Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

甲斐翔真「誰に感情移入しても感動できる」、ミュージカル『October Sky』ゲネプロ&初日前会見レポート

ぴあ

ミュージカル『October Sky』ゲネプロより 撮影:NAITO

続きを読む

ミュージカル『October Sky─遠い空の向こうに─』が、10月6日に東京・Bunkamura シアターコクーンで開幕。これに先立ち、初日前会見とゲネプロが行われた。

元NASAの技術者ホーマー・H・ヒッカム・Jr.の自伝小説『ロケットボーイズ』を原作に、ジョー・ジョンストン監督がメガホンを握った青春映画(1999年公開)をミュージカル化した本作。米シカゴとサンディエゴにおける2度のトライアウト公演を経て、日本初上演となる今回の演出には板垣恭一が起用された。

劇中では、米ウェストバージニア州の炭鉱町コールウッドを舞台に、厳しい現実に直面しながらもロケットに夢を賭ける高校生の奮闘や彼らを取り巻く人間模様が展開。人工衛星スプートニクを見上げて「いつかロケットを打ち上げたい」と夢見る主人公ホーマーを甲斐翔真が演じ、ロケット制作を決心する「星を見上げて」のラストでは昂った気持ちを伸びやかな高音に乗せ、客席を魅了した。

その悪友で義父の暴力に苦しむロイには、阿部顕嵐。明るく抜群のユーモアセンスを発揮するオデルには井澤巧麻、いじめられっ子ながら優れた科学の知識で研究に貢献するクエンティンには福崎那由他が扮し、4人でロケットづくりに励むように。打ち上げカウントダウンが楽しい「うまくいけば」や、彼らを応援する科学の教師ミス・ライリー(夢咲ねね)と繰り広げる「言われた通りに」で制作に邁進する様子をコミカルに立ち上げる。

高校卒業後、多くが炭鉱夫になる中で無謀な目標を立てた“ロケットボーイズ”に対する周囲の反応は冷ややかだ。特に炭鉱を束ねるホーマーの父ジョン(栗原英雄)は、自分と異なる人生を歩もうとする息子の理解に苦しむ。サイエンスフェア全国大会の優勝を経て進学するか、既定路線の炭鉱夫になるか──。揺れ動くホーマーの前に立ちはだかる現実のやるせなさ、行き場のない悲しみや虚しさを、甲斐は歌声や表情ににじませた。

ボーイズの夢はいつしか、寂れた炭鉱町の希望となっていく。家族を愛し、ホーマーの夢を守ろうとする母エルシー(朴璐美)は「地に足つけて」で息子の背中を押す一方で、ミス・ライリーやホーマーの恋人ドロシー(中村麗乃)と歌う2幕冒頭の「最後のキス」で息子と離れがたい気持ちも覗かせ、観客に時代を超えても共通する親心を届けた。

ゲネプロ前に行われた初日前会見で、稽古を経てどういうカンパニーになったか問われた座長の甲斐は、演出を手がけた板垣の「僕の演出する舞台には主役・脇役・アンサンブルという隔たりはなく、全員が主役で見せ場を持っている」という言葉を紹介。その上で「まさにおっしゃる通り、主役の集まりみたいなカンパニーになりました」「誰に感情移入しても感動できるようになっています」と手応えを語る。

開幕を控えた想いを「ロケットを打ち上げる前と同じような気持ち」と形容した阿部。好きなシーンを聞かれると、すかさず「スプートニクを見上げる場面でしょうか」と即答する。「炭鉱町のみんなで同じものを見上げていると、ステージ上の時が止まったような感覚になるんですよね。観に来てくださるお客さんともその時間を共有できればと思っています」と笑顔を見せた。

同じ質問に対して、井澤はオープニングを飾るM1「炭鉱へ」を挙げる。「幕が上がり、後ろのセットが開いて炭鉱夫たちが登場する一瞬の迫力で1950年代のアメリカにタイムスリップできます」と胸を張る。福崎も「ボーイズが打ち上げを成功させようと決意を固めるシーンですね」と続き、「いじめられっ子のクエンティンがもらう勇気を、皆さんにお裾分けできたら」と意気込む。

中村は「顔合わせから今日まですごく濃い毎日を過ごしました。稽古場で学んだことを活かして精一杯がんばっていきたい」とコメント。夢咲は「原作映画のように、ロケットボーイズの“光”になれるような存在になりたいと思っていたのですが……4人はすでにまぶしく輝いていました」と笑い、「エネルギッシュでパワフルな彼らに負けないよう突き進んでいきたい」と抱負を述べる。

作品の魅力を聞かれた栗原は「コールウッドの街には現代と通じる閉塞感が漂っており、そこを打破しようという想いはお客様と共有できるのではないか」とまっすぐ答える。朴も「夢物語でなく“実話”であることが魅力」と続き、「個があって、家族があって、街があって、国があって、星がある。誰にも当てはまる普遍的な物語です。必死に生きた先人たちがいるから、いまの私たちがいる。そういったことを強く感じられる作品ではないでしょうか」と問いかけ、会見を結んだ。

上演時間は約160分(休憩含む2幕)。東京公演は10月24日(日)まで。その後、11月11日(木)~14日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールへ巡演する。チケット販売中。

取材・文:岡山朋代 撮影:NAITO

アプリで読む