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桜井日奈子×箭内夢菜が『殺さない彼と死なない彼女』で語りつなぐ「未来のはなし」

リアルサウンド

19/11/14(木) 16:00

 SNSに投稿した4コマ漫画が話題となった漫画家・世紀末の代表作を実写映画化した『殺さない彼と死なない彼女』が11月15日より公開される。

 原作では、「きゃぴ子」「君が代ちゃん」「殺さない彼と死なない彼女」と3つの短編で構成された恋愛ストーリーを、小林啓一監督が一本の映画として描き上げた。リアルサウンド映画部では、一つの物語としてつなぎ合わせる重要な役を演じた鹿野なな役の桜井日奈子と大和撫子役(原作では君が代)の箭内夢菜にインタビューを行い、互いの芝居や2人が演じたキャラクターと向き合って受けた影響について語ってもらった。

【写真】桜井日奈子と箭内夢菜アザーカット

■撫子みたいに告白できる?

――個性的だけど、愛らしいキャラクターがたくさん登場する作品でした。お二人はそれぞれ演じたキャラクターに何を感じていました?

桜井日奈子(以下、桜井):鹿野は「死にたい」が口癖の女の子で、リストカットの常習者ですが、誰かが死んじゃったり、傷ついたりすることを悲しむ心優しい女の子です。悲しい時にはワーンと泣いて、笑いたい時に笑って、食べ物はムシャムシャ食べちゃうような動物的な部分が可愛らしいなと思ったので、それをどう表現できるか一番に考えました。

箭内夢菜(以下、箭内):撫子は八千代くん(ゆうたろう)のことが心から大好きで、告白が日常になっている、一途な女の子です。初めてデートに行けるとなったら髪や服、おしゃれを頑張って、八千代くんが隣に居てドキドキするけど、ちょっとでも可愛いって思ってもらえるように努力する。そのすごく乙女なところが可愛いなと思っていました。

桜井:私、あの告白シリーズがすごく好きで……(笑)。

――わかります(笑)。

桜井:もう、見た人全員好きになるよ! っていうくらいめちゃくちゃ可愛くて。

箭内:雪の日とか、昇降口だったり、グラウンドだったり、色んな場所で何パターンも撮りました。ちょっと真剣に「好き」って言ってみたり、笑顔で優しく「好き」って言ってみたり、たくさんやりました。

桜井:はぁ良かった……(笑)。

箭内:恥ずかしい(笑)。

――告白のパターンを考えるの大変ではありませんでした?

箭内:うーん……でもあんまり考えてはなかったです。素直にその場所にいたらどんな風に言うんだろうって、結構直感でした。

――自分がこのキャラクターを演じたことで影響を受けた部分はありますか?

箭内:私は撫子みたいにストレートに言わないタイプで、性格が反対でした。素直にまっすぐ自分の気持ちを伝えることがなかったので、勉強になりましたし、最近は自分の気持ちを言えるようになりました。

桜井:撫子って見ていて眩しいくらい可愛かった(笑)。それは夢菜ちゃんの可愛らしさもあるし、今、夢菜ちゃんが言った「感情をちゃんと言葉にする」ということが、その可愛らしさをより引き立てたようにも思います。なかなか「好き!」って言えないから……。

――撫子みたいにあんなに笑顔で素直に「好き」って伝えるのは、難しいですよね(笑)。

桜井:言えないです、絶対言えない(笑)。

箭内:ふふふ(笑)。なかなかいないと思いますね。

桜井:撫子は尊いです(笑)。

■相手役を演じた間宮祥太朗とゆうたろう

――鹿野については、桜井さん自身共感できる部分はありましたか?

桜井:私も「これを言ったらどうなるんだろう?」とか色々考えてしまうから、素直に話すことは勇気がいりますし、そういう意味では鹿野に近かったと思うんです。頭の中で一回シミュレーションしてみて、「あ、やっぱり言えないな、やめよう」って、私だったら我慢しちゃうかもしれないと思います。思うことがあっても、飲み込むみたいなところがあるので。

――鹿野を演じている時に、気持ちを素直に吐き出す、心地良さを感じたりすることはありました?

桜井:最後だけはそうでしたね。小坂(間宮祥太朗)と夢の中で会うシーンは、初めてお互いが素直になれて、本当の思いがわかるシーンなので、その思いが溢れてしまって。リハーサルの段階から高まりすぎてしまって、本番に涙が枯れました(笑)。本当の気持ちを言葉にする時って、こんなに勇気がいるんだ、こんなに震えるんだと感じました。

――お二人が共演した間宮祥太朗さんとゆうたろうさんはどんな方でしたか。

箭内:いろんな告白のシーンはゆうたろうさんに会う前に撮っていたのですが、お会いした時に私が想像していた八千代くんのままだったので、すごくフィットしているなと感じました。

桜井:ゆうたろうさんと何か話した? 私、撮影中はあまり会ってなくて、どんな人なんだろうって気になってたんだ。

箭内:インスタとかテレビで見るゆうたろうさんってすごく可愛らしいじゃないですか。だから女の子寄りの方なのかなと思っていたら、自分の考え方や言葉を持っていて、男らしいんです。難しい言葉を使っていたり、八千代くんとゆうたろうさんは実は共通点が多いんじゃないかなと私は思いました。毎回フラれる時もすごいシンプルに「嫌だよ」とか言われるんですけど(笑)、撫子としてとても演じやすかったです。

――間宮さんの印象はどうでしたか?

桜井:間宮さんは甘いものが苦手という話をしていて、ある日、自動販売機で一番甘ったるそうな飲み物を私に買ってくださって。「なんでこれなんですか?」って聞いたら、それは間宮さんなりの楽しいノリでそうしてくださっていて(笑)。たくさんは話してないんですが、そうやって居心地の良い空気感を作ってくださるのを見て、「え! 間宮さん素敵!」と思いました(笑)。この現場は、色んなパターン試すために長回しで何テイクも重ねるのが当たり前という環境だったんですが、間宮さんにリードしていただいて、鹿野の魅力を引き出してもらいました。

■物語で2人が交わす、「未来の話」

――別軸で進んでいた鹿野と撫子のストーリーが繋がる展開にうるっときました。

桜井:鹿野が「未来の話をしましょう」ってさらっと言えたのはすごい変化だと思うんです。それは、小坂との出会いがあったからで、間違いなく二人が出会ったことに意味があったんだというのが、あのセリフだと思っています。二人の出会いがあったからこそ、八千代と撫子があって。原作は三つそれぞれストーリーが別なのに、映画では小林監督が繋いで脚本を書かれていて感動しました。

箭内:私もその繋がりにすごく感動しました。監督が、3組のパートから、ちょっとずつキーワードを出していくと最終的には全部繋がるんだよって教えてくださった時は鳥肌が立ちました。「未来の話をしましょう」というのは、この作品の中ですごく大切なセリフだと思います。

――本作で主軸として描かれる鹿野と小坂の物語について、桜井さんが演じて感じたことを教えてください。

桜井:小坂と鹿野は、「死ね」とか「殺すぞ」とか、すごく暴力的な言葉を使いますが、その言葉の奥にはちゃんと優しさや愛があると感じられるんです。クラスの中ではそれぞれ孤立しているけど、ハチの埋葬をしている鹿野を面白いって思ってくれる小坂がいて、それってどんな鹿野でも受け入れてくれるということだと思うんです。繕わなくてもいい、本当の自分を受け入れてくれる人って、たくさんはいなくていいんだなと思ってもらえるような関係がいいなと感じました。

――きゃぴ子(堀田真由)と地味子(恒松祐里)、撫子と八千代、鹿野と小坂、みんなに共通する関係でもありますね。

桜井:そうですね。鹿野にとっては小坂で、撫子にとっては八千代くんであるように、たくさんはいらない、一人いれば十分なんだなと考えさせられました。そういう人がいれば、どこに行くとか何をするというよりも、その人といることが日常を輝かせるんだなって。原作でも、小坂と出会う前と後では、鹿野の目の色が違うんです。小坂と出会ってからの鹿野はすごくイキイキしているのが絵からわかって、それは演じる上で一つヒントになりました。心を許せる人といる時間ってこんなにも景色が鮮やかなんだなと感じながら芝居をしたので、「君の隣で、世界が変わる。」というキャッチコピーは、本当にその通りだなと思います。

(取材・文・写真=大和田茉椰)

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