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くるり岸田、アジカン後藤、KREVA…「ナナロク世代」がフェスを主催する理由

リアルサウンド

13/9/13(金) 15:00

 「ナナロク世代」という言葉がある。文字通り、1976年前後に生まれた人たちのことだ。

 この「ナナロク世代」という言葉、これまで基本的には、Web系企業の起業家や技術者の世代感を表すものとしてよく使われてきた。代表的なところだと、グリー社長・田中良和氏(1977年生まれ)、DeNA取締役CTO川崎修平氏(1976年生まれ)、ミクシィ会長・笠原健治氏(1975年生まれ)、2ch開設者の西村博之氏(1976年生まれ)、はてな社長・近藤淳也氏(1975年生まれ)あたり。

 しかし、実は日本の音楽シーンにおいても「ナナロク世代」の大きな特徴がある。この世代のミュージシャンたちは、他の世代にはない独特の存在感を持ってシーンをサヴァイヴしているのだ。わかりやすい共通項は、自らフェスを主催するミュージシャンが多い、ということ。並べてみると一目瞭然だ。

■くるり・岸田繁(1976年生まれ) 
■ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文(1976年生まれ)
■KREVA(1976年生まれ)
■10-FEET・TAKUMA(1975年生まれ)
■氣志團・綾小路翔
(※綾小路翔は「年齢非公開」ですが、お笑い芸人・まちゃまちゃと同級生ということが広く知られていることもあり、76年生まれにカウントしました)

 特に今年9月はこれら「ミュージシャン主催型のフェス」が毎週末に開催される状況になっている。9月8日にはKREVAによる『908 Festival』が開催された。9月14・15日には氣志團による『氣志團万博2013 房総爆音梁山泊』、そして9月21日にはくるり主催の『京都音楽博覧会2013』が開催。

 10-FEETは7月6日に『京都大作戦2013』を主催、9月21日には同世代の盟友G-FREAK FACTORY が群馬県で開催する地元密着型ロックフェス『GUNMA ROCK FESTIVAL 2013』に出演する。

 ASIAN KUNG-FU GENERATIONは9月14日・15日に『ファン感謝祭』『オールスター感謝祭』と銘打ったデビュー10周年記念ライブを横浜スタジアムで開催。そのため彼らがほぼ毎年開催してきた『NANO-MUGEN FES.』は今年はお休みになったが、その代わり、6月に全国を回るサーキット型のライブイベント『NANO-MUGEN CIRCUIT』を行っている。

 もちろん自らフェスを主催するのは「ナナロク世代」のミュージシャンだけではない。たとえば、90年代末にパンクロックの祭典『AIR JAM』を主催し、長らく続いた休止から2011年と2012年にそれを復活させたHi-STANDARD。たとえば今年15周年を迎えたテクノフェスティバル『WIRE13』のオーガナイザー石野卓球。彼らは現在40代なかばで、「ナナロク世代」から見れば上の世代にあたる。

 それでも、同じく40代後半を迎えた奥田民生(1965年生まれ)、斉藤和義(1966年生まれ)、吉井和哉(1966年生まれ)らのロックミュージシャンらが30代後半だった10年前の活動と、岸田繁や後藤正文ら「ナナロク世代」の今を比べると、そこには如実な違いがあると言っていいだろう。

 その背景にあるのは、音楽カルチャーのここ10年の変化だ。今の日本においては雑誌やTV番組よりもむしろフェスのほうが「音楽カルチャーの見取り図」を示すメディアとしての役割を強く担うようになった。そこにプレイヤーとして参加するだけでなく、自らフェスを主催することでキュレーターとしての役割も果たす、いわば「メディア人」としての才能を持ったミュージシャンが多いのが「ナナロク世代」の特徴なのである。

 特に、洋楽勢を意欲的に出演させてきた『NANO-MUGEN FES.』、細野晴臣や石川さゆりや小田和正などベテランアーティストが出演してきた『京都音楽博覧会』は、ファンに向けて自らのルーツやより豊かな音楽文化を示す意図が明確だ。『908 Festival』も今のヒップホップシーンの見取り図を示すものだし、『京都大作戦』もラウドロックシーンの活性化に大きく寄与してきた。昨年には小泉今日子、近藤真彦から浜崎あゆみ、ゴールデンボンバーまでが出演し、今年はシャ乱Qやhideからももクロマキシマム ザ ホルモンが出演する『氣志團万博』も、ジャンルを超えたスターたちによる化学反応を起こすことを狙ったラインナップだ。

 リリー・フランキー氏が指摘するように(「フェスはただの音楽鑑賞会じゃない」リリー・フランキーが考える“理想のフェス”とは?)、今の日本のフェスというのはいまや単なる「音楽鑑賞会」ではなく、音楽カルチャーの充実や広がりを示すメディア的な機能も担うようになってきた。そこにおいて大きな活躍を見せているのが、彼ら「ナナロク世代」のミュージシャンたちなのである。

 そして、この趨勢は、これからの時代のミュージシャンの「サヴァイヴ術」も暗に示している。飽和する音楽シーンを生き残っていくために、ミュージシャンには音楽家としての才能だけでなく、メディア人としての才能も必要になってきた、ということなのかもしれない。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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