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ゴッホの評価を引き上げた立役者ヘレーネの審美眼に着目! 『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』開幕

ぴあ

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のプロヴァンスの田舎道》(1890)クレラー=ミュラー美術館蔵

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世界最大のゴッホコレクターとして知られているヘレーネ・クレラー=ミュラー。彼女が収集したゴッホ作品を軸に、近代絵画も展示する展覧会『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』が、東京都美術館で9月18日(土)に開幕した。色に溢れたゴッホの作品が生まれるまでの課程をつぶさにたどる展覧会だ。

実業家の家に生まれたヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939)は鉄鋼業と海運業で財を成した夫、アントンの支えのもと、1907年より近代絵画の収集を開始。生涯に11000点を超える作品を収集した。

その過程で彼女はゴッホの作品に出会う。当時、ゴッホの作品は評価の途上であったものの、作品のなかに深い精神性や人間性を感じとり、強く心を惹かれたヘレーネは積極的に収集を開始。世界最大のゴッホコレクターとなっていった。そして1938年には自身の名を冠したクレラー=ミュラー美術館を開館。初代館長に就任する。彼女の熱心な収集と展示によって、多くの人たちがゴッホに関心を寄せることとなり、現在まで続くゴッホ人気が作り上げられた。ヘレーネはゴッホの評価を引き上げた立役者でもあるのだ。

展示風景

本展は、ヘレーネが収集したコレクションよりゴッホの絵画28点と素描20点、そしてヘレーネが収集したほかの画家による作品20点を展示する。加えて世界最大のゴッホコレクションを持つアムステルダムのファン・ゴッホ美術館の4点も紹介。4部構成の展示を見ていくことで、ヘレーネの審美眼や当時の美術の流れも俯瞰できるようになっている。

第1章「芸術に魅せられて」は、ヘレーネの肖像と、彼女のブレーンとなった美術批評家で美術教師のヘンク・ブレマーの肖像を展示する。ブレマーは、作品を近くで鑑賞する機会をできるだけ作るため、生徒たちに美術作品の収集を推奨、ヘレーネが絵画収集を始めるきっかけを作った。

フローリス・フェルステル《ヘレーネ・クレラー=ミュラーの肖像》(1910) クレラー・ミュラー美術館蔵

第2章「ヘレーネの愛した芸術家たち」は、彼女が収集した絵画作品を展示する。《それは遠くからやって来る》は、ヘレーネが初めて収集した作品の一つ。この作品の購入をきっかけに、ヘレーネはミレーやルノワール、スーラにルドン、トーロップにアンソール、ブラックにモンドリアンなど、ジャンルの枠を越え、幅広く画家の作品を精力的に収集していった。

パウル・ヨセフ・コンスタンティン・ハブリエル《それは遠くからやって来る》(1886頃) クレラー・ミュラー美術館蔵
オディロン・ルドン《キュクロプス》(1914頃)  クレラー・ミュラー美術館蔵

そして、第3章「ファン・ゴッホを収集する」では、27歳で画家になることを志したゴッホのスタイルを時系列でたどっていく。対象を真摯に描いたオランダ時代の素描や油彩は、ひたむきに描く農民や街の人々をモデルに描いている。

第3章 展示風景より オランダ時代のゴッホの素描 クレラー・ミュラー美術館蔵
フィンセント・ファン・ゴッホ《じゃがいもを食べる人々》(1885)クレラー・ミュラー美術館蔵

第3章「ファン・ゴッホを収集する」の途中、ゴッホのオランダ時代とパリ時代の合間に挟まれるように第4章の「ファン・ゴッホ美術館のファン・ゴッホ家コレクション」の作品4点が展示されている。コンパクトな章ながら《黄色い家(通り)》など鮮やかな色彩の作品は、それまでの色彩に抑制をきかせていたゴッホの作品とは明らかに異なっている。

  これらはゴッホが弟のテオのすすめでパリにやってきて以降に描かれたもの。印象派や新印象派の画家たちや浮世絵版画と出会い、あたらしい表現を模索し始めたゴッホは、またたく間に独自の色彩表現を身につけたのだ。

フィンセント・ファン・ゴッホ《黄色い家(通り)》(1888) ファン・ゴッホ美術館蔵
フィンセント・ファン・ゴッホ《サント=マリ=ドラ=メールの海景》(1888) ファン・ゴッホ美術館蔵

展覧会の順路は再び第3章に戻り、だれもが思い浮かべる色鮮やかで激しい筆致の作品が並ぶフィナーレへ到達する。

フィンセント・ファン・ゴッホ《サン=レミの療養院の庭》(1889)クレラー=ミュラー美術館蔵
フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》(1888)クレラー=ミュラー美術館蔵
フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のプロヴァンスの田舎道》(1890)クレラー=ミュラー美術館蔵

《夜のプロヴァンスの田舎道》は、サン=レミ時代のゴッホの代表作。南仏滞在の最後に描かれたものと考えられている本作は、日本では16年ぶりの公開となる。

合計52点のゴッホ作品を一堂に鑑賞でき、ヘレーネ・クレラー=ミュラーの足跡にも触れられる貴重な展覧会。この機会にしっかりと鑑賞しておこう。

【開催情報】
『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』
9月18日(土)~12月12日(日)、東京都美術館にて開催
https://gogh-2021.jp/

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