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『警視庁・捜査一課長』は“お約束の展開”がたまらない!? テレ朝刑事ドラマファン必見のキャスティングも

リアルサウンド

19/12/15(日) 10:00

「必ず、ホシを挙げる!」

 主人公の捜査一課長・大岩純一(内藤剛志)による決めゼリフが印象的な刑事ドラマ『警視庁・捜査一課長 スペシャル』が12月15日に放送される。

参考:『相棒』卒業後も存在感を示す愛すべきキャラクターたち 長期シリーズ人気の秘訣を探る

 『警視庁・捜査一課長』シリーズは、2012年に『土曜ワイド劇場』で第1弾が放送されて以降、2016年から2018年にかけて毎年4月開始の「木曜ミステリー」枠の連続ドラマとしてシーズン3まで放送されるなど、人気シリーズとして定着した。2019年は連続ドラマとしての放送はないものの、4月から10月までの間にスペシャルドラマが計4作放送されており、15日の放送で今年5作目となる。更に、年明けてすぐの1月3日にも正月スペシャルドラマが放送されることが決まっているなど、異例とも言える絶好調ぶりだ。刑事ドラマを多く生み出しているテレビ朝日系において、なぜこの作品が人気シリーズとなったのか。その魅力を探ってみた。

 刑事ドラマといえば、ミステリー調のちょっと重たい空気が流れることがほとんどだが、このドラマの空気は少し異なっている。その理由は、随所に見える「遊び心」にある。例えば、大岩はこれまで部下の女性刑事たちに「大福」「羊羹」「スムージー」など食べ物にまつわるニックネームをつけており、15日の放送ではこれまでも何度か登場している高井智代子(宮崎美子)が再び登場するが、彼女は大岩からは「チョコ」と呼ばれている。

 ゲストキャラクターの役名も強烈だ。これまで2回ほど登場している、土屋伸之演じる刑事・谷保健作(やほけんさく)は、大岩の公用車運転担当刑事・奥野親道役でレギュラー出演している塙宣之との漫才コンビ・ナイツの漫才ネタから来ているし、10月のスペシャルに出演した、レスリング選手の浜口京子の役名は木相田蓮子(きあいだれんこ)、15日の放送で登場する堀家一希演じる、平均点しか取れない新人刑事の名前は平野啓司(ひらのけいじ=ヒラの刑事)、など思わずクスリと笑ってしまうギャグを役名に盛り込んでいる。

 キャスティングにも遊び心が秘められている。テレ朝刑事ドラマファンにとって最も楽しいのは、『科捜研の女』との“立場逆転キャスティング”だ。大岩の片腕ともいうべき存在の小山田大介管理官役の金田明夫は、内藤同様『科捜研の女』のレギュラーメンバーでもある。『警視庁・捜査一課長』では内藤が金田の上司役だが、『科捜研の女』では金田が刑事部長・藤倉甚一役で、内藤演じる土門の上司にあたり、2つのドラマの間で立場が逆転しているのだ。

 同様の構図は他のキャストでも起こっており、10月放送のスペシャルで、捜査一課長より立場が上のエリート官僚・白馬應治役として出演した石井一彰は、『科捜研の女』では内藤演じる土門の部下・蒲原勇樹として出演している。また、これまで数回登場している交番勤務の巡査・本淵陽役の西田健は、『科捜研の女』では内藤や金田の上司にあたる京都府警察本部長・佐伯志信役だ。本淵陽(ほんぶちよう)という役名も「本部長」から来ていることがうかがえる。

 そして何と言っても、レギュラーメンバーによる「お約束の展開」がファンにはたまらない。中でも刑事部長の笹川健志(本田博太郎)は、物語の中盤で大岩を叱咤激励し、事件解決後に再び登場して「ベリーグッドです」という決めゼリフで大岩を労うのだが、この笹川のキャラクターがかなりの変わり者だ。本田がクセのある演技で、「笹川刑事部長のコーナー」と呼びたくなるような独壇場を見せる。子育てのためにしばらく捜査一課から離れていたことから大岩に「ブランク」と呼ばれている奥野のことを、笹川はわざとらしく「スランプ」や「トランクス」と言い間違えるなど茶目っ気たっぷりな面も見せている。そして大岩たちが笹川との受け答えを笑わず真面目腐ってやっているのもお決まりで、それが更におかしみを誘う。

 笹川刑事部長と同様に、中盤とラストに登場する大岩の妻・小春(床嶋佳子)と大岩家の飼い猫のビビの存在も忘れてはならない。激務の大岩を温かく支える小春と、可愛らしい姿やしぐさを見せるビビは、このドラマの中で重要な癒しになっている。

 おなじみのパターンに視聴者は「待ってました」と喜び、ベタなギャグの数々にツッコミを入れつつ笑い、最後には事件が解決して大団円。『警視庁・捜査一課長』シリーズのお約束の展開は、『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』といった人気時代劇に通じるところがあるように思う。『警視庁・捜査一課長』は刑事ドラマ界の時代劇のような路線を歩んでいるのではないだろうか。そして、安心して楽しめる刑事ドラマを求めている層のニーズにぴったりはまったことが、人気シリーズとなったゆえんだろう。

 15日のスペシャルでは、いつもの“お約束”の中でどのようなストーリーが展開されるのか。放送を楽しみに待ちたい。

■久田絢子
フリーライター。新聞ライター兼編集(舞台担当)→俳優マネージャー→劇場広報→能楽関連お手伝い、と舞台業界を渡り歩き現在に至る。ウェブ「エンタメ特化型情報メディアSPICE」等で舞台・音楽などのエンタメ関連記事を中心に執筆中。

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