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ピエール瀧出演『麻雀放浪記2020』公開決定に、東映・多田憲之社長&白石和彌監督が見解を示す

リアルサウンド

19/3/20(水) 12:00

 麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で逮捕されたピエール瀧容疑者が出演する映画『麻雀放浪記2020』が予定通りに4月5日より公開されることが、本日3月20日に発表された。配給会社の東映株式会社は、東映本社にて会見を開き、代表出席者として代表取締役社長の多田憲之、監督の白石和彌が登壇した。

 まず、多田が劇場公開について中止または延期、編集した上での公開、ノーカットの公開など議論が重ねられたが結論に至らず、配給担当である東映の判断で4月5日にノーカットのままで公開するに至ったことを説明。その理由として、「あってはならない罪を犯した一人の出演者のために、作品を待ちわびているお客様に、すでに完成した作品を公開しないという選択肢は取らない」と説明。「劇場での上映は有料であり、かつ鑑賞の意志を持ったお客様が来場し鑑賞するというクローズなメディアでありますので、テレビ放映またはCM等とは性質が異なります。色々な方面から賛否両論の御意見はあると存じますが、本作はノーカットで公開をいたします」と見解を示し、劇場公開時にポスター、及び上映前にテロップで、逮捕されたピエール瀧容疑者が出演していることを明示するとした。

 2013年公開の『凶悪』に始まり通算5本のピエール瀧容疑者が出演している映画監督を務めている白石は、「一緒に映画を作ってきた仲間がこうした犯罪を犯してしまったということは、僕自身大変に驚きましたし、抑えられない憤りを感じました」と心境を吐露。映画の編集や再撮影を覚悟したが、東映との議論の末、公開に踏み切ったという。「禁止薬物に関しては当然反対の立場で、絶対に犯してはならないということもあるのですが、個人が犯した罪と作品そのものには罪はないんじゃないかという気持ちの中、そういった話をしました。プロデューサーの苦労も聞いておりますが、東映さんを始め、各社のみなさんの判断があってこういった形で公開できることを、現状ではほっとしているというのが正直な気持ちです」と映画公開に対しての自身の判断、思いを明かした。

 『麻雀放浪記2020』は、複数の企業が出資する製作委員会方式を取っている。出資企業からは各社意見が異なり、今も議論が続いていると多田が説明した上で、「製作陣の意見も含めてなんとか完全な形での作品を提供するというのが配給会社の責任であろうということで、あえてノーカットで配給することを決断いたしました。公開することに関して強い意志を持っております」と明言。公開スクリーン数は、51スクリーン。公開劇場からは「公開しない」というリアクションは今のところないという。

 この数カ月、出演者の逮捕による映画の公開中止が続いている。そういった中、現在世間では白石監督も発言していた「作品に罪はない」という声が上がっている。このことに対して、多田は「公開が中止や延期、再編集などは、映画会社や製作委員会の判断だと思いますが、東映として、私個人としましても、『ちょっと行き過ぎだな』という印象は持っていました。総力を上げて作ったものをボツにしていいのかというのは、甚だ疑問を持っておりました。事実、東映にあるとは思っていませんでしたので、当事者になった時にかなり私自身も悩みました。株式会社ということ、コンプライアンスということもあり。それでも、映画会社の責任として、公開したいということを社員のみなさんに伝えて、『みなさんを説得しましょう』という形になりました」と述べる。

 この多田の“行き過ぎ”という思いについて記者から質問されると、「他社の判断に対すること、風潮としてになりますが、この10日間で委員会、社内でかなり厳しい判断をしていったのですが、マニュアル的にやることが果たしていいのかという疑問は持っています。社内のコンプライアンスということであれば、社内でもおかしいんじゃないかということもあるかもしれませんが、これは真摯に説得していきたいということと、少々株価が落ちるかなということは覚悟しております」と東映としての方針を示した。

 白石は「作品には罪がない」という思いについて「どんな罪も罪だと思いますし、その中でどういう映画のテーマなのか、罪を犯した者がどのような役のポジションにいてとか、いろいろな状況があると思うんですけど、そのような議論なく一様に社会の中で決まっているかのように蓋をしてしまうようなことはよくないんじゃないかなというのは、個人的には思います。上映できないというのが特例であってほしいというのが、作り手としての願いです」と改めて自身の判断を述べる。

 また白石はピエール瀧容疑者について、「監督として大きく引き上げてくれた一人だと思っていて、そこから僕自身、彼が持っているキャラクターと男っぷりの良さとか、いろんな男惚れをして、ここまで通算5本させていただきました」とこれまでの感謝を伝えた上で、スタッフや容疑者の家族を思い、「今は馬鹿野郎としか言いようがないし、自分の罪を反省して、これからどういう人生を歩んでいくか分からないですが、まずは治療して、人として歩いてほしいなという思いしかない」と複雑な心境を明かした。(取材・文=渡辺彰浩)

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