Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『LUNATIC FEST.』は今年も予測不可能なフェスだったーー“飛び入り参加”多発の2日目をレポート

リアルサウンド

18/7/8(日) 10:00

 LUNA SEAが主宰する『LUNATIC FEST.2018』が6月23、24日に千葉県・幕張メッセ国際展示場1~6ホールにて開催された。

(関連:画期的でクレイジーな『LUNATIC FEST.』が再び開催ーー初出演組に見る、LUNA SEAの影響力

 2015年に開催された第一回から様々なアーティストのステージにLUNA SEAのメンバーが飛び入り参加するなど、何が起こるかわからない、まさしく“史上最狂のロックフェス”と呼ぶに相応しいお祭りだった。二回目となる今年も初日である23日のLUNA SEAメンバーの飛び入りはもちろん、GLAYのステージにたまたま会場に来ていたNESMITH(EXILE/EXILE THE SECOND)が飛び入り参加するなど、誰も予想できないことが起こるフェス、それが『LUNATIC FEST.』である。本稿では二日目である24日の模様をレポートする。

 二日目は声が枯れ気味のBOOの挨拶からスタート。初日が素晴らしすぎて声を張りすぎてしまった、と前日を振り返った。世間がW杯で賑わっていることもあり、「LUNA SEAハンパないって! マジハンパないって!」と言い、会場の笑いを誘った。

■LUNACY

 初日に続き、MOON STAGEでオープニングアクトを務めたのはLUNACY。LUNA SEA結成当初の名義であり、初日にはレア曲「NIGHTMARE」を披露したことで、否が応にも期待が高まってしまう。大歓声の中、J(Ba)の歪んだベースを合図に始まったのは「CHESS」。そして「飛ばしていこうぜ!」のRYUICHI(Vo)の声と共に鳴らされたのは「SUSPICIOUS」だった。前日に続き未CD化のレア曲にSLAVE(LUNA SEAのファンの総称)は歓喜の悲鳴をあげ、静と動が同居するこの曲はそのまま重々しい「SEARCH FOR REASON」へと続く。圧巻のシャウトを魅せるRYUICHIの姿はもはや狂気そのものだった。

■THE ORAL CIGARETTES

 MOTHER STAGEの先陣を切ったのは「ずっと出たかったんですこのフェス!」と登場から感情を爆発させたTHE ORAL CIGARETTESだ。「カンタンナコト」でライブをスタートさせ、「今日初めて出会った人とももしかしたらこれから長い付き合いになるかもしれないので、よろしくお願いしますの意味も込めて」と「トナリアウ」を歌い上げた。普段は別の界隈でライブをやっているが、最初に聴いて育ったのが“こっち”の界隈だったために、その間を取れる音楽をやっていきたいと山中拓也(Vo)が涙ながらに語ると温かい拍手が起こった。だがしかし、彼らが見せた盛り上がりは決して温情ではない。彼らの音楽には聴いた瞬間に体が動いてしまうようなつかみのうまさがあるのだ。「狂乱 Hey Kids!!」「BLACK MEMORY」とキラーチューンを立て続けに披露して確実に彼らのファン以外にも爪痕を残した。

■OLDCODEX

 続いてMOON STAGEに登場したのは音楽とライブペインティングが融合したユニット・OLDCODEX。彼らは登場から「Feed A」や「Deal with」など人気アニメの主題歌を投下しアグレッシブにライブを展開。Ta_2(Vo)は巧みにクリーンとスクリームを歌い分け、YORKE.(Painter)はキャンバスに色を重ねていく。バンドの9年間の歴史の中でピンチだったときに手を差し伸べてくれた先輩としてステージに呼び込まれたのはINORAN。そしてINORANがサウンドプロデュースした「HEAVEN」を一緒にプレイし、YORKE.はギターを弾くINORANの背中に興奮気味にスプレーを吹きかけた。ラストに演奏された「Growth Arrow」で、キャンバスに描かれた『LUNATIC FEST.』のモチーフを模したドクロは、いつしか金色の月に姿を変えていた。

■lynch.

 ひと際大きな歓声をもってMOTHER STAGEに迎えられたのはlynch.。葉月(Vo)の挨拶から「EVOKE」でライブはスタートし、「LUNA SEAの曲をカバーしてきました!」と始まった「SLAVE」でSLAVEの心もがっちり掴み、「今日はただ思い出を作りに来たわけではありません。皆さんの心を奪いに来ました。」と宣戦布告。そして極め付けはJを呼び込み彼がレコーディングに参加した「TRIGGER」をプレイ。バンド史上最大の危機を救うべく二つ返事でレコーディング参加を快諾したJが、帰ってきた明徳(Ba)と向かい合ってベースを弾き、頭を撫でたシーンに胸が熱くなった。完全にフロアを掌握した彼らは葉月の「SLAVEのみなさん、歳下の男は嫌いですか? 試しに今日は僕たちと浮気してみませんか?」と煽りとともに「pulse_」を披露、最後には再び葉月が「絶対にワンマンでこの景色を見てやるからな!」と宣言しステージを去った。

■MUCC

 MOON STAGEに登場するなりスクリーンに映し出されたタイマーがカウントダウンを始める演出でいきなり新曲の「TIMER」を披露し、強心臓ぶりを見せつけたのは前回に続き参戦のMUCC。「MUCCの登場だぞお前ぇら!!」と逹瑯(Vo)が吼えると「KILLEя」の間奏ではLUNA SEAの「ROSIER」のイントロをねじ込むニクいアレンジを見せた。また、会場中を包むような多幸感に溢れた「ハイデ」を演奏したのもつかの間、キラーチューンの「蘭鋳」を投下。「前回、RYUICHIさんの言葉を借りて言いましたが、今回はちゃんと自分の言葉として言いたい。今日はここにいるお前らの顔、全員覚えて帰るからな! 絶対にうちらのことも覚えて帰れよ。いや、忘れさせねぇよ!」と言った逹瑯が印象的だった。そして、ライブは壮大なスケール感のある新曲「生と死と君」で幕を閉じた。

■大黒摩季

 対するMOTHER STAGEでは『LUNATIC FEST.』2日目の紅一点である大黒摩季が登場。もちろんドラムはお馴染みの真矢である。本人は「甚だお呼びでない感じが否めないんですけれど」と謙遜していたが、いざライブが始まってしまえばヒット曲のオンパレード。「熱くなれ」でスタートしてから「チョット」「あなただけ見つめてる」と口ずさめない曲がないほどで、曲が始まるたびにオーディエンスも懐かしさに歓声をあげた。昨年25周年を迎えた大黒だがパワフルな歌声は健在で、さらにセットリストはTwitterで募集したリクエストのみで構成されるサービス精神にも溢れ、ときにジョークを交えて笑いを誘う飾らないキュートな一面も。戦友・真矢との息もぴったりで、楽しそうにアイコンタクトを取るシーンが何度も見られた。そんなヒットソングで彩られたライブの最後を飾った「ら・ら・ら」では会場から大合唱が巻き起こり大団円となった。

■AA=

 凄まじい爆音のなかMOON STAGEに現れたのは上田剛士(Ba/Vo)率いるAA=だ。「少しばかりやかましいですが、俺たちも楽しんでいってください」と挨拶をし、オーディエンスをデジタルハードコアの世界へ引きずり込む。「2010 DIGItoTALism」「posi-JUMPER」「GREED…」と間髪入れずに奏で、彼らを初めて見るであろうオーディエンスまでも気がつくと無意識に体を揺らし、ジャンル関係なく音楽を楽しんでいる姿はまさに彼らが掲げる “All Animals Are Equal”(すべての動物は平等である)を表していると感じることができた。「今より少しでも優しい世界へ。ある日俺たちがいなくなったとき、世界が少しでも優しくなっているように。ルナフェス、俺たちだけでもしっかり繋がっていようぜ」とメッセージを送り「The klock」をプレイ。ラストを飾る「FREEDOM」ではJを呼び込み同年代の二大ベーシストの共演に大きな声があがった。

■BRAHMAN

 民族的なSEをバックにMOTHER STAGEに登場したのはBRAHMANとSUGIZO。いきなりの飛び入りに歓声があがるなか5人での「初期衝動」でライブは幕を切って落とす。「一瞬にして、ジャンルの壁なんてぶち壊せんだ。20年前、10年前、知ったこっちゃねぇよ。大事なのは今ここ。LUNATIC FEST.、BRAHMAN始めます」というTOSHI-LOW(Vo)の挨拶を合図に「賽の河原」「SEE OFF」とハードコアナンバーを立て続けにお見舞いし、「ANSWER FOR…」で客席に立ったTOSHI-LOWはオーディエンスの上に立ったまま「鼎の問い」を歌い上げた。

 そして、東日本大震災の追悼の場で出会って、仲を深め、約束を果たしたSUGIZO。そこで生まれた絆は続き、「満月の夕」(ソウル・フラワー・ユニオン)のコラボレーションで結実する。TOSHI-LOWの歌とSUGIZOのバイオリン、10年前では考えられなかった音楽とは関係ないところで繋がった縁は“鎮魂歌”となってオーディエンスの心を揺さぶった。そして今回の『LUNATIC FEST.』において異端の存在であったBRAHMANは最後までBRAHMANらしく、「真善美」で〈さあ幕が開くとは終わりが来ることだ/一度きりの意味をお前が問う番だ〉とオーディエンスに叩きつけ、TOSHI-LOWが手放したマイクがステージに落ちる音とともに幕を閉じた。

■LOUDNESS

 狂おしき奇跡のフェスも終盤戦を迎え、MOON STAGEに登場したのはジャパンヘヴィメタルの雄・LOUDNESS。今年約4年ぶりにオリジナルアルバムを全世界同時にリリースし、再び世界制覇に乗り出したLOUDNESSは、まさしく世界基準の音と音圧でライブを展開、新作『RISE TO GLORY -8118-』から「Soul on Fire」「I’m Still Alive」を披露した。続く「CRAZY NIGHT」では二井原実(Vo)の自慢のハイトーンボイスを響かせ、短い期間ではあったがLOUDNESSに在籍していた元Xの沢田泰司がいた頃の楽曲でもある「BLACK WIDOW」では高崎晃(Gt)と山下昌良(Ba)のユニゾンに酔いしれた。残り2曲、「CRAZY DOCTOR」でのクラシカルなギターソロ、ラストを飾った「S.D.I」ではボスハンドでのタッピングと、高崎のギターにただただ圧倒されるしかなかった。圧倒的な存在感と、耳鳴りがするほどの音圧と余韻を残して彼らは『LUNATIC FEST.』を後にした。

■YOSHIKI

 残り二組となりMOTHER STAGEに現れたのはYOSHIKI。本来であればX JAPANとして出演する予定だったと本人は話したが、今回はストリングス隊を携え、クラシカルスタイルでの出演となった。ゆっくりと「MOONLIGHT SONATA」を奏でると、スクリーンにHIDEの映像が流れ、ピアノの伴奏が始まると、そこに乗ったのはHIDEの声だった。没後20年となる2018年にHIDEがYOSHIKIの伴奏で「HURRY GO ROUND」を歌ったのだ。ただ、これはまだ奇跡の序の口で、続く「Say Anything」ではSUGIZOがバイオリンを、TERU(GLAY)が歌を担当し、「HIDEさんに届けましょう」というTERUの声にオーディエンスも一緒に歌を届けた。さらには「KURENAI」をRYUICHIが歌い上げ、30年一緒にいてYOSHIKIのピアノで歌うのは初めてだと語った。

 そして極め付けは先程のメンバー、そしてMUCCの逹瑯とミヤを呼び込み、即興で「X」をプレイ。この奇跡のセッションに逹瑯は「中学生の頃の自分に会えるならば、あえて呼び捨てで、お前この先頑張るとYOSHIKIとTERUとRYUICHIとSUGIZOと、お前がこれから組むバンドのギターと一緒にステージ立てるぞ」と言ってあげたいと興奮気味に話した。「仲間っていいね」と噛み締めたYOSHIKIは「親愛なるHIDEとTAIJIに捧げます」と「Without you」を演奏し、最後は「ENDLESS RAIN」の大合唱を以ってステージを去った。

■LUNA SEA

 残るはこのフェスの“首謀者”であるLUNA SEAのみとなった。待ちきれないオーディエンスが手拍子を始めるとSEの「月光」が流れ、「LOVELESS」でライブは幕を開けた。「お前ら盛り上がっていこうぜ!」というRYUICHIの声と共に始まった「ROSIER」ではJが間奏でマイクスタンドにブレーンバスターをお見舞いし、盛り上がりは早くも最高潮に達する。この二日間をみんなが馴れ合いではなく本気でやっているのが伝わってきたとRYUICHIが振り返り、本気のお返しとばかりに「Dejavu」、真矢のドラムに合わせてハンドクラップが巻き起こった「誓い文」を披露。そして、YOSHIKIのピアノを伴奏に「I for You」をセッションしたのはこの日一番のハイライトでもあった。

 また、SUGIZOのカッティングが心地いいLUNA SEA流ファンクの「BLACK AND BLUE」では、結成29周年を迎えたレジェンドが今持つエネルギーの強さ、さらにその先にある未来を感じることができた。彼らはここからラストスパートと言わんばかりに「PRECIOUS…」、「TONIGHT」を投下。INORANは感情を爆発させ、いよいよ二日間にわたった狂おしき奇跡のフェスも最後の瞬間を迎える。最後はやはり「WISH」で無数の銀テープが舞い、大歓声のなか幕を閉じた。

 アンコールでは初日同様に出演者に加え、会場に来ていたDIR EN GREYの薫(Gt)とShinya(Dr)、急遽3日前にオファーを受け駆けつけた元SIAM SHADEの栄喜を交えて「STORM」の大セッションとなった。憧れの先輩とのセッションに目を輝かせる者や、これまで共演することがなかった者同士が肩を並べる姿は彼らに用意されたご褒美のように思えたと同時に、観る者にとっても贅沢なひとときであった。

 こうして二回目となる『LUNATIC FEST.』は幕を閉じた。前回に比べて、横の繋がりを感じるラインナップであったが、私が見た二日目に焦点を当てれば、どのアーティストにも様々なバックグラウンドや過去がありながら、今をどう生きて、その先の未来を望むものへ変えていくのか、を胸に抱きながらしっかりと前を向いて今を生きていることを感じられる面々であったと思う。それはホストであるLUNA SEAの今を表す最新アルバム『LUV』の持つポジティブな雰囲気にジャンルや世代を飛び越えて引き寄せられたといっても過言ではなく、そんな彼らの未来がより良いものになることを願うとともに、彼らを待つ未来には光が溢れていると確信できる一日であった。(小崎恒平)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む