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『神之塔』は韓国の『HUNTER×HUNTER』か? あざやかな伏線と練られたゲーム

リアルサウンド

20/5/10(日) 17:00

 LINEマンガで配信されている韓国ウェブトゥーン『神之塔』がTVアニメ放映中だ。今回はこの作品の魅力について書いていきたい。

参考:韓国文学の次は韓国ウェブ小説? 『俺だけレベルアップな件』『アデライド』日本上陸の背景

■韓国・日本・アメリカ協働によるアニメの座組

 『神之塔』は韓国のNAVER WEBTOONで2010年に連載が開始され、その後、日本のLINEマンガや英語版のLINE WEBTOONなどでグローバル展開して全世界累計閲覧数45億ビューを突破。

 今回のアニメ化は、アメリカのクランチロールが投資と流通に参加し、日本のテレコムアニメーションフィルムが制作を統括する座組で、2020年4月から韓国、日本、北米で同時にTVアニメが放映・配信開始する、というものだ。

 アニメのOP曲はTWICEやITZY、GOT7などを擁するJYPエンターテインメント所属の男性アイドルStray Kidsが、韓国では韓国語詞、日本では日本語詞、北米版では英語詞でそれぞれ歌っており、この作品の広がり/受容のされ方と軌を一にしている。

 韓国ウェブトゥーン発の映像作品と言えば、「ピッコマ」で読めるユン・テホ『未生』は韓国で社会現象と言えるほどヒットした(日本版のドラマも作られた)し、『恋するアプリ』はNetflixでドラマ化された。LINEマンガで読める『神と一緒に』は映画化されてやはり記録的なヒット作品となり(日本でも『神と共に』というタイトルで公開されたほか、日本では同名作品として日本式の白黒ヨコ描きマンガでリメイクされている)、『女神降臨』はドラマ化が決まりキャスティングに関する噂や議論でネットが盛り上がっている。

 しかし、『神之塔』のようなスキームで映像が作られたのはおそらく初めてのことだろう。ビジネス視点から見ても興味深い事例であることは間違いない。

 また、アニメの第1話が公開されるとアメリカのTwitterリアルタイムトレンド9位に入り、有名コミュニティサイトreddit内の週間アニメランキングで1位となるなど、北米で大きな注目を集めていることからも、これまでのウェブトゥーン原作の映像化とは明らかに異なる現象を引き起こしていると言える。

 ――が、そもそもの作品自体がおもしろい、ということを強調しておきたい。

■『HUNTER×HUNTER』脳を刺激する仕掛けとキャラクター

 『神之塔』は、塔の頂上に登ると願いが叶えられる――すべてを手に入れられる。そんな塔の頂上を目指す少女ラヘルによって、暗闇に閉じ込められて生きてきた人生から救われたと信じる少年・夜を主人公にしたアクションファンタジー作品だ。

 塔を登っていくためには『HUNTER×HUNTER』のハンター試験のようにさまざまなテストが各フロアで課せられ、それをクリアできなければならない。合格できない者は脱落し、それ以上、上には登れない存在として滞留するしかない。

 そんな塔の外部からやってきた例外的な「非選別者」――塔の内部で育った者たちからは警戒される存在――の夜は、塔で出会った仲間たち、そしてラヘルとともに塔の頂上を目指す。

 この塔は、階層ごとにがらりと様相を変える。建物の中なのに自然があったりするのは当たり前で、風景が階ごとに変わる(『魔界塔士Sa・Ga』みたい、と言っても若い人にはさっぱり通じないだろうが……)。

 その場所/地形が試験の前提条件になる。そしてそこで用意されている仕掛け/ルールをもとに、凝った試験が行われる。

 単純に「戦って倒せ」というものもあれば、知恵を働かせないと解けないものもあるし、チーム戦もある。階が進むたびに違う仕掛けやルールには「あ、そういうことを描くためのルール/システムだったのね!」と驚かされることになる。

 そうした試験を、夜の盟友となるクールで頭の切れるクン(『HUNTER×HUNTER』で言うとキルアっぽさがある)やケンカっ早いワニのラークといった魅力的なキャラクターたちが時にわーわー言い、ときに裏の顔を見せながら進めていく。

 そこにさらに謎に満ちた「塔の王ザハード」の姫同士の勢力争い、意外な人物の裏切り、非選別者である「夜」に秘められた謎……といったものが絡んでくる。

 とにかく話がめっぽうおもしろく、謎に次ぐ謎、張り巡らされた伏線が魅力だ――無料では23時間に1話しか読めず、一度読んだ話数は3日しか読み返せないというLINEマンガの仕様では気軽に読み返せないことが地獄に感じられるくらいに! だ。

 ただしキャラクターが多く、伏線も複雑なのであるていど一気読みすることをオススメしたい。読み返せる機会があるなら一から読み直すと「こんなところから伏線張ってたのかよ」と驚くことが無数にある(LINEマンガではよく冒頭50話無料とか100話無料のキャンペーンをやっている)。

 もちろん、読み返すと「あれ? ここ、これじゃまずくない?」と思う部分もないわけではなく、コメント欄で読者から突っ込まれていたりするのだが、なんとそういう箇所は今回のアニメでちゃんと補足、修正されている!!! 

 そういう意味でも今こそウェブトゥーン版とアニメ版を見比べながら楽しみたいところなのだが、この作品、もう10年も連載しているだけあってとにかく長い! アニメではおそらく物語の入り口のところまでしか描けないだろう。

 ぜひウェブトゥーン版で、アニメで放映される先の部分まで読み進めてほしい。ネタバレを避けて言うのは難しいが、衝撃の裏切りの「あと」がとにかくおもしろくなってくるからだ。(飯田一史)

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