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藤原季節「今、本当に毎日が幸せです。」大劇場出演の“勝負の時”に向けて

ぴあ

藤原季節

フランス革命の時代に実在した死刑執行人、シャルルーアンリ・サンソンの実話をベースとした舞台『サンソンールイ16世の首を刎ねた男―』。主演・稲垣吾郎、演出・白井晃、脚本・中島かずき、音楽・三宅純の『N0.9―不滅の旋律―』を生み出した最強チームが手がける話題の新作には、人気と実力を兼ね備えた注目の若手俳優が多数、出演する。そのひとり、映像や舞台で放つ独特な個性が気になるこの人、藤原季節に稽古の様子や本作に懸ける思いを聞いた。

『No.9~』を観た時、僕は足が震えました

――今回のお話を受けて、参加を決めた時のお気持ちから教えていただけますか?

僕はもともと演劇を観ることが好きで、小劇場の学生演劇から芝居を始めたんです。当時、いろんなアルバイトをして来た中には商業演劇の演出部のお仕事もあって、いつか大きい劇場に立って台詞を言いたい、そんな目標を持っていました。それ以降、アンサンブルとして出た経験はあるんですけど、今回のようにしっかり役をいただいて大劇場に立つのは初めてで。だから今、本当に毎日が幸せです。作品の内容やキャストの方々など、魅力はたくさんありますけど、まずは「大きな劇場に自分が立てるんだ!」ってことが嬉しかったです。

――稲垣吾郎さん主演、白井晃さん演出、中島かずきさん脚本、三宅純さん音楽というと舞台『No.9―不滅の旋律―』という素晴らしい舞台が思い起こされます。

はい、僕も拝見しまして、素晴らしかったです。先日も今回の共演者の牧島輝君と『No.9』について話して、牧島君は「すごすぎて手が震えた」と言ってましたけど、僕は足が震えました。

――その鉄壁のチームで、また震えるような舞台を立ち上げてくれそうですね。

責任感の強い役者さんが集まっていて、一人ひとりの情熱が稽古場に渦巻いているように感じています。皆でコミュニケーションを取り合う、素敵な現場です。

――実在した人物を題材としたストーリーですが、脚本を読んで感じたことは?

これまでフランスの歴史を深く調べたことがなかったので、知らないことばかりでした。今は寝る時間も惜しいくらい、フランス革命に関する資料を観たり、読んだりしています。歴史を知ることが面白くて、寝られないというか、うなされてますね(笑)。

なので、最初に脚本を読んだ時は、歴史をよく知らなかったのでフィクションのように感じたんですよね。スペクタクルで、悲劇的で、なんて興味深い話なんだろうと。それから歴史を詳しく調べていくうちに、その興味がどんどん倍増していって……。パリで死刑執行人がひとりしかいなかったなんて、本当にこんなことがあったんだと。マリー=アントワネットやナポレオンが主役の物語はあるけど、死刑執行人を主役にするという視点がすごく面白いなと思いました。

稽古を重ねて見えてきた、過激なだけじゃないサンージュストの一面

――藤原さんが演じるのは、革命へとひた走る青年サンージュストです。どんな人物でしょうか。

脚本を読んだ時に思ったのは、過激な思想を持っているということ。ルイ16世を処刑台に送ることが市民の平等につながる、その一直線な思いで突き進んで、少し浮き足立っていて……というふうに表面的な部分をとらえることは、ホンを読んだ段階で出来ていたんです。でも稽古をやっていくうちに、その過激さの理由というか、なぜ国王や反革命的な人間たちを次々に処刑台に送っていったのか、時代的背景やその心情を想像するようになりました。ただ過激なだけじゃないサンージュストの純粋すぎる一面が、稽古を重ねていくうちに見えてきて、そこも演じていて楽しいですね。

――彼の中の“正義”が突っ走ってしまったと。

そうですね。伝説的に有名と言われているサンージュストの演説(編集部注:1792年8月10日の革命後、最年少の25歳で国民公会議員となったサンージュストが国王裁判で行った「処女演説」)があるんですけど、その内容を読むと、すごく説得力があるんですよ。国王の存在自体が自然の摂理に反している、だから市民が平等になるには国王という存在をまず排除しないといけない……と。一度そういう考えに取り憑かれたら、もう進むしかなかったんだろうなと思います。

稲垣吾郎さんはやっぱり異次元・・・目が合うと緊張します

――先ほども「素敵な現場」とおっしゃっていましたが、演出の白井さん、共演の方々との稽古場の様子などを教えてください。

こんなにクリエイティブな空間が生まれるなんて、こんな楽しい現場ってかつてあったかな? と感じるくらい、素敵な現場です。それは白井さんの采配によるものだと思いますね。稽古初日から全員の名前を覚えてくださっていて、一人ひとりに対して敬意を持って接してくださっているのがわかるんです。役も立場も関係なく、この場にいる全員が躍動感を持って、この物語を立ち上げていくんだ、っていう空間になっている。それが白井さんの演出なんだなと思います。

――主演の稲垣吾郎さんの印象は?

やっぱり異次元と言いますか、違う空間に立っている方といった緊張感がありますね。稲垣さんがいらっしゃる時といらっしゃらない時では、稽古場の空気がガラッと変わるので。しかも稲垣さんって、すごく周りの人のことを見ていらっしゃるんですよ。ホン読みの時とかでも「たまに目が合う」とほかのキャストも言っていました。僕も何度か……(笑)

緊張しますね。これは、僕が子供の頃から見ていた方だから緊張するわけではなく、あの方が持っている“何か”だと思うんですよね。

―――死刑執行人なんて、精神的にも肉体的にも、とんでもなく大変なキャラクターに感じます。

そうですよね、サンソンは処刑だけじゃなく、拷問も担当するんですよ。市民に恐れられている存在なんです。サンソン家についてもいろいろ調べました。フランス革命について調べていくと、本当に面白いんですよ。議員たちは実際に自分の肉体でもって行動して国を変えようとしていたし、市民たちも自分のこととして国を考え、政治に関わっていた。今の日本とは全然違うなと思いますね。

――観客もさまざまに思い巡らせ、揺さぶられる体験になりそうです。藤原さんが本作で、一番心に響いた部分は?

今、稽古場で見ていて面白いなと感じるのは、ルイ16世とサンソンの悲劇的な関係性でしょうか。ルイ16世を演じる中村橋之助さんの芝居を見ているのも、すごく勉強になります。叙情的な声や仕草、そういうものの一つひとつに、橋之助さんご自身の「こういう俳優になりたい」という思いをひしひしと感じて。本当に、いろんな方から刺激を受ける毎日ですね。

キャスト一人ひとりが必死に挑む舞台、お客さんも必死に楽しんで

――小劇場での演劇経験とはまた別の、多くの新たな発見をされているように感じます。

今までやってきたものとは全然違いますね。全身で舞台に立った時、その重心のかけ方にその人の精神力や意志、生活とか、いろんなものが立ち上がってくるように感じます。舞台って、何を考えているのかがバレてしまう空間なんだなと。これまでいろんな舞台作品を観て来て、どこかで“自分も通用するんじゃないか”と思っていたんですね。自分なりに、それを目標に突っ走って来たところがあって。でも実際にこうして大劇場の舞台に立てる時が来て、自分の考えが甘かったことを痛感しています。センスや感覚はもちろんのこと、しかるべき技術を持っていないと通用しない世界なんだなと。それがわかったうえで、本番までの残りの数週間でどこまで作品世界に近づけるか、僕自身の勝負だと感じています。

――藤原さんの“勝負の時”を、観客の皆さんも楽しみにしていることと思います。

お客さんには、ただ楽しんでもらいたいという一言に尽きますね。僕も『No.9』を観た時に、舞台芸術の力を実感しました。一人ひとりが躍動感を持ってベートーヴェンの物語を立ち上げている、そのことに深い感動を覚えて。観終わった後、自分の中に少しだけ変化があったというか、自分が信じている世界は間違ってなかった……といった、舞台芸術に対する自信のようなものを、あらためて感じました。『サンソン』は民衆の物語でもあって、キャスト一人ひとりがフランス革命の時代のうねりを体現しようと、必死に旗を振り回しています。その姿を見て、何かを感じ取っていただけたら。お客さんも必死に楽しんでいただきたいですね。

取材・文:上野紀子



公演情報
舞台『サンソンールイ16世の首を刎ねた男ー』
演出:白井晃
劇作・脚本:中島かずき
音楽:三宅純
原作:安達正勝『死刑執行人サンソン』(集英社新書刊)
坂本眞一『イノサン』に謝意を表して

出演:稲垣吾郎 /中村橋之助
橋本 淳 牧島 輝 落合モトキ 藤原季節 清水葉月
智順 藤田秀世 有川マコト 松澤一之
田山涼成 / 榎木孝明 他


【東京公演】
2021年4月23日(金)~2021年5月9日(日)
会場:東京建物ブリリアホール
※政府による緊急事態宣言発令により、4月28日(水)~5月9日(日)公演は中止となりました(4/25追記)

【大阪公演】
2021年5月21日(金)~2021年5月24日(月)
会場:オリックス劇場
※政府による緊急事態宣言延長により、大阪公演は中止となりました(5/12追記)

【福岡公演】
2021年6月11日(金)~2021年6月13日(日)
会場:久留米シティプラザ

【神奈川公演】
2021年6月25日(金)~2021年6月27日(日)
会場:KAAT 神奈川芸術劇場

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2169785

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