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特集:応援せずにはいられない! 映画界の“新たな才能“を探せ!

映像制作における技術も大きく進歩し、You Tubeや配信サービスなどの普及で、映像作品はより身近で手軽になった。そんなデジタルで作って簡単に配信することが可能なこの世界で、それでも仲間と共に映画をつくり、自身の伝えたい想いを発信する若手監督たちがいる。

その中でも編集部は、是枝裕和監督も惚れ込んだ『泣く子はいねぇが』の佐藤快磨監督という新たな才能に注目! 知れば知るほど、応援せずにはいられない、佐藤監督の活躍に大いに期待したい。

11月20日(金)公開
『泣く子はいねぇが』公式サイト/SNS

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(C) 2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

第3回:“日本映画というのは豊かなんだな”と思える存在。PFF荒木啓子ディレクターが語る佐藤快磨監督

佐藤快磨監督による11月20日(金)公開映画『泣く子はいねぇが』  (C) 2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督をはじめ、山中瑶子監督、藤井道人監督、松本花奈監督ら映画界の新たな才能が登場しているが、中でも間もなく新作『泣く子はいねぇが』が公開になる佐藤快磨(さとうたくま)監督に注目が集まっている。

佐藤監督は2014年に『ガンバレとかうるせぇ』が「ぴあフィルムフェスティバル」のコンペティション部門“PFFアワード”に入選。映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)と観客賞を受賞し、釜山国際映画祭のコンペティション部門でも上映された。その後も着実に創作を続け、5年の歳月を投じて渾身の新作『泣く子はいねぇが』が完成。本作はすでにサン・セバスティアン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞するなど高評価を集めており、日本での凱旋公開を控えている状況だ。

多くの若い映画人たちが続々と頭角を現す中、佐藤快磨はなぜ注目を集めるのか? 新作『泣く子はいねぇが』の注目ポイントは? 先に紹介した「ぴあフィルムフェスティバル』の荒木啓子ディレクターに話を聞いた。

1:佐藤快磨監督には“つくりたい映画”が明確にある

佐藤監督の『ガンバレとかうるせぇ』は、サッカーのシーンの出てこないサッカー映画でした。勇気ありますよね。サッカー部の振るわない男子と女子マネージャーが主人公なんですけど、ふたりは恋愛関係なわけでもなく、それでも最後まで話をもっていける。この監督は“何かがある人”だなと。

『ガンバレとかうるせぇ』 
PFFアワード2014で映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)と観客賞をW受賞した佐藤快磨監督(左)

今回、改めて過去作品を全て拝見したのですが、佐藤監督はすごいヒットメイカーになろうとか、大物映画監督になろうとかの将来図で映画に向かうのではなく、ただ自分の描きたい人達、描きたい日常が明確にあるんだと思うんです。彼が描いてきたのは不器用な人。その題材をずっと追いかけ続けていったら、やがて独自ですごい監督になる気がしますし、佐藤監督みたいな人がいることで“日本映画というのは豊かなんだな”と示せるのではないかなと。

ご本人は、静かで上品で、思索的なんだけどとっても口下手。でも、静かにコツコツと創作を続けている人です。ただ、彼は自分が監督としてどこに向かおうとするのかをまだ探してる段階だと思うんです。職業として不安定な現代の映画監督は、自分は何がやりたいのか、自分はどの道を歩くのかを自分で掴み取った人が残っていく。その“掴み取る”力のある一人だと思います。

だから彼の個性がこれからどこに向かうのか、すごく楽しみですよね。

PFFの荒木啓子ディレクター

2:『泣く子はいねぇが』を観ると、誰かと語り合いたくなる

『泣く子はいねぇが』を観ると、ここに出てきた登場人物について考えたくなる。それがこの映画の一番すごいところでもあるし、そういう創り方をされている。恐ろしいほどの言葉足らずで、でも、ここにいる登場人物が本当に生きて、切実に悩んでいるような存在感がある。ここまで喋らず説明せず、しかし、多くの俳優がその人を生きようとしているのは、きっと素晴らしい脚本と、監督がよく知る土地があったからなのだろうと思います。

(C) 2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

この映画は観終わってすぐに感想が出てくるような映画じゃなくて、観終わってもずっと考えたくなる映画。だから、短期間で爆発的にヒットする映画ではなくて、静かにロングラン上映されることで、静かに浸透していくのでは。そういう映画があってもいいと私は思うんですよ。ある劇場に行ったらずっと同じ映画が何年も上映され続けているので、全国から人が集まってくる。イギリスには実際、何年もデニス・ホッパー(監督・主演)の『ラストムービー』を毎夜上映してる映画館がありました。『泣く子はいねぇが』も映画館主が“絶対にこの映画を見せ続けるぞ”って思える1本になり得るパーソナルな訴求力が高いと思います。

最近ますます「配給」という言葉が気になるのですが、映画を映画館に“配給”するのではなく、映画館が映画を“紹介する”という感覚が更に高まると、またひとつ映画のありかたが、変わる気がするのです。

余りにも短いサイクルで上映作品が代わっていく現在、映画の中の人々について語り合える場が時間をかけてできてくると、すごく面白いことになると思います。

(C) 2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

3:若くて、才能のある人材はたくさんいる。映画界の今後

若くて、良い人材は本当にたくさんいるんですよ! ただ、“映画監督”という存在の目指すモデルがなくなってきている、という問題はあると思います。でも、それは若い人ではなくて、大人の側の責任なんですよね。

映画監督は知力体力がなければ続いていかない。自分が傷つかない場所に逃げ込みたいのをぐっと耐えて、そこから飛び出して傷ついたり、恥ずかしい悔しい想いが創作を膨らませる。だからこそ、その体験をどうやって若い人に積んでもらうかは映画界、PFFや映画祭も含め、大人の課題だと思っています。

若い才能が勝手に世に出てくる、としても、面白い映画を生み出すための、そこから先の様々なサポートは必要。そのためには大人の力が必要なんです。だから、自分が名前を知らない若い監督をプロデュースするプロデューサーがもっと出るのは必然で、それぞれの場所で、それぞれの大人が若い人のために出来ることをするのが、これからの映画のための必須事項です。

PFF含め映画祭は、さまざまな孤独な魂から生まれた映画の最初の一歩を紹介し、感応者と遭遇させたい場所です。『泣く子はいねぇが』の情けない主人公たすくも、人口減のすすむ全国市町村も、廃れていく伝統行事も、ひとごとではない現実。それを映画にした佐藤監督の長編デビュー作品は、堂々とした普遍的な映画で、新人離れしているかも、と今、改めて思います。多くの観客と遭遇して欲しいですね!

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