2019年度版『フル・モンティ』ということだが、「男がダンスする素晴らしさ」という意味では、同じイギリス映画『パレードへようこそ』とも繋がっている。そこには「マッチョネス」への疑義がある。鉄鋼業や炭鉱の凋落、同性愛者の差別といったはっきりした問題を抱えた前二作と違い、シンクロナイズドスイミングを行う6人は「なんとなく」居場所がなく、遣り甲斐がない。そこが現代的でいい。 だんだんと凋落していった島国という共通点を持つ日本も、他人事ではいられないだろう。その閉塞感を打ち砕くのが、中年男たちが水中で開かせる花だったという展開には、じんわりと笑わせられながら泣かされ、我が身を振り返らせる現代への批評がある。