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オマージュだけでは終わらない 『ファイナル・スコア』は新たな“ダイ・ハード映画”の快作だ!

リアルサウンド

19/4/11(木) 20:00

 イギリスで作られたアメリカ映画! あるいはイギリスにも『午後のロードショー』を愛する男がいた! 本作『ファイナル・スコア』(2018年)は、80~90年代ハリウッド産アクション、とりわけアクション映画の古典的傑作『ダイ・ハード』(1988年)への強烈な愛と敬意に溢れている。新たなダイ・ハード映画の快作だ。

 ホラー映画の中にサメ映画や田舎ホラーというジャンルが存在するように、アクション映画にも「ダイ・ハード映画」というジャンルが存在する。悪い連中に乗っ取られた場所で、恐ろしくタフなやつが孤軍奮闘、あの手この手で逆転して、悪を追い詰めていく……ダイ・ハード映画は基本的にこのプロットに従って進行する。あとは乗っ取る場所と、主人公と悪役のキャラクターの違いだ。

 『ダイ・ハード』はブルース・ウィリス演じる刑事ジョン・マクレーンが、ナカトミビルの中で武装集団と戦う。『沈黙の戦艦』(1992年)では元特殊部隊で現コックのスティーヴン・セガールが戦艦で戦い、『サドン・デス』(1995年)ではジャン=クロード・ヴァン・ダムがアイスホッケー会場で戦った。『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)と『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)が揃って公開され、1年に2度ホワイトハウスが乗っ取られる奇跡が発生したが、前者は大統領とSPのバディ・アクション、後者はジェラルド・バトラー演じる狂戦士マイク・バニングと、キャラクターで上手く差をつけていた。直近のダイ・ハード映画では、ロック様ことドウェイン・ジョンソン主演の『スカイスクレイパー』(2018年)が挙げられるだろう。こちらは主人公が義足、おまけに舞台が文字通り炎上中の高層ビルとハードな要素を含みつつ、家族のチームワークに力点を置いて新鮮な仕上がりになっていた。

 では、今回ご紹介する『ファイナル・スコア』はどうだろうか? まず舞台はイギリス、そしてサッカーのスタジアムである。イギリス出身のスコット・マン監督の「アメリカ名物がホワイトハウスなら、うち(イギリス)の名物はフットボールだ!」という叫びが聞こえてくるようだ。劇中で「“サッカー”じゃなくて“フットボール”だ!」と現地人が激怒して人をブン殴る『広島カープ誕生物語』ばりの郷土愛爆裂シーンがあり、イギリス人のフットボールに対する並々ならぬ愛を感じることだろう。そして、主役を務めるのは、出せば映画が安定する男、アクション映画界の筋肉文鎮ことデイヴ・バウティスタ。こちらはアメリカからやってきた元・軍人という安定の役どころで、不器用ながら優しさに溢れた正義漢を熱演している。

 そんなわけで、テロリストが満員のサッカー場を占拠、たまたま事態を知ったバウティスタはテロリストたちとダイ・ハードな戦いを繰り広げることになるのだが、ここで監督のダイ・ハード愛が爆裂。敵の名前をメモして人数を把握、外の警察とのコミュニケーション、ぼやきながらの奇策などなど、オマージュが連打される。「あんたどんだけ『ダイ・ハード』好きなんだよ……」と思っていると、今度はキッチンでナイフ・バトルが始まり、「『沈黙の戦艦』も好きなんだ!?」と驚愕するばかり。さらに、クライマックスはどこか『サドン・デス』を想起させる大爆発が起こる。

 一方、こうしたオマージュだけでは終わらず、家族の絆で泣き&燃えどころはキッチリ押さえ、イギリス風味のブラックジョーク、ところどころで顔を出す凶悪な暴力描写、二転三転するストーリーなど、アクション映画のツボもキッチリ押さえている。試合中のスタジアムという空間ながら、格闘、銃撃戦、バイクチェイスと、多彩なアクションも楽しい。伏線もきちんと回収され、最後の最後は今日日アメリカでも見られない、コテコテのアメリカン・ジョークで〆るのもお見事。105分の上映時間も含め、まるで『午後のロードショー』の当たり回的な安心・安定感を堪能できる。ダイ・ハード映画の新たな快作が誕生した。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『ファイナル・スコア』
4月12日(金) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
出演:デイヴ・バウティスタ、ピアース・ブロスナン、レイ・スティーヴンソン
監督:スコット・マン
脚本:ジョナサン・フランク、デヴィッド・T・リンチ、キース・リンチ
音楽:ジェームズ・エドワード・バーカー、ティム・デスピック
撮影:エミール・トプゾフ
編集:ロバート・ホール
配給:クロックワークス
2018年/イギリス/105分/原題:Final Score/レイティング:R15+
(c)Final Score Film Limited, 2018.
公式サイト:http://klockworx-v.com/finalscore/

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