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『探偵・由利麟太郎』吉川晃司の渋味を堪能 今後は秘められた過去も明らかに?

リアルサウンド

20/6/24(水) 6:00

 「オリジナルを超えられるリメイクなどない」、これは由利麟太郎が第2話で犯人を追い詰めたときに放った一言だ。

 5週連続特別ドラマ『探偵・由利麟太郎』(カンテレ・フジテレビ系)第2話は「憑かれた女」。本作の監督曰く、由利麟太郎作品の中でも、“特に怖い回”に仕上がっているとのこと。祇園のクラブ「マダム・シルク」のホステス・神崎美沙子(柳ゆり菜)は、同じ店で働くホステスの吉岡エマ(水上京香)を何かと目の敵としていたが、エマはずっと幻覚に悩まされていた。恋人の五月翔太(赤楚衛二)に心配され、大事にされる様子が、元恋人の美沙子にとってはまた腹立たしい。そしてエマの借金を返そうと五月は何やら危ない橋を渡っているらしい。

参考:『探偵・由利麟太郎』吉川晃司の静かなる佇まい 新川優愛が事件の大きな鍵を握る

 そんな最中、エマが「とある洋館のバスタブ内で死体となった美沙子を見た」と店の常連である井出圭一(尾上寛之)に相談。井出は、俊助(志尊淳)の学生時代の旧友でミステリー同好会の仲間だ(全く同学年に見えない配役ではあったが……)。由利(吉川晃司)を呼び、一行は洋館へ。すると、そこには何の痕跡もない。

 しかし後日、例の洋館で実際に美沙子の遺体が発見されるのである。遺体遺棄現場を見て、既視感があると回想する由利。それはかつて、2日間だけミニシアターで公開された自主制作映画のワンシーンだった。実際に殺人が行われたのではないかという曰く付きの作品で、すぐに公開は取りやめになったようだ。そしてこの監督の名前が……。と、ここまで書けば、痴情がもつれて、あるいは恋人の五月が危ない仕事でしくじって……? などの犯行動機は邪推であることが確定する。

 本作は、親子間の確執や、自分が思う通り他人を駒のように動かし、邪魔者は一切排除する、この世界の創造主でありたいとする身勝手な支配欲、自己顕示欲などが過剰なまでに行き過ぎた結果の悲劇を描く。ここでも由利が、作中エマに声をかける「隣の芝生が青く見えるのは、見る角度によって事象は変わって見えるから」という言葉が効いてくる。主に犯人の思い込みが凄まじく、父親と張り合おうとする点も完璧に誤っている。また、女性心理を完全に読み違え、自身の都合の良いようにしか解釈できない単なるストーカー思考が露見するのである。言葉少なに場を掌握する由利が今回も冴えていた。

 ひたすらに吉川晃司が格好良く尊いのも本作の何よりの見どころだが、京都の夜道を薔薇の花束を携えながら歩く姿が美しく、その画力の破壊力たるや。届け先にいる骨董品店の店主の波田聡美(どんぐり)とのギャップもまた面白い。

 波田が作るオムライスを紙ナプキンをつけて食べる、その完全なるキャラクターの作り込みも素晴らしい。紙ナプキン姿までフォーマルで紳士に映えるのは吉川晃司くらいではないだろうか。

 また、ありがたいことに吉川晃司の渋味を堪能できる時間が毎話用意されているのだが、第1話ではおもむろに懐中時計(時間が止まっていたように見える)をポケットから取り出し眺めては、物思いにふけっていた。第2話では、レコードでオペラを聴きながらリズムをとり女性の写真を眺めて、また何かを回想しているようだった。

 そして第1話から印象的だった窓際に置かれている椅子を指して俊助に質問されると、「思い出が座っている」と意味深な発言。「追憶の椅子。彼女はそう呼んでいた」。この「彼女」とは、写真にも写っている彼女なのか?

 本作で由利が俊助に諭すように言った「“若い”と“愚か”は同義語」。店のママの梶原絹江(山口香緒里)が五月に言った「チャンスを奪うのは愛じゃない」。この辺りの言葉が、由利の言う「彼女」との思い出にも関連しているのだろうか。次回はもう後半戦突入だ。由利の秘められた過去を紐解くヒントがもう少し得られそうだ。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。

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