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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

『ソニア ナチスの女スパイ』は、戦争モノというよりひとりの女性の運命を描くドラマとして観て!

月2回連載

第53回

戦争の時代をなんとか渡り歩こうとした、とんでもなく頭の良い女性の物語

今回も2作品紹介します。まずは現在公開中の『ソニア ナチスの女スパイ』。第二次世界大戦中、スウェーデンとナチスドイツ占領下にあるノルウェーを舞台にした歴史ドラマです。

ノルウェーで活躍していた人気女優のソニア・ビーゲットは、ナチスの国家弁務官ヨーゼフからアプローチを受けます。ヨーゼフは彼女をプロパガンダに利用しようと画策していたのです。その一方で、隣国のスウェーデン諜報部は、彼女にスパイとしてナチスに潜入させる計画を持ちかけます。

『ソニア ナチスの女スパイ』

一度はスウェーデンの要請を断った彼女ですが、逮捕された父親の解放のため、ヨーゼフと懇意になり、彼の家に入ることも許されるように。やがて、彼女はヨーゼフの寵愛を受けるようになり、信頼を得ます。ところが、今度は彼女はナチス側のスパイとして北欧諸国の情報収集を依頼され……、というお話。

『ソニア ナチスの女スパイ』

なんとこれ、実話なんですよ。女優でありダブルスパイであり、というソニアの存在を、私は知らなかったんですが、最後にちらりと出てくるソニア本人を見て納得しました。とにかく美人、それにこの映画で描かれているとおり、とても頭が良い女性だったんですね。

『ソニア ナチスの女スパイ』

戦争モノ、それもナチスを描いたものは、私はあまり得意なジャンルではありません。それでもこの作品をオススメするのは、戦争モノというよりも、ひとりの女性の数奇な運命を描く人間ドラマであり、彼女と父親との関係を描く父子もののストーリーだったから。

あの時代をうまく渡り歩こうとした、とんでもなく頭の良い女性のお話、と思って観ると、「戦争もの? 難しそう」という方でもスルッと頭に入ってくるんじゃないかな、と思います。かなり淡々と描かれているところもあるので、ドキュメンタリーを見ているような感覚になるかもしれませんね。

『ソニア ナチスの女スパイ』

私としては、ベスト映画のひとつでもある『太陽の誘い』や『幸せなひとりぼっち』に出ている、スウェーデンの大スター、ロルフ・ラスゴートが出てきただけでも大好物(笑)。すでに公開されていますが、これからという地域もたくさんあるようなので、ぜひ。

あの有名な家族をアニメに。100%の悪人はひとりも出てこない、ハッピーなお話です

さて、もう1作品はアニメーションです。言わずと知れた『アダムス・ファミリー』です。実写映画化もされている世界一有名なヘンテコ家族のファンタジーを、初めて劇場用アニメーション化した作品。

モンスターとして人目を避けて生きているゴメズとモーティシアは、親戚のモンスターを集めての結婚式を開きますが、彼らを嫌う人間たちにふるさとを追われてしまいます。そこで彼らは、新たな居住地を探すのですが、たまたま廃墟になった精神科病院を見つけ、そこに安住。やがて、彼らには長女のウェンズデーと長男バグズリーが生まれ、執事のラーチとともに平和に暮らすことができるようになりました。

『アダムス・ファミリー』

が、長男に儀式が待っています。“セイバー・マズルカ”というその儀式で、彼は親戚たちの前で完璧な振りつけを披露しないといけないのですが、なかなか覚えることができず、両親は困り果てます。一方、ウェンズデーは家のある丘の下に、テレビの人気司会者マーゴが開発した、大きな住宅地があることを知ります。カラフルなその住宅街と人間の暮らしに魅了された彼女は、中学校に通うようになるのですが……。

『アダムス・ファミリー』

ご存じの方もいると思いますが、この作品では私も声優として出演しています。私が演じたマーゴは、ビッグヘアが特徴のテレビ司会者で、いつも自分の番組の視聴率しか考えていないエゴイストですが、それを悟られないように、周囲の人にはとてもよく振るまっているという女性。いや、全く私とは性格が違うんですが、気持ちは分かるんですよね。テレビ業界で働く女性として視聴率ばかり気になってしまう、っていうのはリアルですから。

『アダムス・ファミリー』

でも、私が出ているから観てね、ということではないんですよ。なにせ昔から私は「『アダムス・ファミリー』の一員だろ」と言われてきたんで、本当にこの物語が好きなんですよね。なにせ、100%の悪人はひとりも出てこない、すごくハッピーなお話だから。この家族もいろいろなものを壊してしまったり、マーゴもまた本性は……なんですが、どれも悪意があってやったことではないんですね。

『アダムス・ファミリー』

それに、今回の作品はアニメーションだからか、実写だとおどろおどろしいところも、カラッと笑えるように見せるので、お子さんにも大人にも感動していただけるんじゃないかと思っています。

※次回は10月9日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち/撮影:源賀津己
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(C) 2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved. The Addams Family (TM) Tee and Charles Addams Foundation. All Rights Reserved

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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