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中国版“プデュ”新シリーズ『青春有你2』、人気上昇中の理由 BLACKPINK LISAらの参加など、4つのポイントから解説

リアルサウンド

20/5/9(土) 12:00

 2016年に韓国で放送され社会現象を起こしたオーディション番組『PRODUCE 101』(以下、プデュ)。日本でも昨年末に『PRODUCE 101 JAPAN』が放送され反響を呼んだが、中国でも2018年頃から“プデュ”のフォーマットを踏襲した番組が数多く制作され、人気を博している。なかでも今年3月から中国三大動画配信サイトの一つ、iQIYI(愛奇芸)で毎週木・土曜の日本時間21時から配信中のガールズオーディション番組『青春有你2(Youth With You 2)』は、英語、韓国語、タイ語など多言語字幕版も配信され、日本でも注目度が高まっている。

(関連:UNINE、Rocket Girls 101、R1SEら中国でも“プデュ”シリーズがブームに アイドル像や楽曲にも変化

 同番組は2018年に『偶像練習生(Idol Producer)』というタイトルでスタートし、中国のアイドル史に残る国民的ボーイズグループ・NINE PERCENTを輩出(現在は解散)。2019年の2ndシーズンで『青春有你(Youth With You)』に改名し、最新シーズンにあたる『青春有你2』はiQIYIとしてはシリーズ3作目にして初の女子版となる。デビュー候補の練習生は中国内外から選抜された109人。4カ月間の合宿生活を通してトレーニングを積み、視聴者投票により9人のメンバーを決定する。

■見どころPOINT 1:番組をリードする豪華トレーナー陣の魅力
 “中国版プデュ”と呼ばれる番組に共通する大きな見どころの一つに、練習生を指導する講師陣の豪華さが挙げられるだろう。特に『青春有你2』は、BLACKPINKのLISAがダンス講師として出演し、『偶像練習生』が生んだ中国のトップスター・蔡徐坤(ツァイ・シュークン)が“青春制作人代表”としてメインMCを務める。練習生にとって憧れのロールモデルであると同時に一番の理解者でもある二人の存在感は絶大で、テクニック面では一人ひとり細部にいたるまで厳しく指導ながらレベルアップに貢献し、悩みを抱えている者がいれば自らの経験をシェアしてそっと寄り添う。長い下積み期間と熾烈なデビュー争いをくぐりぬけ、重圧と戦いながら今現在トップに立っている二人のアドバイスは、何よりも説得力があり、心を揺さぶられる。また、練習生を評価する際のシャープな洞察力もすばらしく、ともするとメンターが“推し”になってしまいそうなほど魅力的なのだ。

■見どころPOINT 2:“X”というコンセプトが伝えるメッセージ
 『青春有你2』のキーワードは、“X”=「未知数」「無限大」だ。同番組は「女性を定義せず、ガールズグループを定義しない」とし、視聴者に「“X”に対する限りない想像を広げ、2020年を代表するグループを選んでください」と語りかける。

 練習生も、アイドルデビューを目指してトレーニングを積んできた者はもちろん、アフロヘアーのボーカリスト・張鈺(チャン・ユエ)、ムーラン似で話題の寡黙な“チャイナガール”陳珏(チェン・ユエ)、SNSで1000万フォロワーを誇るインフルエンサー・林小宅(リン・シャオジァイ)、マイクを握れば名言が飛び出す圧倒的ディーバ感・上官喜愛(シャングァン・シーアイ)……というように、さまざまなバックグラウンドを持つ個性的な面々が集まっている。

 番組内ではしばしば「女性らしくない」「スタイルがよくない」「若くない」など、いわゆる大衆が求める“女子アイドル像”にふさわしくないとレッテルを貼られてきた女性たちがフォーカスされ、彼女たちが「あるべき論」を覆していく様子を通して、多様性の尊重や自己肯定感を高めるメッセージが発信されている。

 そして、そのコンセプトが最も象徴的に現れているのが主題歌「YES! OK!」のパフォーマンスだ。センターを務める刘雨昕(リュー・ユーシン/XIN Liu)は、スカートではなくショートパンツを履いて生き生きと踊ってみせる。もちろん、これまでも中性的なメンバーを有するガールズグループは多数存在したが、“プデュ”系のオーディション番組で制服ルックにパンツという選択肢があること自体も斬新で、過去に中国のオーディション番組を見たことがない層にまで番組の存在が知られるきっかけになった。

 「YES! OK!」は曲名からも伝わってくるように、ありのままの自分を肯定するポジティブなメッセージが全面に押し出されている点もこれまでのシリーズと一線を画している。もちろん、お決まりの「Pick Me」というキーフレーズは入ってくるが、続く言葉は「和我一起吧(Come with me)」。「僕をトップに連れてって」でも「君は今日から私のもの」でもなく、誰の手をとるのかを相手に委ねたうえで「一緒に行こう」といざなう。また、毎回の順位発表式の後も「国民プロデューサー様、よろしくお願いします」と頭を下げる代わりに、「和我一起吧」と手を差し伸べ、ともに未来を描く“仲間”に語りかけるようなスタンスを一貫しているのが興味深い。

■見どころPOINT 3:視聴者を勇気づける“エンパワーメント性”の高さ
 この番組が練習生に課すチャレンジは、自分を知り、自分のスタイルで輝くことだ。技術はもちろん、仲間と絆を深めながら内面的にも成熟したエンターテイナーを育成することに重きを置いている。その過程での彼女たちの行動や発せられる言葉には視聴者をエンパワーメントするメッセージがたくさんつまっており、視聴者の中には練習生に自分の姿を重ね合わせ、希望を託すような気持ちで応援している女性も多いようだ。

 なかでも話題になったのが、マレーシア出身の練習生・蔡卓宜(ツァイ・ズオイー/Joey Chua)のコメントだ。彼女は自身の経歴が理由で、番組出演に対しネット上で悪質な誹謗中傷を受けた。これはガールズアイドルと処女性についての議論に関係することなのだが、番組内でその一件に関する思いを涙ながらに語り「だから自分を愛し、自分らしく、勇気を持って前に進んでいこう」と力強く拳を振りかざす。ほかの練習生や視聴者の涙を誘ったこのシーンはネット上でも拡散され、国境を超えて多くの女性を勇気づけた。

■見どころPOINT 4:膨大な放送量とドラマチックな演出
 韓中日の“プデュ”系番組の中で、演出面において最もゴージャスなのが中国版だ。ミッションステージでは楽曲にあわせた照明、背景映像、舞台装置、撮影方法を駆使し、練習生の魅力を最大限引き出している。さらに、それぞれのパフォーマンスが始まる前には別撮りで編集された各チームのコンセプチュアルなイントロムービーが挿入され、視聴者の高揚感を助長。パフォーマンスにスローモーションを多用するところも“中国プデュ”ならではで、シンクロ率や実際のスキルが正確に伝わりづらいという短所はありつつも、ドラマチックに見せる力はピカイチだ。

 また、各話約2時間、週2回配信と放送量が膨大で、レベル分けテストも3話にわたって配信するなど本編でたっぷり公開。ステージ評価以外にも別チームの課題曲に挑戦し、練習室でパフォーマンスを撮影する「ミニテスト」が用意されるなど、それぞれが自身の強みや弱みを理解し、パフォーマンスでアピールする機会がより多く与えられているような印象を受ける。

 例えば、言葉の壁を乗り越えながら、ひた向きに練習に取り組む姿が評価された日本人練習生・七穂(稲垣七穂)も、このミニテストで新境地を開拓。ステージに立つ姿は練習生たちから「天使」「仙女」と称され、バラードを中心としたボーカルで力を発揮していたが、「MAMA-Chinese Version」でガラッとイメージチェンジして“ベスト練習生”に選ばれるなど、驚きの成長を遂げた。残念ながら現在は脱落してしまったが、今後の活躍に期待したい。

 なお、今年はTencent Videoにて元EXOのLUHANとTAO、f(x)のVICTORIAが講師として参加する『創造營2020』、YOUKUではEXOのLAYが総合司会を務める『少年之名』と、そのほか大手動画配信サイトでもオーディション番組が制作・配信される予定だ。そちらも英語字幕版が配信されるようなので、今後の展開に注目したい。(後藤涼子)

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