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銀杏BOYZ、6年9ヶ月ぶりのフルアルバム『ねえみんな大好きだよ』完成記念! 11週連続・峯田和伸インタビュー連載!!

銀杏BOYZ、6年9ヶ月ぶりのフルアルバム『ねえみんな大好きだよ』完成記念! 11週連続・峯田和伸インタビュー連載!!

全11回

第6回

20/10/14(水)

銀杏BOYZの6年9ヶ月ぶりとなるフルアルバム『ねえみんな大好きだよ』が10月21日にリリースされることが決まった。本作は、オリジナルメンバー脱退後、峯田和伸1人になってから初めてのフルアルバムになるのだが、この6年9ヶ月を顧みれば、前作からここに至るまでの銀杏BOYZは休むことなくラジカルに動き続けていた。銀杏BOYZ結成から17年間の活動の中でも、かなり濃厚な時間を過ごしていたわけだが、これらの経験や刺激が、銀杏BOYZにとって最も重要なアルバム制作にどう反映されたのだろうか。また、誰もが新型コロナウイルス感染拡大による制限や影響を強く強いられている今、峯田はどんなことを考え、銀杏BOYZの表現に反映させたのだろうか──。

ここでは、こういった今の峯田が考えていること、アルバム完成までの経緯と思い、収録楽曲についてを徹底インタビュー。アルバム収録曲数「11」にちなんで11週にわたってお届けする(毎週水曜日更新予定)。第6回の今回は、前回に引き続き、今回のアルバムの中で、特に重要な意味を持つ曲『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』、そしてその次に収録された『骨』について聞いた。

取り返しのつかないことの先に見える景色とは?

── 『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』は、不倫とか浮気とか、やっちゃいけない恋愛をしている人に向けた曲なのかと思いました。〈ふたりで間違えようか 神様に背をむけようか〉〈波打ち際 まわるよメリーゴーランド〉という歌詞と切ないメロディーが、社会規範を欺くような、不安定な状況の恋愛のように聞こえて。

峯田 特に不倫とか浮気に限って書いたわけではないけど、でもね、男と女の逃げる先……それは不倫なのかどうかはわからないけど、世の中とか社会を捨ててまで、男と女が逃げて逃げてやっとたどり着く終着地点はどんな景色なのか……そんなことを考えていたのは確か。そういう切ないロマンみたいなところから「今回のアルバム全体にどういうものを生みだせるか」をずっと考えてたよ。

どこまで喋って良いのかな……前に少し話したようにちょうど銀杏BOYZからチンくん(チン中村。元ギター)が抜けることになったのが、2012年のこと(第4回参照)。脱退の発表は2013年の11月だったけど、実際にはこの年に、もうチンくんは銀杏BOYZから離れてたんだ。

このときのことははっきり覚えてるんだけど、僕の中で何かがガラガラと崩れていくような、これまで作ってきたものが全部終わってしまいそうな予感があった。「チンくんが抜けたらもうこのバンド、ヤバいな」みたいなね。僕の中で何かが終わって、取り返しのつかないことになったっていう。さらに、その後アビちゃん(安孫子真哉。元ベース)も抜け、村井くん(村井守・元ドラム)も抜けることになって。いよいよ本当に砂の城が崩れていくような感じになるんだけど……。

ちょうど最初にチンくんが抜けることになった2012年6月にさ、元オウム真理教の菊地直子さんっていう人が17年間の潜伏生活みたいなことをしていたんだけど、身元がバレて警察に捕まったニュースを見たの。

菊地直子さんは相模原のボロッボロのあばら家に一般男性と一緒に住んでいたんだけど、そこで逮捕されちゃった。ニュースを伝え聞いただけだから細部が事実と違ったら申し訳ないけど、菊地直子さんとその一般男性はまず最初、6年くらい普通に交際していたらしい。この頃はもう菊地直子さんはオウム真理教を脱会していたみたいだけど、その男性に対して「自分は指名手配犯の菊地直子である」ってことは、まだ話をしていなかったらしい。

その事実を全く知らない男性は、やがて菊地直子さんにプロポーズをしたんだって。「そろそろ結婚しないか」と。そうしたら菊地直子さんは「実は私、あなたに言わなければならないことがある。私、実は指名手配犯の菊地直子なんだ」って断ったらしいの。そこで、その男性がどうしたかと言うとさ、「わかった。それでも良いから一緒に暮らして行こう」って。それで、2人は相模原のあばら家に隠れるように息を潜めてひっそりと過ごしていたらしい。「取り返しのつかないことに関わってしまった」「喪失感と一緒に生きていく覚悟をしなければいけない」「2人にしか分かり合えない愛の巣中で息を潜めて暮らそう」っていう大変な状況をずっと続けていた菊地直子さんと男性なんだけど、菊地直子さんは身を潜め続けた17年間の末に、ついに逮捕されることになった。後に、菊地直子さんと一緒にいた男性も逮捕されることになるんだけど、この取り返しのつかない感じがさ、当時の僕自身とダブって見えて。

僕も取り返しのつかないことになった。チンくんっていう人を失った。本当に辛いし、どうしようもないことだけど、この喪失感を抱えながら生きていく覚悟を、この時期にしたんだ。バンドを始めた頃の、あのときの気持ちとは全く違う感情だよ。絶対に消えないだろう喪失感を抱えながら、銀杏BOYZを続けていかなくちゃいけないっていう。

その後、菊地直子さんは裁判を受けて結果的にサリン事件には関わっていなかったことが証明されて無罪判決で後に釈放されたんだけどね。この経緯は当時本当に胸に刺さっちゃってさ……。

この時期は人間が逃げて逃げて逃げまくってさ、とにかく生き延びるような映画ばっかり観てた。北野武さんの『HANA-BI』、大島渚さんの『愛のコリーダ』、レオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』とかね。

僕は特に意識していたわけではないけど、『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』は、「不倫とか浮気をしている人が聴いたらたまらない」みたいな感想があるとしたら、僕が考えていたこととそんなに遠くはないのかもしれない。僕はそういう恋愛はしたことはないけどね。

アルバム前半の緊張感を『骨』で解放

── その切なくて重い『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』の次に収録されているのが『骨』ですね。前半の重くて緊張感がある内容から、この中盤に入るところで、ちょっと気持ちが和らぎます。

峯田 緊張感が続いた前半からの解放の1曲目(笑)。特に『骨』は、もともと安藤裕子さんからの依頼で作った曲で、我が子を思うお母さん目線の穏やかな気持ちで作った。だから、『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』のような取り返しのつかない感じはない(笑)。アルバムではこの『骨』の後に、『エンジェルベイビー』『恋は永遠 feat.YUKI』と続くけど、この3曲は、2017年に連続で出したシングル。ポップで聴きやすいと思う。

たださ、2017年に3ヶ月連続でシングルリリースしたときは「それぞれの曲の世界観が伝わればいいな」と思うだけで、「アルバムにどうやって入れようか」みたいなことまでは考えてなかった。

今回アルバムに入れることになって、改めてこの3曲に向き合ってみたんだけど、それぞれの曲は個性的で良いものの、レベルも違えば音域も違うし、なんかバラバラだったんだよね。そこであえてアルバムから省くこともあるけど、このポップな3曲をボツにするには惜しいから。なんとかそれぞれの曲が持つ個性を生かしながら、なおかつアルバムの中にどう配置すれば生きるか……みたいなことをずっと考えていた。結構難しかったけどね。

── 特に『骨』は、いじりにくそうというか、曲そのものの構成・アレンジもシンプルだから、足し引きが難しそうに思いました。

峯田 そうだね。

── ただ、今回のアルバム用のアレンジで、シュープリームスとかロネッツのようなポップな感じがより出ているような……。

峯田 そこは意識したよ。シングルの『骨』よりも、さらに耳障りが柔らかくなるようになっていると思う。大袈裟に言えばフィル・スペクター(笑)。あと、ビートルズとか1910フルーツガム・カンパニーとか、ああいうサウンドを意識して録り直した。アルバムに入れて他の曲との相性を崩さないように考えながら。

※次回へつづく

Text:松田義人(deco) Photo:小境勝巳

リリース情報

銀杏BOYZ ニュー・アルバム『ねえみんな大好きだよ』

【初回盤】
【通常盤】

10月21日(水)発売
品番:SKOOL-049 価格:3,300円+税
収録曲(全11曲)
01.DO YOU LIKE ME
02.SKOOL PILL
03.大人全滅
04.アーメン・ザーメン・メリーチェイン
05.骨
06.エンジェルベイビー
07.恋は永遠 feat.YUKI
08.いちごの唄 long long cake mix
09.生きたい
10.GOD SAVE THE わーるど
11.アレックス

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