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UVERworld『約束のネバーランド』OP曲はなぜ心を奮わせる? アニメと相乗効果生む楽曲の特性

リアルサウンド

19/3/1(金) 12:00

 2018年7月にメンバー&ファンセレクトによる楽曲をまとめたベストアルバム『ALL TIME BEST』を発表し、それまでのキャリアを総括してみせたUVERworld。その後も活動の手を緩めることはなく、夏には全26公演に及ぶツアー『UVERworld LIVE TOUR 2018』を行う傍ら数々の大型フェスに出演、11月には海外のクリエイターとのコーライティング曲「EDENへ」を含む両A面シングル『GOOD and EVIL / EDENへ』をリリースし、そのタイミングに合わせてアリーナツアー『UVERworld ARENA TOUR 2018』も開催するなど、驚くべきアクティブさでもって自らの音楽性を研磨・更新し続けてきた。そんな彼らが、2019年最初の新曲として届けてくれたのが、TVアニメ『約束のネバーランド』(フジテレビほか)のオープニングテーマとしてオンエア中の「Touch off」だ。

参考:UVERworld、10年連続の武道館公演に見た“ミクスチャーロックバンドとしての強靭さ”

 『約束のネバーランド』は、週刊少年ジャンプで連載中の原作・白井カイウ、作画・出水ぽすかによる漫画で、“孤児院”と呼ばれるハウスを舞台に、“鬼”の食用として育てられていることを知らない子どもたちが、その事実にあるきっかけで気づき、生き残るために脱獄を計画する、サスペンス&サバイバル要素の強いダークファンタジー作品。原作コミックスは累計発行部数は全世界870万部を突破(2018年12月時点)、『このマンガがすごい!2018』オトコ編第1位を獲得するほどの人気作になっている。それだけにアニメ化が発表された際の反響も大きく、誰がテーマソングを担当するかにも注目が集まったわけだが、ここでアニメタイアップにも定評のあるUVERworldがオープニングに抜擢されたことは、多くの人にとって納得のいく人選だったのではないだろうか。

 UVERworldと言えば、2005年に1stシングル『D-tecnoLife』でメジャーデビューしたことで知られるが、そもそもこの曲自体がTVアニメ『BLEACH』の第2期オープニングテーマだったことからもわかる通り、彼らの楽曲は少年マンガ原作のアニメ作品との相性がすこぶる良いのだ。

 その理由はいくつかあるのだが、まずひとつめに挙げたいのが、ダイナミックかつ独自のミクスチャー感覚を有したその音楽性。おそらくLinkin ParkやLimp Bizkit辺りのニューメタル的なサウンドを音楽的ルーツに持つであろう、ラップやエレクトロニクスの要素とオルタナティブなロックとの融合という手法を軸足としつつ、日本人の琴線に刺さるエモいメロディと大胆かつメリハリの効いた曲展開という個性を加えることで、他に類を見ないドラマチックかつ熱い楽曲に仕立てるのが、彼らのサウンドの特徴だ。

 その作風は、いわゆる少年マンガ的な〈友情・努力・勝利〉というテーマにフィットするものだし、特にシーンの転換が多用されるオープニングアニメーションにおいて非常に映えることは、例えば件の「D-tecnoLife」が使われた『BLEACH』のオープニングアニメを観てもらえばすぐにわかってもらえるはずだ(頭サビの静かなトーンと背中合わせに佇む一護とルキア→バンドの演奏と同時にロゴがカットイン→ヒップホップ風のSEに合わせて次々と切り替わるキャラクター→爽快なAメロ部分と空をバックに風を浴びる一護ら4人……など音と絵のマッチングが完璧すぎ!)。

 そして何より強調しておきたいのが、フロントマンのTAKUYA∞(Vo)が書く歌詞のメッセージ性とのハマりの良さ。彼はデビュー時から一貫して“自分らしく生きること”や“自分自身に限界を設けないこと”の大切さを強く訴え、それを抑えつけようとしたり、頭ごなしに否定しようとする“大人たち”に対してNOを突きつけてきた。そういった聴き手の心を鼓舞し、それぞれの思う道に進めるよう背中をバンと押してくれる心強い言葉は、多くの少年マンガが内包するテーマ性とシンクロするものでもある。

 例えば『青の祓魔師』の第1期オープニングテーマだった「CORE PRIDE」(2011年)。この曲は先の『ALL TIME BEST』リリースに伴う投票企画で9位に選ばれるなど、ファンの間でも人気の高いことで知られるが、ここで歌われる〈自分に負けない「プライド」〉とは、悪魔(サタン)の子どもという逃れられない運命を背負いながらも、悪魔を倒す祓魔師(エクソシスト)になることを目指す『青エク』の主人公・奥村燐の心境とも重なるものだ。そして「悪魔の子どもが祓魔師になれるわけがない」という周囲の意見を吹き飛ばし、自らの可能性を切り拓いていく燐の姿は、多くの人から「成功するわけがない」と言われながらも、滋賀から上京して現在の地位を勝ち取ったUVERworldのメンバーたちの姿と重なるものでもある。余談だが、メジャーデビューのタイミングでサポートに回った誠果(Sax)が2014年に再び正式メンバーに迎え入れられた経緯など(詳細は彼らの楽曲「誰が言った」の歌詞などをチェックしてほしい)、バンドの境遇自体が少年マンガのストーリーのようなところも、彼らの楽曲がアニメ作品との相性がいい一因なのかもしれない。

 それだけにUVERworldは少年マンガ系のアニメ、特にジャンプ作品を原作とするアニメのテーマソングを手がけることが多く、先に挙げた作品以外にも『D.Gray-man』の第1期オープニングテーマ「激動」(2008年)、劇場版『青の祓魔師』の主題歌「REVERSI」(2012年)、『青の祓魔師 京都不浄王篇』のオープニングテーマ「一滴の影響」(2017年)、『僕のヒーローアカデミア』第3期のオープニングテーマ「ODD FUTURE」(2018年)を担当。いずれの曲でも作品の世界観やテーマ性と寄り添いつつ、自分たちらしい楽曲としてアウトプットしてきた。特にトロピカルハウス周辺の海外のポップミュージックのトレンドを野心的に採り入れた昨年の「ODD FUTURE」では、アニメ用の90秒バージョンとフルバージョンではアレンジを完全に作り変え、アニメ版ではイントロにシンセの印象的なフレーズを追加したり、リズムはロック的なアプローチになってたりと、作品や尺に合わせた細かいこだわりも見せていた。

 そして今回の新曲「Touch off」では、冒頭にどこか不穏な雰囲気の電子音とヒップホップ風のビートを置いて『約束のネバーランド』の閉塞的な世界観を示しつつ、そこに「CORE PRIDE」でも象徴的に使われていたサックスの鮮烈なブロウを切り込ませることで、外の世界に逃れようとする主人公たちの決して諦めることのない意志やヒロイックな強さを表現。歌詞の〈拝む神なんて居ないや 星もないや〉というフレーズには絶望的な状況が浮かぶが、続けて〈でも願う事は辞めなかった〉と力強く歌い、〈わずか数センチだって 願った場所に向かって 進んで行く〉ことで未来をつかみ取ろうとする泥臭いまでのあがきは、一縷の望みを少しずつかき集めて“孤児院”からの脱出を図る物語の主人公たちの状況そのものでもあるし、TAKUYA∞がこれまでに伝えてきたメッセージとも合致する。

 また、アニメ用のショートバージョンの尺で聴くとヘビーなデジタルロックという趣きの強いこの楽曲だが、2番以降ではさらなるアレンジの展開が用意されていて、先の「ODD FUTURE」やトラップのビート感を独自に消化した「GOOD and EVIL」「EDENへ」といった近作と同じく、進化の手を止めない彼らの新しい姿を提示したものになっている。特にブロステップ風のドロップからコール&レスポンスの応酬を繰り返すパートは、EDM以降のポップスの様式を踏まえながらもバンドの持つ熱量を活かした激しいものになっており、間違いなくライブで強力な武器として機能するはずだ。

 曲の最後でTAKUYA∞が歌でもラップでもなく叩きつける〈本当の自由など無い ならばこれはそれを否定する為の旅〉という言葉は、これからさらに創造の翼を自由に羽ばたかせようとしているバンド自身の活動宣言にして、未知の自由に向けて勇気ある一歩を踏み出す『約束のネバーランド』の主人公・エマたち、そして自由の意味を忘れてしまったすべてのリスナーたちに贈るエールなのかもしれない。このように作品との相乗効果で心を奮い立たせてくれるのが、UVERworldというバンドなのだ。(流星さとる)

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