないですけど、私が行った時にはもう既にただの飲み会でした(笑)。でも、やっぱりそういうところでこそ、現場では聞けないようないろんな話を聞けるじゃないですか。そういう場だからこそ、ひょいって気になる質問を投げられたりするので、すごく良い時間でした。阿岐本組の皆さんは、誰一人欠けてはいけないパズルのような感じで。たくさん人がいると、同じピースのような人がいたりするじゃないですか。そういうのが全くなくて。皆さんがそれぞれ心地の良いピースに自らハマりにいっていたのかもしれないですけど、すごくバランスのいいグループ感が伝わってきたんです。そこから、それぞれの方とお話すると、当たり前ですけど、「あ、こんなふうに考えてるんだ」とか、思っていた通りの部分もあれば、そうでない部分もあったり、中身はみんなバラバラなんです。なのに、こんなにカチっとハマるのは本当にすごいなと。西田(敏行)さん含め、阿岐本組の皆さんがすごく素敵な空気感を作ってくださいました。

ーー共演シーンの多かった西島さんの印象はどうでしたか?

葵:西島さんは、もう本当にいい人で。こんなにいい人っているんだって思うぐらい、いい人なんです(笑)。西島さんが真ん中に立っていてくださるから、若い私たちも安心して自由にお芝居できるんだなと。西島さんは、役柄的に兄貴分なんですけど、ご本人もすごく兄貴肌なんです。生徒役の人たちの相談を聞いてくれたりしていましたし、頼りたくなるような、追いかけていきたくなるようなタイプの方で、すごく尊敬しています。

ーーそんな西島さんを殴るシーンなどもありましたが、葵さんの中で印象に残っているシーンはありますか?

葵:全体を通して、とにかく笑いをこらえきれなくて大変なシーンがすごく多かったです。たぶん皆さんそうだったと思うんですけど……(笑)。NGシーン集でもありましたが、笑っちゃってNGになるシーンも結構あったぐらいです。あとは、窓ガラスを割るシーンは本当に大変でした。窓ガラスを割るには結構力がいるし、割れたら貼り直さなきゃいけないので、一発OKじゃないとダメなんです。私は3枚割らなきゃいけなかったんですけど、1回目の本番の時に一個も割れなくて、大変でした。2回目の本番でようやく割れたんですけど、あのシーンはどうしようって一人ですごく緊張しましたね。

ーーここ最近はドラマや映画に加えて、MCやミュージカルなど様々なフィールドで活躍の場を広げている葵さんですが、出世作となったNHK朝の連続テレビ小説『わろてんか』時のインタビューでは「お芝居に関しては、全然まだまだ」と話されていました。『わろてんか』以降で何か変化はありましたか?

葵:「まだまだこれから」というのに変わりはありませんが、役者としてというか、自分自身の考え方は変わっていく部分が結構あって。私はもともと“分からない”ことが嫌いで、分からなかったら調べたり考えたりするタイプだったんです。なので、分からないままにしておくのがずっと嫌だったんですけど、最近は「別に分からなくてもいいや」って思えるようになったのが一番の変化です。昔は何をするにも、自分の中で正解を探していたんですけど、最近は「そんなの分からなくない?」と思い始めて……。

ーーそれはここ最近の話ですか?

葵:そうですね。それこそミュージカルや声のお仕事など、今まで挑戦してこなかったジャンルのお仕事にも挑戦させていただいて、そこで成長できたと思う部分がすごく多くて。初めてのことにチャレンジする時には、やること自体が正しいのか正しくないのかを迷う部分もあるんですけど、結局いただいたお仕事は全ていい経験、いい結果につながっているので、「普通はこうだよね」という考え方もあてにならないなと思ったりもして。今回この『任侠学園』のちひろ役では、今まで分からないことが嫌だったからしっかり組み立てていたところを、初めて分からないまま入ってみることにしました。結果的にそれがすごくいい経験になったし、勉強にもなったし、撮影も本当に楽しかったんです。そういう経験もして、「分からないのも別に悪いことじゃないな」っていう考え方に変わったので、昔よりはだいぶ柔軟になったかなと思います。なので、この柔軟さをもって、これからもいろんな分野に挑戦していきたいです。(取材・文・写真=宮川翔)

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