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一度も撃ってません

20/7/2(木)

(C)2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ

「かっこいい」は、時の流れによって変わる。ある時代には「かっこいい」とされたことが、後の連中には理解されず、むしろ「イタい」となる。だが、当のかっこつけた年寄りにしてみれば、「わかっちゃいるけどやめられない」。『一度も撃ってません』は、そのど真ん中を突いて観客をくすぐってくる。2020年のハードボイルドじいさんは、いまや喜劇になる。 そのシナリオを、松田優作の映画や『探偵物語』シリーズを手がけた丸山昇一が書き、出版社も扱いかねる老ハードボイルド小説家を石橋蓮司が演じ、さらに(いちいち書き切れないほどの)豪華なキャストに囲まれているとあれば、期待するなという方が無理だ。例えば、ほんの短くしか出演しないヒットマン役に豊川悦司を持ってくる贅沢さに驚く。 阪本順治の演出も、前作『半世界』で見せてくれたような悠然かつ手厚いものではない。むしろ俳優たちのクセを気ままに伸ばしてもらい、自らも楽しんでいるような空気がある。 故・黒澤満の率いた名プロダクション、セントラル・アーツの名作群がもう一つ増えた気がした。

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