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GLAY TAKURO、数々の名曲を生み出したサウンド傾向は? VTuber 燦鳥ノム楽曲提供を機に分析

リアルサウンド

20/5/12(火) 12:00

 VTuber 燦鳥ノム(さんとりのむ)にTAKUROが提供した「僕たちはまだ世界を知らない」のMVが5月8日に公開され、早くも「神曲」と話題になっている。TAKUROは、GLAYで数々の名曲を世に送り出しただけでなく、これまで何度もアーティストへの楽曲提供を行ない、互いのファンを湧かせてきた存在だ。この新たなコラボレーションをきっかけに、TAKUROのサウンドについて改めて分析してみたい。

(関連:TAKURO提供曲 燦鳥ノム「僕たちはまだ世界を知らない」MV

●国民的バンドの王道、TAKUROサウンド
 人の心を動かすメロディを幾度となく生み出してきたTAKURO。GLAYの他のメンバーが手掛けた作品に名曲も多いが、ミリオンヒットを飛ばした「HOWEVER」、「誘惑」、「BE WITH YOU」などはすべてTAKUROが手掛けた作品だ。“TAKUROのつくる曲はGLAYの王道だ”と、インタビューなどで他のメンバーが口にすることも多い。

 そんなTAKUROの曲は、どこか懐かしいギターロックのサウンドや、心に染みこむような優しいバラードが特徴だ。ここ最近の楽曲でいえば、爽やかで心地の良いロックナンバー「愁いのPrisoner」や、人生に寄り添う歌詞を優しく包み込むバラード「あなたといきてゆく」などが該当するだろう。25周年という長い歴史を持つGLAYだが、この王道サウンドの傾向についてはブレずに今も貫いている。

 TAKUROが影響を受けたアーティストといえば、The BeatlesやOasisなど、音楽史に名を残す偉大なUKロックバンドの名が上げられる。ロックバンドでありながらも、激しさやテンポの速さより、豊かなギターの音色でキャッチーなメロディを奏でるTAKUROの王道サウンドは、彼らが生み出した名曲が根底にあるのかもしれない。

●〇〇×TAKUROの化学反応
 そんな王道サウンドを生み出すTAKUROだが、他のアーティストへ提供した楽曲のなかでも、多くの名曲を生み出してきた。

 例えば、2006年にリリースされたNANA starring MIKA NAKASHIMA(中島美嘉)×TAKUROの「一色」。映画『NANA2』の主題歌にもなったこの曲は、切ない王道バラード。〈また一片 花びらが千切れる〉と少し早口な歌いだしは、細かい音の粒が集まって美しいメロディを奏でているようなイメージで、聴いた瞬間にTAKUROの曲だとわかるほどだ。しかし、TAKUROが生むこの繊細なメロディこそが、中島美嘉のもつクールで美しい歌声や、映画のキャラクターであるNANAの今にも壊れてしまいそうな儚さに、絶妙にマッチしていた。

 2017年にリリースされた氣志團×TAKUROの「蒼き独裁者に告ぐ」(『万謡集』に収録)。は、約9分にもわたる壮大な楽曲だ。そのうちの約4分間は、ボーカル綾小路翔による熱い語り台詞という大胆な展開になっている。静かなピアノの音から始まる前半のドラマチックな歌メロは、まさにTAKUROサウンド。綾小路翔の男らしくエモーショナルな歌い方との相性も抜群にいい。“氣志團にしか演れない曲、あやにーちゃんにしか表現出来ない曲を目指しました。”(参照:https://www.kishidan.com/special/manyoushuu/song/)とTAKUROがコメントした通り、青臭くて情熱的な氣志團の魅力を存分に引き出した曲と言えるだろう。

 アーティスト同士のコラボレーションが決まったときに、互いのファンが期待するのは、“化学反応”だろう。「TAKUROの曲を、彼らがどう歌うのか?」「彼らにTAKUROはどんな曲を提供するのか?」といったように、掛け合わせから生まれる未知の音楽を期待している。TAKUROはそういった期待を軽々と超えていくように、歌う側のアーティストの魅力を引き出しながら、TAKUROのサウンドを存分に楽しめる曲を生み出してきたのだ。

●燦鳥ノム×TAKUROが繋げた仮想世界と現実世界
 では、今回の燦鳥ノムへの楽曲提供では、どのような化学反応を引き起こしたのだろうか。

 燦鳥ノムは、サントリーの公式VTuber。清涼飲料を具現化したような清楚なお嬢様キャラ。凛とした力強さと透明感の両方が備わった稀有な歌声が魅力で、Official髭男dismの「Pretender」といった大人っぽいラブバラードも、アップテンポなボカロ曲も、難なく歌いこなしてしまう。

 そんな彼女にTAKUROが提供した「僕たちはまだ世界を知らない」は、初夏にぴったりな爽やかな曲。サビの繊細な鍵盤の音と、胸に沁みるような歌メロ。愛や人生といった壮大なテーマを、厳しくも優しい言葉で綴った歌詞。どちらもTAKUROがこれまで生み出してきた名曲たちに通じるエッセンスを感じさせ、燦鳥ノムの可憐な歌声との相性も抜群に良かった。

 燦鳥ノムのオリジナル曲は、今回が3曲目。これまでにも「カゲロウプロジェクト」のじんや、LiSAやでんぱ組.incの作曲も手掛けるTom-H@ckなど、著名なクリエイターたちが彼女に楽曲を提供している。彼女のオリジナル曲は、楽曲や歌唱力ももちろん素晴らしいのだが、ミュージックビデオもクオリティが高いと評判だ。リリックビデオとミュージックビデオを兼ね備えたような映像は、ゆらめく幻想的な水面や、ポップなアニメーションなど、実写では表現できない近未来的な演出が施されている。

 しかし、「僕たちはまだ世界を知らない」のミュージックビデオは、これまでの傾向とは全く異なる現実世界に近いシーンばかりだ。横断歩道や高層ビル、公園、お寺など、私たちの身近な場所で燦鳥ノムが歌っている。そして、どの場所でも必ず晴れた青空が映っている。だからその空は、もしかしたら私たちが見上げた空と繋がっているのかもしれない。そんな風に感じさせられ、彼女の存在をより身近に、そして現実的に感じられる作品になっていたのだ。楽曲のもつイメージをこのミュージックビデオで映像化したと考えるならば、TAKUROのサウンドが、燦鳥ノムを現実世界とより近づける役割を担ったと言えるだろう。

 今回、VTuberへの楽曲提供という新たな試みで、仮想世界と現実世界を繋げたTAKUROサウンド。GLAYのTAKUROとしての活動を楽しみにするのはもちろん、他のアーティストへの楽曲提供で生まれる新たな化学反応にも期待したい。(南明歩)

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