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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

「今回の」人生での古い記憶

毎週連載

第114回

僕は、お母さんのお腹から生まれて、初めて見た光景をはっきり覚えているのね。「今回の」人生では。

まず見えたのが寝室の天井。それで左を向いたら仏壇があって、赤ちゃんが生まれたお祝いのときにかける提灯があるんだけど、それがふたつあって、ゆっくり回ってる。生まれたばかりの僕だけど、それを見てさ「綺麗だな」と思ってるの。さらに「あ、たぶん僕が生まれたから回してくれてるんだろうな」とも思ってる。

この寝室には僕しかいないんだけど、背後にどうやらリビングがあるみたいで、そこに家族とか親戚が大人数集まってさ、はしゃいでる声が聞こえてくる。「ワッハッハ」っつって。そこでもまた僕は「あ、たぶん僕が生まれたから親戚が集まって、昼間からお酒とかを飲んで祝ってくれてるんだろうな」ってことを認識してたの。

そのうちさ、母方のおばあちゃんがひとりで僕のところに来るんですよ。それで僕の顔をじっと覗き込んで、おばあちゃんが笑うんだ。「かわいい」っつって、僕のほっぺたをピトッと触るの。そこで僕はさ、「ここで僕が笑ったら、きっとおばあちゃん喜んでくれるだろうな」と思って笑ってあげたの。そしたらさ、やっぱりおばあちゃんは「あぁ、笑った」っつって喜んでくれた。

ここまでが僕にとっての一番古い記憶で、この後の記憶は一気にワープして弟が生まれた後の3歳くらい。気づいたら弟がいたっていう。

でもさ、生後数日しか経っていない僕に、どうしてこんな記憶が残っていて、さらには「今回の」自分が生まれたこと、仏壇、提灯、寝室、家族、親戚、お酒みたいなこともわかるかっていうのは不思議でしょ。これね、仮定として人間には前世、今世、来世というものがあったとすると、前世の記憶が生まれたばかりの僕の魂に、一瞬受け継がれているからなんじゃないかなと思ってる。個人差はあるかもしれないけど、「一瞬」だけじゃなくてさ、前世の記憶が永遠に残ってる人もいるかもしれないし、実は5歳くらいまで受け継がれている人もいるかもしれないけどね。 

この生まれたばかりの自分の記憶があまりに不思議すぎてさ。中学の頃、親に言ったことあるんだもん、この話を。そのときは親も「えぇ? まぁ不思議だね」って話で終わっちゃったけど、でもだから今僕がテキトーに面白くしようとして話してることではないの。事実としてあるわけだから。だから、輪廻転生ってやっぱり僕はあると信じてるんだ。

だってさ、すごく真面目で非の打ちどころもない人なのに、やたらと交通事故にあったり、ひどい目にあったりする人っているじゃん。何の落ち度もないのに、災いばかり受けちゃう人。こういう人って、前世の魂で、ちょっと不注意でとんでもない事故を招いて他人に迷惑をかけた人なんじゃないかとかつい思っちゃう。因果とか怨念が「今回の」人生に受け継がれて、前世での失敗はプラマイゼロになるようにできてるんじゃないかとか思うんです。

まぁ、これは僕がスピリチュアル的に思ってることだから、根拠はないけどね。でも、あながち間違いでもないんじゃないかなと思ってる。皆さんはどう思いますか?

前世、今世、来世って絶対あると思っています。

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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