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今市隆二、異文化と触れ合うことで獲得した“俳優”としての顔 『CINEMA FIGHTERS』での新たな挑戦

リアルサウンド

19/11/8(金) 8:00

 三代目 J SOUL BROTHERSの今市隆二が異国メキシコの地で俳優デビューを飾ったショートフィルム「On The Way」は、EXILE HIROがエグゼクティブプロデューサーを務める『CINEMA FIGHTERS project』の多様な魅力を改めて感じさせる作品となった。

 『CINEMA FIGHTERS project』は、EXILE TRIBEとアジア最大級の国際短編映画祭『ショートショートフィルムフェスティバル & アジア(以下、SSFA)』がコラボレーションしたプロジェクトだ。作詞家・小竹正人が手がけた歌詞の世界を、EXILE TRIBEのメンバーと気鋭の映画監督がタッグを組み、ショートフィルムで表現するというもので、11月8日に公開される『その瞬間、僕は泣きたくなった -CINEMA FIGHTERS project-』は三度目の試みとなる。

 今回は、EXILE AKIRA(EXILE / EXILE THE SECOND)と三池崇史監督による「Beautiful」、小林直己(EXILE / 三代目 J SOUL BROTHERS)と行定勲監督による「海風」、佐野玲於(GENERATIONS)と洞内広樹監督による「GHOSTING」、佐藤大樹(EXILE / FANTASTICS)と井上博貴監督による「魔女に焦がれて」、そして今市隆二と松永大司監督による「On The Way」の5タイトルが並び、まさに“CINEMA FIGHTERS”の名の通り、各々のクリエイティビティを競い合うような仕上がりとなった。

 例えば「Beautiful」は、三池崇史監督の楽曲の解釈によって、被災地で出会った男女の静かな愛の物語に。EXILE AKIRAは非日常的なシチュエーションの中で詩的な演技を披露し、新境地へと辿り着いている。一方、不思議な予知能力を持つ少女へのほのかな恋情を描いた井上博貴監督の「魔女に焦がれて」では、抜群の身体性を持つ佐藤大樹が、あえてその魅力を封印することで繊細な表情の演技を獲得している。各々の監督が小竹正人による歌詞の世界を物語化し、EXILE TRIBEのメンバーたちがその演技で行間を埋めていくのが『CINEMA FIGHTERS project』の醍醐味であり、そこにはショートフィルムという実験性の高いフォーマットが持つ無数の可能性がある。

 実験的という意味で特に注目したいのは、冒頭で挙げた「On The Way」だろう。メキシコロケを敢行した同作は、RADWIMPSの野田洋次郎が俳優デビューを飾った映画『トイレのピエタ』などで知られる松永大司監督ならではの手法が光る一作だ。NPO活動をしている母の代理でメキシコへやってきた健太(今市隆二)が、アメリカを目指す隣国からの移民達のために食事や衣類を提供している移民センターを訪れるものの、命がけで国境を目指す人々の姿を目の当たりにして、無力感に苛まれるというストーリー。松永大司監督は、まるでドキュメンタリーのようなドライなタッチで、異国の文化に触れる今市隆二の表情をそのまま捉えることで、虚実のあわいを物語の中に閉じ込めた。健太と今市隆二の心情が自然と重なる瞬間が、この作品の見どころと言えるだろう。

 同作のために今市隆二が歌った新曲「Church by the sea」も印象的だ。今市自身が「この曲は、もともとはオルゴールの音色を基調とした、ファンタジックな楽曲だったんですけれど、いろいろと意見を言わせてもらって、生の弦やクワイヤも入れてもらい、かなり壮大な曲になりました」(参考:https://realsound.jp/2019/10/post-437496.html)と語る同曲は、「On The Way」のラストシーンで静かに流れ始める。健太として体験した無情な世界に対し、今市隆二が歌で祈りを捧げているかのようで、わずか25分程度の短い作品ながら、我々鑑賞者に深い余韻を残すのである。(文=松田広宣)

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