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tofubeatsが語る、ヒップホップ的発想で確立したマルチなスタイル「新しいことをやっているつもりは全然ない」

リアルサウンド

20/4/10(金) 17:00

 中学生の頃から宅録で音楽制作をはじめ、2013年に「水星 feat.オノマトペ大臣」のヒットをきっかけにメジャーデビュー。その後、自身の作品やライブ、DJ活動に加え、SMAP、平井堅などの楽曲リミックス、ゆずのサウンドプロデュース、CM、アニメ、映画の音楽など幅広いフィールドで存在感を示しているtofubeats。

参考:tofubeats×ジェイ・コウガミ、名著『誰が音楽をタダにした?』を語る 音楽はネット時代にどう生き抜くか

 「DJプレイの際に使いやすい曲を収録した」という新作ミニアルバム『TBEP』を発表したばかりの彼に、クリエイター/アーティストとしてのスタンス、独創的な制作スタイルなどについて語ってもらった。(森朋之)

■「これだけ」と決めるのがイヤなんです

ーーtofubeatsさんは、トラックメイカー、音楽プロデューサー、シンガーソングライター、劇伴作家、さらに動画の配信やマネジメント会社「HIHATT」の経営など、活動は多岐に渡っています。音楽活動をスタートさせたときから、現在のような活動スタイルを思い描いていたのでしょうか?

tofubeats:いや、そんなことはないですよ。トラックを作り始めたのは中学生のときなんですけど、要はヒップホップのビートを作りたかっただけなので。BUDDHA BRANDのDEV LARGEさん、TOWA TEIさん、石野卓球さんなどの影響も大きかったですね。いろいろ出来るようになったのも、「これができないと困る」という消極的な理由が大きいんです。たとえば「ポップスを作れないと、コンペに通らない」とか。

ーー必要に迫られながら、技術やメソッドを獲得してきた?

tofubeats:というより、チマチマ続けていれば出来るようになるんですよ(笑)。「ボールを100m投げる」とかは無理だけど、曲は気が向いたときに少しずつ進めていけば、完成まで持っていけますから。作り始めたときからそういう感じでしたね。「機材があったら曲が作れる」という記事をインターネットで見て、「そうなんや」って真に受けて、ちょっとずつ作り始めて。そのやり方は、他のことにも応用できるんですよね。たとえば動画の編集にしても、自分で少しずつやっていれば、出来るようになるので。

ーーセンスや才能というより、地道に積み重ねてきた成果だと。

tofubeats:そうですね。中学生の頃に作った曲は、誰がどう聴いてもダサいですから(笑)。

ーーでは、「この仕事をやったことで、作風が大きく広がった」という作品は?

tofubeats:最近だと映画『寝ても覚めても』の音楽ですね。劇伴は映画の主役ではないけど、主題歌(「RIVER」)はしっかり立っている曲じゃないといけない。違う役割を担う音楽を同時に作ることで、いままで使っていなかった部分を使えた感覚があったし、思ってもみないような曲が出来て。実際、「RIVER」みたいな曲って、それまで作ったことがなかったですから。映画の音楽を作らせてもらったことは、その後の制作にもすごく影響があって。脚本、言葉を音楽に落とし込むということなんですが、「ふめつのこころ」(ドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』主題歌)も、そのやり方で作りました。内容は全然違いますけど、手法はかなり似てますね。

ーー新しいジャンルに飛び込むことで、次の制作につながると。

tofubeats:はい。最近もアニメの仕事とクラブミュージックのアルバム(『TBEP』)を並行して作ってたんですが、そのほうが楽しい。それは昔からそうで、「これだけ」と決めるのがイヤなんですよ。ヒップホップでレアグルーヴを使ったトラックが全盛期だった頃、J-POPをサンプリングした曲を作ったりしていましたし。「ヒップホップだけじゃなくて、ハウスもやってみたら」と言われて、試しにやってみたら、いままでとは違う自分の作風を見つけることもできました。アンダーグラウンド、オーバーグラウンドという分け方も好きじゃないし、いろいろ出来たほうが得に決まってるという考え方なんですよね。

■発想の方法としてはヒップホップに影響を受けてます

ーー興味があること、好きなことを自由にやると。

tofubeats:そうですね。J-POPのチャートの上位に入っている曲には力があるし、インディーズや個人で楽曲を制作しているような人たちの作品の中にも個性が立っている曲があって。両方の良いところを自分の作品に取り入れたいという気持ちがあります。「水星feat.オノマトペ大臣」がヒットして、iTunesで1位になったことも自信になってますね。まあ、そこまで深く考えているわけではなくて、やりたいことをやってるだけですけど(笑)。

ーー実際、現在のtofubeatsさんの音楽性はヒップホップ、ハウス、シティポップなど多岐に渡っているし、ジャンルでは括れないですよね。

tofubeats:ただ、発想の方法としては、ヒップホップにめちゃくちゃ影響を受けてますね。“ありもの”を組み合わせて新しいものを作るという考え方が根底にあるし、自分が持っているのものをよく確かめて、「それを組み合わせることでおもしろいものができる」と信じるのが大事というか。それはヒップホップだけじゃなくて、じつはバンドも同じなんですけどね。ギター、ベース、ドラムという、昔から使われてきたものを組み合わせて、新しいものを作らなくちゃいけないので。

ーー一般論にはなりますが、J-POPでもダンスミュージックのテイストを取り入れた楽曲が増えたことによって、トラックメイカーの需要が増えた実感はありますか?

tofubeats:それはあまり変わってない気がします。トラックメイカーは和製英語で、いまは“打ち込みの作家”というくらいの意味だと思いますが、テクノロジーの発達によって敷居が下がって、“ひとりで全部やれます”という人が増えただけかなと。むしろメジャーシーンで名前を出して活動している人は減ってるような気がします。それは『TBEP』を出した理由の一つでもあるんですよ。クラブミュージックに寄った作品をメジャーレーベルから出すっていう。僕自身も中学生のとき、電気グルーヴのアルバムをレンタルして聴いて、それがクラブミュージックの入り口になってるので。メジャーから出てるアルバムをきっかけにして、そういう音楽に興味を持ったり、クラブに行く人が増えたらいいなという気持ちもあるんですよね。

ーークラブミュージックとJ-POPのバランスも絶妙だなと。

tofubeats:ボーカルが入った曲が2曲(「陰謀論」「クラブ」)がありますからね。「陰謀論」は歌詞が少ないんですけど、クラブっぽいサウンドと歌モノのバランスをどう取るかは一貫したテーマです。全体的にはクラブミュージックに寄っているんですけどね、今回は。BPMも120~130くらいに絞っているし。

ーーそれはどういう意図で?

tofubeats:“自分がDJをやるときに使える曲”ということですね。2時間、3時間くらいのDJをやるときは、ハウスミュージックに特化していて。イントロが短かったり、曲の展開が多いとかけづらいんですよ。今回のミニアルバムは、クラブツールというか、そのまま流してもイケるというものを目指したので。DJプレイの流れのなかでかけて、違和感がないトラックというか。

ーーDJとしての活動を活性化したいという気持ちも?

tofubeats:はい。一昨年くらいから「もっとDJを上手くなりたい」と思っていて。TEIさん、卓球さんとご一緒する機会が増えてるんですが、やっぱりすごいんですよ。その場をコントロールする力もすごいし、DJとしての信頼感も高い。「どうやったら、こうなれるのか」と子どもみたいなことも考えたし(笑)、去年、がんばってDJを続けてきたことも今回のミニアルバムにフィードバックされていると思います。

■『TBEP』をいい感じで受け止めてもらえたら流れも変わってくる

ーーアルバムには、三井アウトレットパークCMソングとして制作された「Along the Coast」(bonus track)も収録。この曲にも、現在のtofubeatsさんのモードが反映されている?

tofubeats:そうですね。ただ、CMソングの場合はーー映画音楽の仕事もそうですけどーー自分は主役ではないので。「Along the Coast」は当初、インストにするつもりだったんですが、クライアントから「tofubeatsさんっぽさをもっと出してほしい」と要望があってボーカルを入れることにしたんです。黒衣に徹するくらいでちょうどいいというか、それでも自分のアクは出ちゃいますからね。そこはもう諦めモードですが(笑)。

ーーリズムのアレンジや音色を含めて、どんな曲にもtofubeatsさんらしさが出ているし、それがクリエイターとしての個性ですからね。最近はTypeBeat(タイプビート、“〇〇っぽいビート”をWeb上で検索、購入して楽曲を制作するスタイル)が流行っていますが、他のクリエイターのテイストを取り入れる方法についてはどう感じていますか?

tofubeats:全然いいと思いますけどね。僕も最初は、無料でトラックをアップロードして、知らないラッパーが勝手にラップを乗せていたので。ただ、いまのTypeBeatはマネタイズありきだから、ちょっとノリは違いますが。

ーー今後の展開についても聞かせてください。アジア圏でのCMソングを担当されるそうですが、海外での活動についてはどんなビジョンが?

tofubeats:ラクして世界で売れたい気持ちはありますが(笑)、なかなか難しいだろうなと思っていますね。自分の音楽にはたぶん、グローバルな印象がないと思うんですよ。アニメ、マンガなどと結びついてない日本の音楽がそこまで海外で広まっているイメージもないし。CMなどをきっかけにして、自然に広まっていくのがベストなんですけどね。

ーーこれまで通り、自由は発想で音楽を作り続けて、自然に活動のフィールドを広げていきたいと。

tofubeats:そうですね。次はフルアルバムを作る予定なので、ポップスの曲が増えると思うんですけど、『TBEP』をいい感じで受け止めてもらえたら、流れも変わってくるだろうし。自分が好きなことをやるのが基本ですけど、リスナーの好みも気になるし、それを踏まえて作っていくのがメジャーでやる意味だと思うんですよね。

ーーなるほど。ここ数年はtofubeatsさん自身が歌う曲も増えているし、全方向にアプローチできる状況が整っていて。他にはいないタイプのクリエイターだと思います。

tofubeats:自分では新しいことをやっているつもりは全然ないんですけどね。それこそ卓球さんなんて、電気グルーヴで歌モノをヒットさせているし、DJとしてもすごいじゃないですか。高校生のときに『WIRE』(2008年)に出させてもらったときも、「テクノのイベントで、横浜アリーナにこれだけの人が集まるのって、すごいな」と驚いて。そういう体験だったり、いろいろな人たちの影響を受けて、いまの活動につながっているんですよね。(森朋之)

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